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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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古銭の誘い 17

 鮫島に促された晴香は昨晩の事を搔い摘んで話し出す。


 「ちょっと頭が可笑しいと思うかも知れないけれども。黙って最後まで聞いて欲しいの」


 晴香は真剣な表情で二人を見る。


 「貴方達が探していた男性なんですが、もしかしたら一緒に住んでいたのかも知れません。実は、記憶がおぼろげになってしまってる部分があるのです」


 そう言って晴香は間にある応接机に万年筆とカップルが刺繍されたスカジャンを置く


 「この万年筆、誰かに貰ったんですが誰に貰ったかわからないんですよ。このスカジャンも、誰が置いていった物なのか」


 静かに俯く晴香、僅かな時間をおき渡部が話し始める。


 「実は僕もですね、可笑しいと思われると思い言わなかったのですが。その万年筆は恐らく後藤さんが当店で買われたものでは無いかと思ったのですよ。それに良く似たスカジャンを着ていたような気がします」


 「え?でも、このスカジャンは」


 「いえ、スカジャンの方は柄が違うんですがね、女性単独の柄でしたから。」


 話を区切り渡部が鮫島を見る


 「超常現象的見地から君はこの状況をどう見ますか?」


 鮫島はいつに無く真面目な顔になると語りだした。


 「恐らく、君等が言う事は符号するのだろう。スカジャンは否定要素が入っているからなんとも言えないが。万年筆は後藤さんが渡部の店で買った物の可能性は高いだろう」


 話を区切り鮫島は銀貨と万年筆を出す。


 「この万年筆は確かに高価な物だが他でも買える。この銀貨はかなり価値のある物だが拾った。因みにこれは後藤さんが持っていた物だ、一件関係性の無いこの2点だが一つだけ共通点がある」


 一呼吸置き、それはと続ける。


 「持ち主が入手経路を明確に覚えていない事だ。ここから俺は一つの推理をする。まずは、第一前提として有り得ないという概念は消し去って欲しい。何故ならば、今起きていることは通常では有り得ないのだから」


 鮫島は二人を見回す。


 「まず、この銀貨だが。恐らく今回の騒動はこれを発端にしている可能性が非常に高い。これの持ち主であった後藤さんは記憶が曖昧になっていた。憶測ではあるが是を持ったことによる影響だろう」


 「記憶が消える?そんな事があるんですか?」


 晴香は青ざめた顔で聞く。


 「普通なら考えにくいがそこはあるものとしてくれ。後藤さんのケースの場合、段階的に物が無くなり。最後には彼女が消えたと言っていた。是は恐らくではあるが何かを得る代わりに何かを失う類の現象ではないだろうか」


 鮫島は二人を確認し、質問が無さそうなので続ける。


 「過去に聞いたことの有る例を挙げよう。知ってるかも知れないが猿の手。これは3つの願いを叶えるがその代わりに大きな代償を払うと言う物だ。他にも色々な物があると言われているがこの硬貨は猿の手に近いものだと思う、猿の手との違いは複数回の交換の後に本人が消えてしまう現象であると考えられる」


 「ちょっと待って下さい。それって可笑しくないですか?僕達は後藤さんにあってるんですよ」


 「そこがちょっとしたミステリーだ。後藤さんは消えているのに何故俺たちの前に現れたのか?これも、毎回憶測で申し訳ないが消える前に最後の役目があるのだと思う」


 二人が固唾を呑む中で鮫島は声のトーンを落としてから言う。


 「次の犠牲者を選定する事だ」


 晴香がワナワナと震えだす


 「そ、そんな。次の犠牲者って」


 「まぁ、そう怯えなさんな。次のターゲットは俺だ」


 余裕の表情で笑みを浮かべる鮫島。

 

 「それって、不味いじゃないですか!」


 叫ぶ晴香を尻目に飄々と話を続ける鮫島。


 「後藤さんが消えたと仮定すれば、アンタが万年筆を誰から貰ったのか分からない事に説明がつく。若しかしたら何らかの痕跡がアンタの家にはあるかもな」


 「な、なんで平然としていられるんですか!貴方があぶないんですよ?」


 「お嬢さん、舐めてもらっちゃ困る。これでもこっちはプロだ。この手の話のな」


 ふむ、っと渡部が口を開く。


 「勝算はおありですか?」


 「なぁに、条件が日数なのか何かを手に入れた時なのか分からないが俺はまだ正常だ。やってやろうじゃないの!」


 「正常かどうか分からなくなるのが今回の厄介なトコでしょうよ」


 「何、その為の先生だろ?」


 客観的に見ても追い詰められている筈の鮫島だが心底楽しそうに彼はおどけてみせる。


 「鮫島さん、あなた沸いちまってんじゃないですか?」

 それにおどけて返す渡部。

 晴香はこの二人ならばこの事件を解決できるのでは無いだろうかと思うのだった。 

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