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図書館で出会って  作者: 山之上 舞花
第1章 出会い編
19/43

19 花火大会で その2(男子と合流)

 私こと高槻(たかつき)由真(ゆま)は、友人4人のオモチャとなりました。天国のお母さん。こんな娘でごめんなさい。


「ちょっと、人聞きが悪いことを言わないでくれる」


 私が胸の前で手を組んで祈りを捧げるポーズをしていたら、蕪木(かぶらぎ)路香(みちか)早乙女(さおとめ)琴音ことね)に髪をいじられながら睨んできた。


 おかしいなー。私は心の中で呟いているのに。……ハッ! みっちーは実はエスパーだったの?


「誰がエスパーよ。わざとらしく言うのは止めなさいよ」


 チッ。少しくらい文句を言ったっていいでしょう。


「由真、不満があるならいいなさいよ」


 路香に再度睨まれてしまい、私はポーズを取るのを止めて彼女のほうを向いた。


「不満じゃないけど……なんで私が先なのよ」

「それが不満というんでしょ。可愛くしてもらったんだから、いいじゃない」

「いや、私は後回しでよかったという話なのよ」


 そう言ったら、路香だけでなく他の3人もため息を吐きだした。


「わかっていたけど、そういうところよ」

「そうよ。由真ってば、いつも自分は後回しにするんだもの」

「そうして時間が無くなって、やっつけ感満載の状態になっていたじゃない」

「私も由真の可愛さが半減しているのが、許せなかったんだから」


 路香、琴音、会田(あいだ)結花(ゆか)片倉(かたくら)花南(かなん)の順に言われてしまい、私は口を閉じた。


 確かに4人が言う通りだった。今まで5人で出掛ける時に、美容師のタマゴの姉がいる琴音……もとい、その琴音のお姉さんが練習台として私たちの髪をいじってくれることが多々あった。でも、さすがに5人をやるには時間が足りず、いつも私は最後に簡単アレンジ程度で終わっていた。


 どうやらみんなはそれが不満だったみたい。琴音は美容師を目指していないけど、ヘアアレンジには興味を持っていてお姉さんの助手をしていた。だから今日は思う存分自分の手で出来ると喜んでいる。


「それに今日は目的が違うからね」

「そうそう。私たちはどうでもいいけど、由真は可愛くしないとね」

「ふっふっふっ。見てなさいよ。絶対、ほえ面かかしてやるんだから」

「ちょっと、目的変わってない?」

「あら、みっち。言ったでしょ。ああいう輩には格の違いを見せつけるのが早道だって。由真に張り合えると思っている時点で、頭がおかしいのよ」


 えらい言いようだけど、私にはさっぱり何のことかわからない。


「ねえ、何のことかな、それ。私にもわかるように話してくれない?」

「あー、由真は知らなくていいの」

「そうそう。こういうことは私たちに任せておいてよ」

「由真―、それよりも、悪いんだけど先に着替えを始めてくれないかな。思ったよりもヘアアレンジに時間が掛かっているから、集合時間ギリギリになっちゃうかもしれないのよ」

「わかった。それなら花南とゆっかも帯はあとにして、浴衣を着ておこうか」

「そうだね」


 そうして、5人でわいわい言い合いながら着替えとへアレンジを終えたのは16時20分だった。結花の家からは待ち合わせの駅前までは歩いて15分くらいだ。

 だけど結花のお父さんが車で送ってくれると言うので、その言葉に甘えることにした。

 駅前はさすがに混んでいて、私たちみたいに家族を送ってきたらしい車でいっぱいだった。何とかスペースを見つけて停めてくれたので、私たちはお礼を言って車から降りた。


 この人混みで見つけられるか心配だったけど、待ち合わせ場所に指定したところ(ただし委員長たちグループのみ)に彼らは待っていて、彼らの方から声をかけてきた。


「蕪木~、こっち~」


 沢渡(さわたり)の声がした方へと、私たちは寄って行った。そこには沢渡だけでなく吉田(よしだ)鷹広(たかひろ)と、田中(たなか)委員長に永井(ながい)小梁(こはり)がいた。


「ごめん、待たせた?」

「いや。僕たちもさっき来たところだよ」


 私が言えば、田中が返事を返してくれたけど、何故か彼は私のことをしげしげと見てきた。


「なに?」

「そうやって髪を上げているのって、はじめて見るなと思って」

「そう言えばそうだね。いつもは後ろで一つにしているもの」


 つい気になって(うなじ)へと手をやれば、男子たちが息を飲んだ……ような気がした。視線を向けたら、逸らされてしまったけど。


「ねえ、何か言うことないの。あんたたちは」

「おー、馬子にも衣裳……だったか?」


 路香に言われて、沢渡があやふやな記憶から自信なさげに言った。ようだ。使い方が違うと言ったほうがいいのだろうか。


「誰が馬子にも衣装よ。そんなことを言うのなら、これは渡さないわよ」


 路香が巾着から取り出した封筒を振りながらそう返した。


「嘘です。とても似合ってます」

「嘘くさいわね」

「本当だよ。……というか、みんながかわいくて、言葉がでなかったんだ」


 小梁が照れ隠しなのか、頬を人差し指でかじる仕草をしながら言った。けど、その目は結花を(とら)えている。


 ……ほおー、そうか。小梁は結花のことが……。これは協力を……。

 じゃない。小梁の気持ちより、結花の気持ちを優先しないと。


 そう思いながら結花を見れば、小梁の視線に気づいた様子もなく琴音と話していた。


「まあいいわ。それじゃあこれは委員長が持っていてね。この前言ったように、場所の地図とここに入るための通行証よ。失くしたら入れないから気をつけてよ」

「えー、そこは蕪木の名前を出したらどうにかなるんじゃないの?」

「なるわけないでしょ。というかここは私の知り合いじゃなくて花南の関係よ」


 その言葉に沢渡たちは目を丸くして花南のことを見つめたのだった。


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