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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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古銭の誘い 12

 渡部は軽く溜息をつきながら歩く。


 「相棒が無能だと苦労しますねぇ」


 渡部は鮫島と2人1組で探偵業を営んでいる。

 鮫島がオカルトを得意としている事から商売に出来ないかと考え実行したのだが、如何せん彼は頭が悪かった。

 そう、探偵などとても出来ようがない。

 オカルト絡みの依頼は一件当たりの案件が高い為商売として上々ではあったが如何せんそれ単体ではとても怪しい稼業であった。

 故に通常の探偵と兼任でやる事になったのだが。

 これがもう驚く程に盆暗(ぼんくら)だったのだ。

 よって、探偵の仕事は渡部の役目になった。


 「360万枚の流通となると特定は不可能ですかねぇ」


 渡部は知り合いの古銭商を尋ねて自分の店舗から車で15分程度の距離にあるスーパーの端でヒッソリ営業している店舗に入った。


 「ごめんなさいね、恵爺はいるかい?」


 渡部が声を搔けると奥から着物姿の年配の男性が出てくる。


 「なんだ、坊主か。なんの用だ? うちには青二才が扱えるような品はねぇぞ」


 ぶっきらぼうに言われたので顔を顰めるが、気を取り直して本題を切り出す。


 「この硬貨の出所を知りたいので鑑定して貰えますか?」


 恵爺は硬貨を受け取り鑑定を始める。


 「ほぅ、旧円銀か、初期ロットのようだな。だがコイツは偽者も多い」


 秤とノギスを出し鑑定を始める


 「重さは26.96g直径38.56mm。ふむ本物の銀貨だな、だが、綺麗すぎる。しかし、この彫刻は」


 数分ほど唸った後、恵爺が話し始めた。


 「ふむ、一応本物のようじゃな。だが、大した価値は無い。なんなら2万で買ってやるぞ」


 「おいコラ! この狸爺! サクッと身内を騙そうとするんじゃない。鑑定は鮫島がしてるよ」


 「ち! あのガキは古物の目利きだけは本物だからな、儲け損ねたワイ!」


 開き直った恵爺を軽蔑した目で見ながら話を続ける。


 「で、出所とかは分かりそうかい?」


 「ふむ、貴重品とはいえ360万枚流通してるからのう、特定は無理だな。と、言うとでも思ったか馬鹿者が!」

 

 突然、恵爺が怒り出したので渡部は不覚にも驚いてしまった。


 「お前等は、なんで分からんのじゃ? コイツはな国内では流通してないんじゃよ。傷一つ無く綺麗という事は」


 「コレクターが持っていたのですかね?」


 「コレクターが手に入れる前に使われてるんじゃろ、普通ならな。この硬貨は貿易でしか使われておらんからな、海外からくる訳だし。完全な美品は無いだろう」


 「そうか! 寄贈品って事か!」


 思わず叫ぶ渡部に恵爺は頷いて見せる。


 「わしもそう思うぞ。あくまで推測じゃがな」


 「ありがとうな、事が終わったらまた来るよ」


 「どうせ、曰く付の品だろ? うちで買うから絶対もってこいよ! 絶対だからな!」


 叫ぶ恵爺を背に車に乗り込むと事務所に一目散に向かった。


 店舗に着くと準備中の看板が掛かっていた。


 「あいつめ」


 鍵を開け呟きながらレジ横に置いてある細い杖を持って事務所に向かう階段を上る

 そこには、眠りこける鮫島がいた。


 「おい! こら! この穀潰しが! 人が仕事してる時に何してやがる!」


 渡部は階下から持ってきた細い杖で鮫島を、ビシ! バシ! と、叩きつける。


 「ちょ! ま、わるかったよ。だから、叩かないで!」


 渡部は適当なところで叩くのを止めると調査報告をした。


 「なるほど、寄贈品ね。では、次の目的が決まったな。明治頃の貴族を調べるとしよう」


 鮫島が次の指針を伝えた所で間髪入れずに渡部が言う。


 「次は貴方が探しなさいよ」


 バツが悪そうに頭を搔いた後に鮫島が言う。


 「取りあえず後藤さんに報告に行くとするか」


 「そういや、あの人は大丈夫なのかい?」


 「あぁ、問題は無い。原因である硬貨は手元に無いんだからな何もおきないはずだ」


 「ん? 待てよ。するってぇと是を持っていた僕に被害がある可能性があったって事じゃ?」


 鮫島は不自然に視線を反らしながら出口に向かう。


 その後ろ姿を見て手に持った杖を槍投げの要領で投げつけた。


 「せい!」


 事務所内に鈍い音が響く。


 ドアを開けたところで鮫島の頭に杖が直撃した音であった。 

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