古銭の誘い 15
晴香はシャワーを浴びながら考える。
謎の二人組みの探偵、彼等はとにかく強烈だった。
無理やりにインスピレーションをかきたてられる感覚は自分が今までに感じた事が無いものだった。
捜査内容は守秘義務だと言って教えてくれなかったが内容を想像することは出来る。
彼等は後藤真二と言う男性を探していたのだろう。
あの感じからすると、当然ここに住んでいるだろうと思っていたのだろう。
つまりは、もっとも確率が高いものは悪戯だ。
自分の住所をでたらめに教えた。
次に考えられるのが失踪者の捜索。
が、その線は薄いと見ている。
何故ならば、自分はここ3年以上ここに住んでいる。
3年以上前の住所を手がかりにしていた場合、聞き込みの仕方はもっと違ったものになるのではないか?
と、いうことは。
その人は本当にここに住んでいた?
いや、一番ありえないだろう。
だが、何故だろうか妙に引っ掛かるのだ。
自分が書いている小説の内容との符号、誰に貰ったのか分からない万年筆。
そして、ハンガーのスカジャンだ。
一体、あれは誰のものなのだろうか。
仕組まれたかの様に次々に集まる謎のピース、まるで自分が登場人物になったかのような感覚。
内容としては面白すぎる、まるで自分が主人公になったようだ。
しかし、この情報を調べて傑作を作りたいと思う反面、躊躇う気持ちもあった。
これ以上深入りをしてはいけない。
そんな、不快で不穏な気持ち悪い気配を感じてしまっている。
これは、警鐘なのかも知れない。
だが、晴香の中で確実に何かの歯車がかみ合った音が鳴ってしまった。
「たとえ、どのような結末がまとうとも進むしかない。今は、その時なのだ」
ふと、決め台詞が思い浮かび呟く。
「そう、私はこの物語を終演に導かなくてはならない。それが姉としての勤めだから」
ん? なんだろう? 姉?
小説にはそんな設定は無い。
主人公の彼女役は姉妹の設定など無いのだ。
それに、是では主人公が実は彼女の方だったようではないか。
まぁ、小説の方向性が製作中に変わるという事は無い事ではない。
そういったものだろう、晴香はそう考えるとシャワーを止め脱衣所に向かう。
その時、フラッシュバックの様にひとつの情景が脳内に浮かぶ。
「ねぇ、晴香お姉ちゃん。あそこのホストクラブ行ってみようよ」
「駄目だって。なんで七海はそう危ないとこばかり行きたがるかなぁ」
「大丈夫だって、なんていっても私には最高のお守りがあるんだから!」
そう言って、中性的な顔立をした派手なスカジャンを着た少女は満面の笑みで銀貨を見せびらかすのだった。




