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図書館で出会って  作者: 山之上 舞花
第1章 出会い編
3/43

3 マンションで 前編

私の投稿文字数の目安は2000文字です。

改稿により「マンションで」も長くなりましたので、前後編にしました。


こちらも2019/1/16に、前後編を投稿します。

(ふうー、今日も暑いなぁ~)


 朝食を食べたあと、洗濯物をベランダで干しながら、私、高槻(たかつき)由真(ゆま)は昨夜のことを思いだしていた。



 19時30分頃に、父が帰ってきた。

 夕食を食べ終わりくつろいでいると、玄関のチャイムが鳴った。

 たぶん20時を少し過ぎた時間だったと思う。


 うちの家事は父との分担制だ。

 時間的にも夕食は私が作ることが多い。

 代わりに洗い物は父がする。

 父が夕食を作った時には反対になる。

 なので、このときも父は洗い物をしていたので、私は応対するために玄関へと行った。

 ドアの外には知らない女の人と、昼間に知り合った彼がいた。


「はい」

「夜分遅くにすみません。私は305に引っ越してきた、吉田(よしだ)といいます。遅ればせながら引っ越しのご挨拶をとおもいまして」

「あー、ちょっと待ってください。お父さ~ん」


 部屋の中に向かって声をかけると、すぐに返事が聞こえて来た。

 多分、この会話は父にも聞こえていたのだろう。

 父はすぐに出てきた。


「305に引っ越してきました、吉田です。どうぞよろしくお願いします」


 吉田さんは頭を下げた。


「こちらこそ、よろしくお願いします?」


 あれ? 父の挨拶の語尾が疑問形になったような気がする。

 横目に父のことを伺うと、驚愕に目を見開いていた。


「吉田、美良子(みよこ)さん?」

「えっ、まさか……」


 名前を言い当てられたらしい女性も、驚いたように目を見開いていた。


「俺だよ、高槻(たかつき)広彰(ひろあき)!」

「ええっ! 高槻君? 本当に高槻君なの」

「そうだよ。そうか、こっちに帰ってきたのか」

「ええ、……まあ……ね」

「立ち話もなんだから上がらないか」

「ええっと、……それじゃあ少しだけ」


 玄関での立ち話ではなんだということで、家の中に吉田親子を招きいれた父。夕方に彼と向かい合って座ったリビングのテーブルに4人で座った。


 でも、何でしょう、この展開。ついて行けないんですけど。


「えーと、改めて、こっちが娘の由真(ゆま)です」

「息子の……鷹広(たかひろ)というのよ」


 家に招き入れる時は少し強引な感じがした父は、向かい合って座ったら借りてきた猫のようにおとなしくなった。

 吉田母も、もじもじと落ち着かない風に話している。

 二人の様子を、私は一歩引いた気分で見つめていた。


(なんだこれは。どこのドラマの話よ。

 現実にはあり得ないでしょう。

 引っ越した先で元同級生に会うなんて)


 父は少し浮かれているみたいだけど、吉田さん……美良子さんは、なんか気まずそうに見えた。


「娘は今、中3なんだ」

「そう……なのね。鷹広も中3なのよ」

「そうか。由真と同級生か。学校の手続きとか終わったかい」

「ええ。転入の手続きはすんだわ」

「そうか」


 あきらかに挙動がおかしい吉田母。視線を合わせようとしないのに、父はそのことに気がつかないのか、嬉しそうに見つめていた。


(なーに、一人で納得してんのよ。

 明日も仕事があるんだから、引き留めちゃ駄目でしょう。

 仕方がない、一肌脱ぐか)


 私は時計をわざとらしく見てから言った。


「ねえ、お父さん。明日も仕事でしょ。あまり引き留めたら悪いわ。旧交を温めたかったら、別の日に誘えばいいじゃない」

「ああっ、そうだったな。悪い。つい、懐かしくて」

「いえ。私も知っている人が近くにいると思うと、心強いから」


 吉田母は口元に笑みを浮かべた。


「ああ、なんかあったら、頼ってくれ」

「そうね。その時にはお願いするわ」

「じゃあ、引き留めて悪かった」

「いいえ、これからよろしくお願いするわね」


 そうして、二人は帰って行ったのでした。



「よし、これで終わり」


 つい、声が出てしまった。

 洗濯物を干し終わったので、次はお風呂の掃除。ついでに、1週間ぶりの洗面台の掃除もする。

 とりあえず、今日する予定の家事は終わった。

 一休みしようと麦茶をだし、コップに氷と共に入れる。

 私が椅子に座るのを待っていたように、携帯が鳴った。

 見ると友達の片倉(かたくら)花南(かなん)からだった。


「はい」

『由真、おはよう』

「おはよう、花南。どうしたの」

『暇なら遊びに行かない?』

「えー」

『えー、じゃないし』

「だって、暑い。めんどい。外に行きたくない」

『そう言いながらも、図書館には行っているんでしょう』

「図書館は涼しいし、勉強できるし、うちの光熱費が助かるし」

『どこの主婦よ、それ』


 花南がすかさずつっこんできた。


「何とでも言って。それにうちら、受験生だしね」

『もー、由真ってば真面目すぎ。一日ぐらい遊んだっていいじゃん』

「んー、ごめん。今日はやめておくよ」

『えー、行こうよ』

「なら、図書館に行こうか」

『うちからだと遠いし~』

「だから、またにしよ。ね」

『うー、仕方ないな。じゃあ、明後日に夏期講習があるじゃん。その時に決めようよ』

「はぁー。仕方がない。付き合ってやるか」

『いやいやならいいも~ん。付き合ってくれなくても』

「あっそ。なら、行~かな~い」

『あー、うそうそ。じゃあ、明後日ね』

「うん、じゃあね」


 花南の遊ぼう口撃を避けることが出来て、私はホッと息を吐き出した。

 別に遊びに行きたくないわけではないのだけど、花南も言っていたように家が離れているのだ。

 自宅の時だったら、歩いても5分くらいで花南の家に行けたのに。


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