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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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古銭の誘い 3

 その店構えはエキセントリックだった、元々あった入り口から店舗一つ分増築されていた。

 手前の入り口は手動なのに店内入り口が自動ドアというなんとも可笑しな作り。

 その異様さは無理な増築を物語っていた、手前スペースには古書、自動扉の奥が高級品と新刊書籍だ。

 

 「えっと、確か奥の方に高級文具とかが売ってたな」


 奥の自動扉を抜けると建物の中心辺りにレジがありそこに店主と思しき人物がいた。

 

 「いらっしゃい、購入かな? それともご相談かい?」


 「えっと、購入です。純銀の万年筆が欲しいのですが」


 「プレゼントですか?」


 店主に以前来た事がある事を告げ、パイロットと言うメーカーのヤシの木のが彫られたタイプを伝える。


 「随分と又高価なのを欲しがるね、10万円だけどいいかい?」


 思わずためらう値段が出てくる。

 が、買えない値段ではない、晴香が喜ぶならいいかと思い切る。


 「大丈夫です、ラッピングお願いします」


 「あいよ、毎度あり」


 料金を渡し暫く待っていると5分程度で店主は商品を持ってきた。

 店主は最後に後藤の目を見ながら真剣な顔で伝える。


 「これから僕が話すことは可笑しいと思ったなら忘れてもらって構わない」


 一呼吸ついて考える素振りを見せる店主、その後続けて語る。


 「もし、君の身に何か可笑しな事があれば2階のボンクラに相談するといい」


 「えっと、何か気になるような事があったんですか?」


 疑問を問いかけると店主は笑いながら答える。


 「いやぁね、そんな高級なもの買うなんて変な女にかどわかされているんじゃないかとね」


 「あぁ、そういう事ですか、彼女が小説家志望でしてね。いつも迷惑かけてるんで」


 「なるほど、優しいのですね。でも何かあったら使ってやってください。家賃が回収できないんでね」


 得心した後藤は礼を告げると店舗を後にする事にした。

 

 「さて、プレゼントも買ったし、晴香に会いに行くか」


 お気に入りのスカジャンを靡かせながら歩き出す、その後ろに刺繍された儚げな洋服の美女は微かに笑っている様に見えた。 

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