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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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古銭の誘い 30

 我はウロウロと館の入り口辺りを回りながら考える。

 そう、この館の主である我は古くは大正時代に奉られた西洋館の財産の神である。


 「どういう事だ?今までこんな事は無かった」


 主は10年前の契約により一人の少女を花嫁とした。

 可笑しな話かも知れないが神様だって結婚はしたいのだ現に神話にも人間の娘を花嫁とした神様は語られている。


 「しかし。困ったぞ、早くしないと花嫁が成長してしまう」


 少女が成長するまで待ったが、このまま成長して大人になってしまっては意味が無い。

 自分を奉る巫女である事が花嫁として重要なのである。


 「こちらに閉じ込める事が出来たのに何故こちらの住人に出来ないのだ?」


 自分の人間的な思考に苛立つ。

 が、元が人間の思考が集まったものだから仕方が無い。


 「此方に来ている以上、代償の踏み倒しをした訳ではない。誰かの契約が干渉しているのか?」


 神様の中でも人間に契約を踏み倒される被害が発生している。

 それを疑うがそうでもないらしい。


 「そろそろ巫女を貰わないと磨耗した信仰が回復出来ない。このままでは隣町の神谷さんみたいに消えてしまうぞ」


 この姿を人間が見たらさぞや幻滅するであろうな。

 が、神や霊も固体である以上は感情があるのだから仕方の無い事だ。


 「仕方が無い。歳は少し過ぎてるが姉の方でいくしかないか」


 そういえば、気になる事がもう一つある。

 10年前に銀貨と僅かばかりの財産を与えた少年はどうなったのだろうか?

 信者を集めるために契約したのに連れてきたのはこの姉妹だけだった。

 そもそも、奴は銀貨で何か契約したのか?

 だとすれば、何を契約したのだ?

  

 「若しかしたらそこに何か原因があるのか?」


 自分でも神様らしからぬと思うが思わず笑みが毀れる。


 「成程、10年掛りの猿芝居という事か?よもや人間と知恵比べとはな」


 逆に言えば神様らしいのかも知れない。

 人間との知恵比べで勝負する。

 まるで神話の神様ではないか。

 我は神とはいえ人間の欲望が集まって出来たまがいものである。

 その自覚はある。

 故に、神らしい神に生まれ出でた頃より強い憧れがあった。


 「後に語られそうな名勝負にしたいものよ」


 我は今までにない高ぶりを覚えている。

 是は人間で言うところの興奮という奴だろうか。

 

 「姉を頂ければ我の勝ち、花嫁を取られたら我の負けという事でいいかな?」


 我はそこにいない挑戦者へとルールを投げかける。


 「面白い、我の契約から守りきってみるがいい。小童が!」


 我は数十年ぶりの笑みを浮かべ挑戦を受けることにした。 

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