五話 竜と豚
俺は書類とかがどっさり置いてある部屋に連れてこられた。…地球儀とかでかい世界地図、高そうな金の首飾りとかもある。
エドワードは羊皮紙製の地図らしき物を取り出して、机の上に敷いた。
地図にはこの島が中心に、他の島とか海域の名前とかが書いてある。
「いいか、まず海竜達は普段深海に潜んでいる。滅多に水面まで浮上して来る事は無い。つまり竜に会うには、自分から海の底に潜るか、海上に引き上げるしか方法は無い。」
…あー、成る程な。
道理で道中で海竜らしき物は見えなかった訳か。
「海竜達は此処から南にある海域に多く生息している。とは言っても、そんなに沢山居る訳じゃ無いが。」
まぁそうだよな、そんな何匹も竜が居たら幾ら広い海でも生態系ぶっ壊れるからな。
「此処のエーテ海にはシーサーペントという海竜が居る。シーサーペントは竜の中でも弱いと言われているが、それでも大半はA級、強い個体はS級に分類される程強力だから、他の竜同様一切油断は出来ない。」
…マジか、某RPGではボッコボコにされてるシーサーペントって、そんな強いのか。
所で、階級って幾つあんの?
「…あぁ、危険度階級はFからSSまでの8段階で分けられてる。まぁ基本S級が最高だ。SS級指定の魔物は現在では10種しか居ないんじゃないか?
ここ暫くギルドに行ってないから知らないがな」
この世界にもギルドってあるんだな。
おいちょっと待て、俺の討伐依頼とか出されて無いよな?
「エーテ海の横のミルド海にはリヴァイアサンが居る。コイツは通常個体でさえS級の魔物だ、かなり危ない。その南にあるデルポトロ海にはティアマトっていう竜が居る。コイツもS級、とんでもなくヤバい。まぁ、基本的に竜と認識された魔物の殆どはS級に指定される。つまり、凡人が気楽に会っていい奴らじゃ無いって事だ。」
…やっぱり、コッチの世界でも竜はとんでもなく強いって認識なんだろうな。
「…で、お前が竜に会いたい理由ってのは何なんだ? それによっては話す事が変わって来るんだが?」
「ああ、えーと…」
此処で竜を虜にしたいからとか言っても何言ってるんだコイツってなるだけだろな。
なんか都合の良い言い訳ねぇかな…
ドンッ
「何だッ!?」
突然外から爆発音の様な物が聞こえてきた。
慌てふためいていると、突然扉が開けられて、息をゼェゼェ切らせながら中性的な海賊がやって来た。
おいおい、どうしたんだよ一体?
「船長、敵襲です! 数は20隻の大型船、豚野郎共の旗です!」
「クソ、また奴らか! おい、アンタは其処に居ろ、面倒な事になった!」
そう言ってエドワードは帽子を落としても気づかないほど大慌てで外に出て行った。
窓から外を見ると、確かにかなり大きな船が何隻もこの島に向かっている。
…おい、何だよあの不吉な旗!
人間の顔に槍がブッ刺さってる絵が描いてあるぞアレ!
マジで頭湧いてんのかアイツら!?
…今下手にこの島の住民達を殺されたら困る、竜達の情報が集められなくなっちまう!
コイツら海賊だから味方すんのもアレだけど、取り敢えず彼奴ら撃退するか!
俺は窓から身を乗り出して、勢い良く飛び出した。
そして俺は空中で両腕から黒い翼を生やし、翼を羽ばたかせて空を飛ぶ。
空を飛ぶ内にローブが破れ、皮膚は黒く染まり、全身から鋭く尖った黒い鱗が生え揃い、尻尾が生えていき、体格がワイバーンの物へと変化していく。
やっぱコッチの体の方が馴染むわ。
例え元人間でも、生まれ変わった方の肉体の方がしっくりくるな。
「おい、あの黒竜は何だ!?」
「オーク達の方に向かって行くぞ!?」
俺が海賊船の上を通ると、出航して応戦しようとしていた海賊達が俺を見て腰を抜かしている。
おい、今腰を抜かさないでくれ。
敵船の上空まで飛んできた。
甲板に居るのは、太った体格に豚の顔をした人間…?
限りなく豚に近い人間達だった。
アレはオークっていう魔族だな。
よく姫騎士を襲ったりするヤバい奴ら。
でも、流石にあんな島に姫様なんて居ないと思うが…
侵攻の目的は何なんだろうな。どうでもいいか、
俺は口に力を込め、口を開いてブレスを吐いた。
メラメラと赤く燃え上がる炎が船に覆い被さる。
「ブヒッ!?」
「ブヒャアアッ!!?」
オーク達は火を振り払おうと必死に全身を払うが、残念ながらそう簡単に火は消えてくれない。
なんせそのブレスは油で出来てるからな、海に飛び込んでも中々落ちないくらい炎の粘着性が高い。
基本的に食らったら終わりだ。
「ブヒッ…」
オーク達は次々と燃えていき、甲板の上には灰の山が出来ていた。
よし、次だ。
俺は別の船の甲板の上に急降下、オーク達の元に突っ込んで行った。
「「「ブモッ!!?」」」
オーク達は俺の急降下により一斉に吹き飛ばされ、俺の鱗に切られて赤い血を流しながら海に落ちて行った。
「ブヒャァァァァァッ!!!」
俺と打つかった時に着いた傷口から血が漏れ、その匂いを嗅いだ海中の鮫型の魔物達がオーク達を貪り食らっていく。
…うわ、グロい。
「撃てッ!」
突然号令が聞こえたからその声の方を向いたら、なんとただの竜のオレに向けて砲弾なんて兵器飛ばして来やがった!
何とか急降下して大砲の弾を躱す。
あ、危ねぇ…
あと少し反応が遅れたら打つかって酷い目に合うところだった。
幾ら俺の鱗が硬くても、流石に砲弾の爆発を真面に受けたら砕け散るだろ。
ドォンッ
…俺から外れた大砲の弾は、別のオーク達の船に直撃し、爆発を起こした。
おい、木星の船なら普通は大砲の弾が貫通する筈だ、それなのに貫通せずに爆発したって事は、あの船かなり固いぞ。
会いた穴から大量のオークが海に落ちて行った。
どうやら溢れるほどの数のオークがあの船に詰め込まれていたみたいだ。
次々と海に落ちては貪り食われていくオーク達。
もうこの海は血で真っ赤に染まっている。
…吐きそう。
どんだけオーク達居るんだよ。
取り敢えず俺は飛び交う砲撃の雨を滑空して必死に避けていき、次々と敵船を誤爆させていく。
っておい、お前ら誤爆の事考えずに一目散に俺に向けて大砲撃ってきてるだろ。
もうちょい脳味噌使えよ。
時に甲板の上に突っ込んでオーク達を海に突き落とし、時にブレスを吐いてオーク達を残滅していく。
「キャアアァァァァァァッ!」
「イヤァァァァァッ!」
「なにこれしゅごいいいいいい!」
…お前ら、最後の言葉がそれで良いのか?
特に最後の奴の悲鳴は面白みも無いし…。
「撃て!」
再び背後から号令が聞こえたから振り向いたら、今度は海賊達の船による砲撃だった。
彼らの砲弾は見事に全弾命中、次々と船に穴を開けて行く。
おっしゃ、やっと増援が来たか!
これで多分押し返せるだろ!
「ボス、謎の黒竜の奇襲により損害増大、至急増援を…ギャァァァァァァッ!!!」
…なんか一体のオークがすげぇ不吉な事行ってた気がすんな。
さっき大砲の弾を真面に食らって死んだけど。
まぁこれでオーク軍は壊滅状態、圧倒的に海賊達の方が優勢だ。
後は船に残った物資を海賊達が回収すれば…
そう思った時だった。
突然空に亀裂が現れ、其処から大量の何かが出て来た。
ちょ、何が起こった!?
「其処までだ、黒竜!」
空から大量のワイバーンと共に、オークの戦士達が現れたのだ。
まさかの増援かよ。




