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図書館で出会って  作者: 山之上 舞花
第1章 出会い編
8/43

8 学校からの帰り道で 前編

 暑い日差しの中、私、高槻(たかつき)由真(ゆま)と彼、吉田(よしだ)鷹広(たかひろ)は歩いていた。

 15時を過ぎても、まだ強い日差しが照りつける。

 学区の外れに住んでいるので、家まではかなり距離がある。


「夏期講習でクラスメートに対面するだなんて、どうすればいいのかな」


 彼がぼやくように言った。


「えー、『普通に転校してきました。よろしく』じゃないの」

「全員来るかな」

「ん~、来るんじゃないの~」

「……気楽に言ってくれるね」

「うん。他人事だもんね」

「高槻さ~ん」

「ふふふっ、ごめん」


 軽く返したら、彼にジト目で見られてしまった。

 なので、にっこりと笑顔を返したら、なぜかため息を吐かれてしまった。

 それから、彼は話題を変えてきた。


「ところでさ、望月(もちづき)先生と榎本(えのもと)先生って、若くてかっこいいよね」

「そうかな~」

「あれだけ格好いいとモテるだろうね」

「う~ん、まあ、騒がれてはいるよね」


 学校内で見かけた様子を思いだす。

 二人ともよく生徒に囲まれている。

 特に顧問をしている部活の、男子生徒と一緒にいることが多かった。

 

(まあ、女子にも囲まれていることがあるけど、それはどちらかというと遊ばれている気がするんだよな~、望月先生は)


「担任なのに他人事?」

「うん。他人事」

「きっぱり言うね」

「悪い?」

「……」


 彼から相槌も帰ってこなかった。

 なんかピンとくるものがあったから、訊いてみた。


「ちょっと、何考えたか言ってごらん。怒らないから」

「なんで、怒らないからってつくかな」

「失礼な事を考えたでしょ」

「か、考えてないよ」


 そのどもりが怪しいんだって。

 だから、疑わしそうに横目で見てやる。


「そ~う~?」

「うん。ただ、先生に関心がないんだなって思っただけ」

「……関心がないわけじゃないんだけどね。ちなみに先生情報知りたい?」

「なんかすごい情報でもあるの?」

「いんや、普通の情報。望月先生は私達が入学した年に大学を出て教師になったの。だからかな、みんなは話しやすいって先生を囲んでいるわね」

「高槻さんは?」

「私? 数学でわからないところは聞きに行くけどね。あとは、(しもべ)と化してるからさ」

「ぷっ……くっくっ……あはははぁ~」


 そう答えたら、条件反射のように笑いだした彼。


「よ・し・だ・く・ん」

「くっくっ……ご、ごめん。くっ……さっきのやり取り、思い出した」

「やっぱり笑い上戸でしょ」

「はぁ~、違うって。でさぁ~、望月先生が榎本先生のこと先輩って言っていたけど、同じ大学だったとか?」

「それが、違うんだなぁ~」

「え、じゃあ、サークル活動で知り合ったとか?」

「ブッブー。高校が一緒だったんだって。部活が一緒で……って、あれ? 何部っていっていたっけ?」

「……本当に……ないんだね」


 首をひねって考えていた私は、横で彼がボソッと呟いた言葉を聞き逃してしまった。


「ん? 何と言ったの?」

「いや、別に大したことじゃないから。それじゃあ先輩ということは、榎本先生は望月先生より1年か2年上なんだね」

「あ、そうなの。2年上なんだって」

「榎本先生は担任を持っているの」

「隣の3組の担任よ」

「教科は?」

「社会」

「社会?」

「あれ、見えない?」

「なんか意外。理数系だと思った」

「ふーん。そういう印象なんだ」


 赤信号で立ち止まった時に、彼は後ろを気にして振り返っていた。

 私も同じように見ると、そこには同じTシャツを着てスポーツバッグをもった少年が3人こちらを見ていた。

 あのTシャツはバスケ部だったなと、思いながらすぐに前を向いた。

 まだ気にしている様子の彼に訊いてみる。


「どうかしたの」

「見られているな、と思っただけだよ」

「そうね」

「もしかして、高槻さんてモテるの?」

「はぁ~。なんでそう思う訳?」


 思いがけないことを言われて、私は呆れた声をだした。


「学校でも見られていたし、彼らから刺すような視線を感じるから」


 彼の言葉に「ああ」と思った。

 確かに私も部活中の生徒の視線を感じてはいた。

 でもそれは、私服で学校に行ったから珍しがられたのだと、思っていた。


「それは……違う意味じゃないの」

「違う意味?」

「リア充爆発しろとか?」

「リア充って? ……ああ、そう見えてたんだ」


 蒼井さんや望月先生に勘違いされたことを思い出したのか、納得した顔をする彼。


「じゃない?」

「いや、違うでしょ。彼らの視線は『俺たちのマドンナになに馴れ馴れしくしとんじゃ、われ!』でしょ」

「ぷっ、マドンナって、いつの時代よ」


 納得したと思ったのに、突然昭和のドラマに出てきそうなヤクザ風の台詞が出てきて、吹き出してしまった。


「そうじゃなくても、モテてそうだよね」

「だから、なんでそう思うのよ」

「モテることは否定しないんだ」

「……」


 つい返答をし損ねてしまった。

 これじゃあ肯定しているみたいじゃない。

 そうしたら彼がなんでもないように続けて訊いてきた。


「もしかして、彼氏いるの?」

「いないわよ」

「ほんとに」

「ほんとよ」


 なんかおかしな方向に話が向かっているなと、私は思った。


「なんでって、聞いてもいい?」

「……まあ、今までつきあいたいって思う人がいなかっただけなんだけど」

「ふ~ん。そうなんだ」


 納得したようなしていないような微妙な表情で、彼は相槌を打ってきたのだった。


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