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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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古銭の誘い 35

 後藤真二は鮫島の姿を確認していた。

 彼は地元の団体の代表と話をしている様だ。


 「ですからね、是からは、町おこしに力を入れるべきと私は考えていまして。大きなスポンサーを得たんですよ」


 「しかしですね、急にそんな話をされてもねぇ」


 何かを一生懸命に説明する彼はどこか楽しそうに見えた。

 説得されていた奥様は暫く思案した後に電話をする。

 数十分後には30人程の婦人が集まりなにやら盛り上がり始める。

 鮫島はニヤニヤしながら集団を先導して歩いていく。


 「この調子なら、うまく行きそうだな。巻き込んじまってすまない」


 後藤は聞こえない事が分かりながらも謝罪をすると歩き出す。


 「予想以上に上手く行っている様だな。最後はアイツの人間性にかけた運任せの計画だったが、なんとかなりそうだな」


 後藤はこの計画に10年の歳月をかけた。

 途中の数年間は記憶が曖昧になる等の妨害を受けたものの大筋は予定通りだった。

 後は奴が癇癪を起こさない様に、時間稼ぎをする必要があった。


 「さてと、そろそろ行きますかね」


 後藤は頭上から振ってきた植木鉢をキャッチしながら呟く。


 「で、どこに行くんだい?後藤さん」


 後藤は後方から声がしたので振り返った。

 そこには、鮫島が立っていた。


 「探偵さん、どっかいったんじゃなかったのか?」


 二人は飛んできた野球のボールを避けながら向かい合った。


 「さっき、チラっと君が見えたんでね。と、言うか。あれで感づかれてないと思ってる所が凄いけどね」


 そう、何故か後藤の周りには先程から色々な災難が降りかかっていた。

 その姿は遠目からでも分かる程度には異常であった。


 「あの神様は以外にお茶目な所があるからな。こういう無駄な悪戯をするのさ」


 「これって、悪戯で済む内容じゃないでしょ?」


 二人は何故か蛇行運転をする車を避けると歩き出す。


 「近くにいると巻き込まれますよ」


 「巻き込まれるも何も今回の件はあなたが仕組んだ事でしょう?」


 後藤はその発言に驚きを隠すことが出来なかった。


 「いつ、気付いたんですか?」


 「そいつは、偶然ですよ。今回の怪現象を追って行く中でたどり着きました」


 「そいつはまた。あんたはやっぱり、優秀な人だったんだな」


 「そんな事はないですよ。で、興味本位で聞きますが、何処までが計算通りなんで?」


 「寧ろ、殆ど想定外ですね。神隠しにあった七海の記憶が出てくるところまでは、何となく予想が付きましたが。後は、運任せですかね。俺の役目は鮫島さんに銀貨を渡した所で終わってましたから」


 「随分と謙虚な事で、是から最後の舞台に立ちにいくのでしょ?」


 「そうですね。一番カッコイイ所は貰っちゃいますよ」


 後藤は、少年が悪戯に成功したような笑みを浮かべる。


 「で、確認したい事があるんですが、いいですかね?後藤さん」


 「ええ、どうぞ」


 「この分だとお約束の報酬が貰え無そうなんですが、其れについては?」


 「あはは。今、それを言いますか?」


 「もう、会えないかも知れませんから」


 鮫島と後藤はニヤニヤ笑いながら互いを見つめる。

 真顔になり、後藤が答える。


 「お約束の報酬は変更になりました」


 「ほう、何に変わったんですか?」


 「そうですね、人の為に全てを投げ出せる。そんな心優しい少女の笑顔ですかね?」


 「たった、それだけですか?」


 「ええ、たったのそれだけです」


 後藤と鮫島は口調が変わるくらいにふざけあいながら楽しげに話す。

 暫くの時間が経ち、鮫島が笑顔言う。


 「参ったね、こりゃあ」


 鮫島と後藤はお互いに背を向けて歩き出す。

 後ろ向きで手を振りながら歩く後藤に鮫島は言った。


 「十分すぎてお釣りがきちゃいますよ?」


 「そうでしょ? 十分すぎますよね」


 二人の男はそれぞれの目的地に向かって歩き出す。


 

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