表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
お約束なんていらないっ!  作者: 陽乃優一
第1章 異世界拒否編
6/7

第6話 夢オチは突然に

ちょっと、ホラー風味かもしれません。『うつつまくら』もしくは『邯鄲の枕』にインスパイアされたといいますか。

「やっぱり、お前は私達の本当の娘ではないのだな」

「え、なに、突然どうしたの!?お父さん」

「一度火葬までされて、再構成されたのが今のお前なのだろう?なら、部屋で看取った優美だけが、本当の優美だ」

「そ、そんな、そんなこと…」

「…この家から、出ていけ」

「お父さーん!」



 がばっ。


 はあ、はあ、はあ…。


「ゆ、夢か…。あれ、あたし、泣いてた…?」


 こんな夢を見るなんて、あたし、ファザコンなのかなあ…。


 学校に行く支度を整え、一階のダイニングに降りていく。


「やあ、優美、おはよう」


 びくっ。


「ん?どうした、優美?また、死にかけているなんて言わないだろうな?」

「お、おはよう、お父さん。や、やあねえ、そんなお約束、あるわけないじゃない」

「しかし、な。部屋でお前が倒れていた時のこと、今でも時々思い出してしまう」

「お父さん…」


 あ、また涙が出そう。

 はー、なんかやっぱりお約束っぽいなあ。でも、死にかけたとかって普通はないよね。


「え、えっと、優樹とお母さんはもう出たの?」

「ああ。お母さんは今日は朝イチで会議があると言っていたな。優樹は、朝練か」

「そっか。あたし、まだ時間があるから、少しお話しよっか」

「なんだ、いつものことじゃないか」


 うふふ。あはは。



 がばっ。


「どうしたの、優美。まだお昼休み終わってないわよ?」

「あ、うん…」


 クラスの机でうつ伏せになって寝ていたらしい。瑞穂が声をかけてきた。


 …えっと、あたしとお父さんは仲いいよね?お父さんはお母さんとの方がもっと仲いいけど。うん、何もおかしいところはない。


「寝ぼけてるの?それとも、あの日?」

「瑞穂、お約束とはいえ、それを口に出して言わないで。違うけど」


 瑞穂って、草薙くんと付き合うようになってから、性格がちょっと変わったような。少し大胆になったというか…。はっ、まさか。


「なに?」

「ううん、なんでもない。お約束すぎて聞きたくないわー」

「?」


 まあ、後で草薙くんの方を尋問しよう。その方が手っ取り早い気がする。たまにはお約束を利用せねば。


「あ、優美のお父さんの新作、読んだわ。まさか、ラノベとして売り出すなんて」

「最近、マンネリ化してたって言ってたからね。あたしもまたネタを提供しちゃった」

「そうなの?でも、よく思いつくわよねえ。『テンプレートブレイカー』なんて」

「…へ?」


 ちょっと待って、あたしそんなダサいネーミング知らないわよ?でも、えっと、神の使いとやらは確かに『ブレイカー』って言っていて、『テンプレート』はお約束って意味もあるから…。


「ねえ瑞穂、お父さんの新作、今持ってる?」

「うん。優美にサインもらってきてほしいなあって」

「ちょっと、見せてくれる?」


 ぱらぱらっと。

 え、なにこれ…。おじいさんが200歳近くとか、試験の一夜漬けとか、松永先生の奥さんとか、美術部の出来事とか…。話してない。こんなこと、お父さんに話してない!


「でも、優美のお父さんもスゴいわねえ。自分の娘を一度死んだことにするなんて」

「え、いやでも、それは既に世界的に知られていて…え?」

「私は、生き返るなら異世界がいいかな。あ、もちろん、悟くんと優美も一緒に♪」

「…あたしは…死んでない…?」


 そ、それじゃあ、これまでのことって、お父さんの書いたラノベの内容?それを、昼休みの夢として見てただけ?瑞穂が『悟くん』とか、いつの間にか下の名前で呼んでることより衝撃的よ!


「そ、そんなお約束…いや、夢オチも御都合主義の一種だから、お約束じゃないの…?いや、お約束だったとしても、そもそも夢だったんだから…」

「優美、どうしたの?ホントに変よ?」

「そんな…そんな…」



 …ピピ、ピピ、ピピ、ピピ。


 スマホにセットしてあるアラームが鳴り響く。朝か。


 学校に行く支度を整え、一階のダイニングに降りていく。


「やあ、優美、おはよう」

「…おはよ」

「どうした?寝起きが悪いのか?」

「うん、まあ。まだ時間があるから、ゆっくり食べて目を覚ますわ」

「そうか。ところで、今考えている小説なんだが」

「『テンプレートブレイカー』なんてダサいタイトルはやめてね?」

「…よく、わかったな。じゃあ、」

「『お約束なんていらないっ!』も却下」

「おおう…」


 よし、絶好調だ。

最終話じゃないですよ?まあ、次は第1章のエピローグですが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ