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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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古銭の誘い 34

 山岸秀紀は地元を牛耳る大企業の御曹司である。

 その範囲は建設・飲食・各種サービス業とあらゆる分野に精通する。

 この県内であれば、ある程度の我侭は通せるだけの自信があった。

 しかし、彼は今、目の前の渡部を前に苦笑いをしている。


 「渡部の旦那、この企画は金になると思うし、面白いと思うよ。しかし、なぁ」


 山岸は困った顔で唸った。


 「うち単独じゃ駄目なんですかい? 確かに莫大な費用だが用意出来ないことはないぜ」


 「今回は、僕の我侭を聞いてくれませんかね?」


 渡部の言葉に悩みながら、尚も抵抗する山岸。


 「手回しだって、うちだけでいけるよ! 何も竹家のおっさんと組まなくても良いじゃないか」


 「ああ、そうか、ビビッてるんですね?」


 「ビビッてないよ! ビビッてないからな! いいよ! やってやろうじゃないの!」


 山岸は痛いところをつかれ、半ば自棄になって承諾する。

 彼は是までのビジネスの中で余り苦労した事は無い。

 しかし、今までに苦労した僅かばかりの経験には必ず竹内の存在があったのだ。


 「で、うちの役目は何かな?」


 「まずは件の西洋館の買収をお願いします」


 「え? あれって、市で文化財の検討をしてる奴だろ? それはきついんじゃないの?」


 「検討中ならまだいけるでしょうよ。地元有力者と地域団体を引き込んで下さい。出来るでしょ?」


 「まぁ、出来るけどさ、無理難題を、随分と気軽に言ってくれますね......」


 「不可能を可能にするんでしょ? 3日でかたをつけて下さい」


 「はぁ!!」


 素っ頓狂な山岸の叫び声を背に渡部は退室していった。


 「え? 嘘でしょ? マジ? なのか......」


 山岸には渡部に恩が有る。

 親の会社に入った当初は、実績も無く、他の役員に疎まれていた山岸だった。

 しかし、ふと、寄り道した源流堂で渡部と意気投合し、彼の助力で今現在の権力を手に入れるに至ったのだ。


 「受けた恩は、返さなきゃ不義ってもんだ。でも、だからといって!」


 山岸は悲壮な顔で電話を掛け始める。

 正直、たまったものではない。

 最早奴を巻き込むしか手はないだろう。

 着信音数回で相手は電話に出る。


 「鮫島さん、手が足りないんだ。あんたの詐欺師としての力を貸してくれ」


 「いきなりなんだい? 詐欺師なんかした事ないよ?」


 「地元団体を押さえて欲しい、必要な物はこちらで全て用意しよう」


 「よく分かんないけど、了解した。報酬は弾んでよね」


 良くわからないと言ったわりに、理解が早かったのが気になるが、そんな事はどうでもいい。

 山岸は次の手を考える。


 「後は、市長や市議を押さえないとな」


 山岸は部下に連絡を入れると出かける準備に入る。


 「まぁ、うちの連中や鮫島なら今日中にかたをつけるでしょ」


 高級スーツで身を固め、髪をお気に入りの逆立てワイルドヘアにセットすると気合を入れる。


 「本番は是からだな。竹内のおっさんめ、毎回勝てると思うなよ!」


 山岸は宿敵との決戦に覚悟を決めて愛車に乗る。

 走り出す彼の顔はまるで戦場に赴く兵士のようだった。



 その日の夜、渡部は自宅に戻らずに一度、源流堂2階にある鮫島のオフィスによった。


 「鮫島さん、首尾はどうですか?」


 「おう! あらかたOKだ、市内の関係団体は全て押さえた。是で市長とかも文句は言えないだろ」


 「相変わらず、人心掌握だけは大したものですね。特別に褒めてあげましょう」

 「その態度もどうかとは思うが。まあ、案件が良かったからな、断る理由が無いでしょうよ」


 二人は活動の報告をしあうと頷きあう。


 「これでいけますね」


 「これでいけるな」


 「準備は整いました。後は、神様に奉納を済ませれば全て解決と言う訳ですね」


 「ああ、毎度ながら見事な手並みだったよ。渡部さん。後1週間で無事解決だ。後は、相手が大人しくしてれば、申し分ない」


 鮫島は机に隠していた高級ウィスキーを出す。

 二人分のグラスに、それを注ぐ。

 二人は、まるで宝石の様に輝く祝杯を掲げて言う。


 「我等の勝利に、乾杯!」

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