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お約束なんていらないっ!  作者: 陽乃優一
第1章 異世界拒否編
2/7

第2話 お約束な家族

 気がついたら、家の前にいた。夢とかではなかったのは間違いなさそう。さて、どうしようか…。


「ただいまー」


 何も思いつかなかったので、普通に帰宅してみた。当たって砕けろよ。


「「「ひっ…!」」」


 家族が砕けた。あ、錯乱し始めた。


「ちょっとちょっと、落ち着いて。気持ちはわかるけど」

「で、でも…!」


 弟の優樹が辛うじてまともに反応するようになった。両親はまだ蒼白状態だ。お互い抱き合って。仲いいよね、ウチの両親。


「優樹、アンタの机の一番下の引出しの奥のエロ本、場所変えた方がいいわよ。中2にもなって、お約束過ぎる」

「え…姉ちゃん、知ってたの?」

「そりゃあねえ。ていうか、あの女優、なんとなくあたしに似ていて…」

「わー、わー!」


 はて、なんでいきなり優樹のエロ本なんぞ思い出したんだろう。おかげで、優樹は私だと信じてくれたようだけど。


「お、お前、本当に優美なのか…?」

「そうだよ、お父さん。あ、今回のことも小説にする?最近、お約束ばかりでマンネリ化してたんでしょ?」

「おお…信じられん、部屋で発見した時は確かに息をしていなかったのに」


 あう、あたしを発見したの、お父さんだったんだ。小説家でいつも家にいるから不思議じゃないけど。でも、ネタをよく提供していたとはいえ、お父さんの小説が今どうかなんて、あたしが詳しく知るはずないのに。


「優美、生きてたのね。でも、どうやって…?」

「それが、あたしにもよくわからないのよ。あ、お母さん、あたしの制服全部返して。ナニに使うなとかお約束なこと言いたくないから」

「ちょっ…!そんなこと優樹の前で言わないで!」


 知らないわよ。お母さんってばキャリアウーマンで息子とかの前ではカッコつけてるのに、あたしやお父さんの前ではまるっきりだらしないんだから。さすがに、あたしの制服でナニしてることまでは気づかなかったけど。


 しかし、なるほど、そうか。相手のお約束のような事柄がはっきりわかるようになったのか。異世界がお約束とか叫んで戻ってきたからなあ。でも、この程度ならまだテレパシーの劣化版みたいなもので、摂理の変革とか中二病的な力とは言えないわよねえ。


「とにかく、いつまでもお約束のようにうろたえてないで、あたしを受け入れなさい!」

「そうだな、生きていたんだから喜ばなくては」

「嬉しいわ、優美。あなたとまた暮らせるなんて」

「姉ちゃん…姉ちゃん…!」


 あ、こら優樹、抱きつくんじゃない!ちょっと、変なとこ触るな!


 ま、いっか。この調子で、あたしの存在を定着させていこう。友達と御近所、病院、警察、市役所、学校。めんどい。チート能力のお約束なら、こう、一発でぱぱぱーっと…お約束だからダメなのか。


 ちなみに。


「私はミステリーが専門で、ファンタジーはちょっと…」

「そんなお約束いらないわよ!新ジャンル開拓したら?」


 数か月後、お父さんはラノベ作家としてもデビューを果たした。これはお約束じゃないわよね…?

なお、本人が自覚していないため、優美が超絶美少女&成績優秀&スポーツ万能のモテモテ、というお約束設定はブレイクしません。なんてこったい。

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