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源流堂探偵事務所にようこそ  作者: 西渡島 勝之秀
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古銭の誘い 10

 晴香は凄まじい勢いでパソコンのキーボードを叩く。

 是は俗に言う乗っているという奴だろうか?

 それはどうでもいいとして完成度は今まで以上であろう、贅沢を言えば今ひとつスパイスが欲しい。

 登場人物が少ないのだ。

 主人公の男性の表現はまるで実在のモデルがいるかの様に描けている。

 そこに自分を投影した彼女役を入れる事で人間ドラマが上手く出来ている。


 何か無いのかと思案しているとメールが来た事を告げる音が鳴った。

 内容を確認する、出版社からだ。

 出版の件はこのままいけば承認が下りそうです、個人的に他の企画も取れると思うので満足せずに改良お願いします。

 と、メールには書かれていた。


 「やった! ついに夢が叶うのね!これを手に入れてから順調だわ」


 晴香は先程までクルクルと回していた万年筆を撫でながら満面の笑みを浮かべる。

 

 ん? そこで晴香は、ふと思う。

 これって、どこで手にいれたんだっけ?

 自分で買った? いや、それにしては高価過ぎる逸品だ。

 編集さんから貰った? そこまでの実績はないだろ。

 と、なると素敵な彼氏からのプレゼントが妥当だろうな。

 って、おいおい! ここ暫く彼氏なんていないだろ!

 余りにもモテなさ過ぎて遂にとちくるっちまったのかと頭を掻く。


 「ん? 待てよ......これもミステリー要素としては有かな?」


 なんだろう? この前までのスランプが嘘のようにネタがポロポロ出てきてしまう。

 後はこれで登場人物のモデルでも現れればいう事は無いな。


 などと考えていると。

 コンコン! ドアをノックする音がした。


 「は~い、はいはい! 今出ますよっと!」


 ドアを開けるとそこには二人の男が立っていた。

 一人はくたびれてはいるが小洒落たベージュのスーツを着た無造作ヘアーの無精ひげを生やした男だ。

 もう一人は作務衣を着た眼鏡をかけた清潔感のある知的な男でおっとりとした感じだった。

 晴香は心の中でまず突っ込む、お前等服装逆じゃない?


 呆気に取られていると、スーツの男は何かを差し出しながら声をかけてきた。


 「どうも、可愛いお嬢さん。私こういうものです、ちょっとお話いいですか?」


 差し出されたのは名刺だったようだ。

 そこには 探偵 鮫島 翔 と書かれていた。


 「で、こいつは助手の渡部靖です」


 「まぁ、どっちが助手かってレベルですがね、この人は」


 晴香は二人のやり取りを見ながら思った。

 なんてこった! 全てのピースははまってしまった。

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