第1話 ブレイカー覚醒
一応異能力モノなので、ジャンル分けはアクションにしようかと最初思ったのですが、保険をかけてコメディにしてみました。
「手違いで死んだってどういうことよ!」
あたし、片桐優美が、高校から自宅に帰宅して部屋でくつろいでいたら、いつの間にか、何もない真っ白な空間にいた。
しばらく呆けていたら、翼を生やした女性が現れ、このようなことをのたまった。そりゃあ、胸ぐらつかんで詰め寄るわよ。
「その、隣の家の方と…」
「寝たきりのおじいさんと間違えたってこと?」
「その…はい…」
あのおじいさんかー。確かに、そろそろお迎えが来そうな感じだったなあ。たくさんの子供と孫に囲まれて、惜しまれつつも…。
「ちょっと待って。あたしが代わりに死んだら、あのおじいさんはどうなるの?」
「えっと、あなたが生きるはずだった寿命を継承するはずです。おそらく、200歳近く…」
「人類の歴史がひっくり返るわよ!」
「寿命延長技術が試されるところでしたので、ちょうど転換期だったようです」
「じゃなに、あたし死に損じゃない!」
「ええと…はい、そのようです…」
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「はあ…。で、あたしはどうなるの?」
「通常は転生ですが、何しろ手違いでしたので、その手違いを解消する対応が必要になります」
「具体的には?」
「別の世界に、有利な条件で転生、もしくは、転移、でしょうか」
「定番ね…。ん?別の世界?」
ちょっと、ひらめいた。
「『同じ世界に転移』はできないの?」
「ええと、元の存在との重複が発生します。既にあなたは心臓麻痺で亡くなり、火葬されています」
「いいわ、そのまま『転移』させて。生き返りよ!」
「で、ですが、そうしますと、火葬された身体がなんだったのかと大騒ぎに…」
「それをなんとかするチート能力をもらえばおっけーじゃない」
「それはそうですが、この世界では前例がありませんので…」
「お役所みたいなこと言わないで!できるの?できないの?」
「いえ、その、どのような能力が良いのかわからないのです」
むう、詰め寄っているとはいえ、妙に頼りない感じだなあ。命や魂を扱っているにしては。
「そういえば、そもそもあなたは何者?神様にしては、あいまいなことを言うけど」
「神の使い、でしょうか。この世界の物理法則でカバーできない範囲を個別対応しています」
「ああ、それで受付的な…。とにかく、さっきの感じでなんとかして。手違いで死んだから異世界なんて、そんなお約束いらないわ!」
そう言うと、あたしの体が強く光り輝いた。
「こ、これは…!」
「な、なに…?」
「今、あなたの意思がルール化されました。神は、あなたのこれからの判断に世界の一部を委ねるようです」
「え、そんな大それたことになったの?」
「それぞれの世界にはわずかながらも、摂理を変革する存在が認められています。あなたは、そのひとりとなりました」
「それってつまり、チート能力じゃなくて、世界の変革で対処しろと」
「はい。我々はそのような存在を『ブレイカー』と呼んでいます」
「安全装置かあたしはっ!」
「では、肉体を再構成して元の世界に転移させます。1週間ほど経過していますので御注意下さい」
「ちょま」
後ろ向きに飛ばされる感覚を受けながら、あたしは思った。
変革って、何をどう変革できるっていうのよー!
そりゃあ、お約束を変革すれば?ってことで(神たる作者的に)。