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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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古銭の誘い 25

 民族歴史博物館の一室で鮫島は二人に説明を始める。


 「まぁ、間違いをもったいぶって話すのもなんだが」


 鮫島は、ふふん!と楽しそうに軽く回転する。


 「まず第一に、俺は原因はずっと銀貨だと思ってたがそこから間違いだったんだよ」


 「つまり、始めから違ってたと?これはまた」


 鮫島の発言に渡部が溜息をついた。


 「じゃぁ、銀貨は全くの無関係だったんですか?私はそれにも何かしらの関係があるように思うんですが」


 「いい質問だお嬢ちゃん。厳密に言うと銀貨を通して現象は起きている、つまり元凶があるって事だ」


 二人は鮫島を不思議そうな顔で見る。


 「そこで出てくるのがウジガミ様だ、恐らくは是が大元だろうな」


 「でも、この説明だけだとウジガミ様が何か分からないですよね?」


 晴香が言うと鮫島は、チッチッチ! と舌打ちをしながら指を左右に動かす。


 「ところが、そうでもないんだな。あくまで予測になってしまうが、かなり絞り込む事が出来る」


 鮫島は自論を語り始める。


 「まずウジガミ様、こいつは何を祭るか明確に決まってないが。そこがポイントだ」


 「つまりは?」


 渡部が先を促す。


 「つまるところは、信仰の自由。人間が自分に都合の良い存在を拝み奉る。そうすると、どうなると思う?」


 「う~ん、どうと言われましても。分からないです」


 晴香が数分考えた後に答えると、そいつはそうだろうと嬉しそうに鮫島は続ける。


 「一家庭程度の信仰ならそれは余り意味を成さないものだろう。しかし、それが不特定多数を巻き込む程の事ならどうだろう。例えばその規模が町全体だったとすれば?」


 渡部が神妙な顔で答える。


 「君が常日頃から言っている宗教観から言えば」


 鮫島は両手を大きく広げると大仰に身振りを加えて言う。


 「そう! 神の顕現だ!」


 二人はごくりと唾を飲む。


 「信仰を得て力を持った神は信者に恩恵を授ける事にした。恐らくは皆、富を願ったのだろうな。そうする事によって一時的に飛躍的に繁栄した一族がいるはずだ」


 渡部はこくりと頷く。


 「だが、信仰によって生まれた神には必ず制約がある。まぁ、ルールと言い換えてもいいだろうな。猿の手の話にも出るように相応の対価が求められる。よって、この家は最終的には没落する運命にある」


 「それに当てはまるものは是かと」


 渡部が渡した資料にチラリと目を通して鮫島は続ける。


 「一族が没落すると信仰によって得た力が無くなり神は神として存在できなくなる。昔から伝わる言い伝えでは力を失った神は妖怪となり、そして時間をかけて消滅していく。何故、消滅に時間がかかると思う?」


 鮫島はまたしても晴香に問う。


 「え? なんで私ばかり。わかならいですよぉ!」


 鮫島は、「はぁ」と溜息をつくとこれまた嬉しそうに続ける。

 是に晴香は苛立ちを覚えムッとした顔で鮫島を睨む。


 「抵抗するからだよ! 消滅を免れるために神であった時のように信仰を集めようとするんだ。家に纏わる妖怪でこういう言い伝えがある」


 鮫島は一拍置いた後に始める。


 「有る村に欲の無い働き者の村人がいた。その若者はある日誰も住んでいない豪邸に迷い込む。そこで手に入れたものを持って帰ったその村人はその後幸せに暮らしたそうだ」


 鮫島は二人を見つめた後、続きを語る。


 「この話、ちょっと可笑しいと思わないかい?」


 「はいはい、どうせまた私なんでしょ? わかんないですよ~だ!」


 晴香がふて腐れると鮫島は思わず噴出す。


 「いや。悪かったよ、からかいすぎた。無欲な人間がなんで人の家から物持って行くんだろうね?」

 

 あ! と晴香が声をあげる。


 「そう、なんで持って帰ったか不明瞭なんだよ。是って今回の事に似てないかい?」


 その瞬間晴香の中でフラッシュバックが起こった。 

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