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図書館で出会って  作者: 山之上 舞花
第1章 出会い編
21/43

21 花火大会で その4(ペアで行動?)

「よかったわ。由真(ゆま)の姿が見えなくて、変なのに絡まれてんじゃないかと、心配していたのよ」


 みんなと合流を果たした私こと高槻(たかつき)由真(ゆま)は、蕪木(かぶらぎ)路香(みちか)からそう言われて憮然とした顔をした。


「私、そんなに隙があるように見えるわけ」

「そうじゃなくて、今日の由真はいつもよりもっと可愛いから、悪い気を起こしたやつに狙われたんじゃないかと思ったんだって」

「何を言っているのよ、みっちーは。中学生を相手にしようとする特殊性癖の人なんて、そうそういないわよ」


 私の返答に何故か顔を見合わせるみんな。私も集まっている皆を見回して、あることに気がついた。


「ねえ、集まっているのは私たちだけなの? 他の人たちは?」

「それこそ、何を言っているんだい、高槻さんは。大人数での移動は周りの迷惑にもなるから、約束したのは向こうでの集合だけだったろ。他の人たちはもう先に行ったよ」


 委員長の田中(たなか)がそう、答えてくれた。


「えっ? でも花火大会の会場までって話じゃなかった?」

「あのさ、現実を見ようよ、高槻さん。ここまでの電車でも、僕らでさえ離れてしまっただろ。20人近くの人数が固まっていたら、邪魔になるじゃないか」


 確かにそうよね。


「それじゃあ、ここからは男子のグループと女子のグループに分かれて移動だね」

「それなんだけど、由真たちが来るまでに話し合って変更したのよ」

「変更って、何を」


 路香が意味ありげに私と彼、吉田(よしだ)鷹広たかひろのことを見つめてきた。


「やはりね、女子だけって不用心だと思うのよ。だからここから先も一緒に行動しようってことにしたの」

「一緒にって、私たちは10人よ。この人数で纏まっていたら、邪魔って言ったじゃない」

「そうよ。だからとりあえずペアを決めて、その二人は離れないようにするの。女子は花火を見るための場所は知っているし、顔パスじゃない。他の人たちと離れ離れになっても、それならどうにかなるでしょう」

「そうだね。じゃあ、どういう風にペアを作るの」


 路香の言い分はもっともだと思い、頷きながら訊いた。


「一組は決定よ。それ以外は簡単にあみだを作ったから」


 ひらりと紙を振ってみせる路香。


「じゃあ、どちらが選ぶの」

「もう、男子の名前を書いてあるから、女子がこちらを選ぶのよ」


 そう言うと路香はあみだを辿りだした。


「ねえ、待って。私はまだ選んでないよ」

「だから、由真は決定しているから」

「どうして」

「あのね、ここで吉田君が他の誰とペアになっても、話が弾むとは思えないのよね。吉田君も慣れない状態じゃ、お祭りを楽しめないでしょ。というわけだからクラス委員の由真は、吉田君とペアで行ってね」


 そう言うと路香はあみだを辿って、その結果を他の人に伝えていった。私はといえば、しばし呆然としていたけど、はっとして隣の彼のことを見た。目が合うと彼は困ったように笑った。


「なんかごめんね、高槻さん」

「ううん。こちらこそみっちーが強引でごめん」

「だけど僕は嬉しいかな」

「えっ」

「まだ一回しか顔を合わせていない彼女たちより、高槻さんとのほうが気が楽だから」


 柔らかく笑う彼に、私の心臓はドキンと音を立てた……気がした。


 ◇


 ペアが決まり、まずは『おたま様』のところにお参りに行くことになった。一番先を田中と路香のペアが歩いて行く。次を沢渡(さわたり)片倉(かたくら)花南(かなん)のペア。その次を私と彼。後ろは小梁(こはり)早乙女(さおとめ)琴音(ことね)永井(ながい)会田(あいだ)結花(ゆか)が、四人で話しながらついてくる。


『おたま様』に近づくと屋台が出ている。最初の屋台は綿菓子。キャラクターの袋に入って、いくつも吊る下げてあった。それから定番のたこ焼き、お好み焼き、チョコバナナ、りんご飴などの屋台が続く。食べ物の屋台の間に、金魚すくいやスーパーボールすくいなどの店があった。

 から揚げに焼き鳥、フライドポテトの屋台の周りには、列が出来始めている所もあるみたいだ。


 参道に入るとさっきの電車の中みたいに、一気に身動きが出来なくなった。入って直ぐの屋台に人だかりができていて、そのせいで参道に入るのも出るのにも押しあいへし合いの状態となっているようだ。


 不意に右手を握られた。握ってきたのは彼で、彼は何も言わずに私の手を引いて、人々の間を進んでいく。

 人混みを抜けると、激混みなのはあそこだけのようだった。


「すごい混み具合だったね」

「本当だよ。えーと、田中君たちは……先を歩いているね」

「琴たちは、もう少し抜けられそうにないかな」

「ここでこうしていてもしょうがないから、お参りに行こうか」

「そうね」


 相づちを打ちながらも、私の目は気になる場所へと向いた。それに気がついた彼が訊いてきた。


「どうかしたの?」

「えーと、手はもう離してくれていいんじゃないかな」

「駄目だよ。またさっきみたいになったら、はぐれてしまうかもしれないだろ。こうしていれば、安心だよね」


 彼は柔らかく笑いながらも、少し力を入れて私の手を引いた。つられるように歩き出しながらも、私は彼のことを軽く睨みつけた。


「吉田君って、強引だね」

「えっ、そう?」


 彼は心外だという顔で、私のことを見てきたのでした。


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