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図書館で出会って  作者: 山之上 舞花
第1章 出会い編
18/43

18 花火大会で その1(女子集合!)

 気がつくと花火大会の当日。


 などということはなく、学校に行った日からあとも、私、高槻(たかつき)由真(ゆま)と彼、吉田(よしだ)鷹広(たかひろ)の毎日は代り映えのしないものだった。


 お互いに家事を終わらせた10時くらいから、お弁当を持って図書館へと行く。そして、それぞれに勉強をした。

 お昼を食べている時に、お互いにわからないところがいくつあったのかを報告しあう。


 それからもう1時間くらいそれぞれの勉強をして、帰路に就く。

 もちろん買い物をしてから帰るのだ。

 家に着いたら洗濯物を取りこんだりと、それぞれの家の家事を済ませ、それからどちらかの部屋に行く。


 台所に二人で並び、夕食の支度をする。

 そして夕食が出来上がったら、図書館で勉強をしていてわからなかったことを教え合う。

 高槻父と吉田母が帰ってきたら、4人で夕食を食べ、片づけは親がした後、それぞれの部屋へと帰って行く。


 そう、いつの間にかルーティンが出来上がっていた。


 切っ掛けは夏期講習の翌日。私と彼はお弁当を持って図書館へと行った。私は数学でわからないところが出来て、つい隣にいる彼に聞いてみたのだ。彼は数学が得意科目だったのか、分かりやすく教えてくれた。


 解き方がわかったことでつい、声をあげてしまったら、向かいから咳ばらいが聞こえてきた。


 首を竦めて軽く会釈をして、またそれぞれの勉強に戻った。そのあと、彼から英語のことで質問をされてそれを教えたら、やはり咳ばらいをされた。

 小声で話していたつもりだったけど、静かに本を読みたい人にはうるさかったのだろう。


 翌日は昼食の時に疑問を教え合ったけど、それだと時間が足りなかった。

 というより、お弁当を食べるのをそっちのけで、問題に向き合ってしまったのだ。


 これではいけないと、家に戻ってから教え合うことにした。


 ところが家事、というより夕食作りに時間がとられてしまい、片方の質問に答えたところで、父が帰ってきてしまった。


 父は彼がいることに驚いていたけど、真面目に勉強をしていたことで、二人でいたことを容認してくれた。


 そして、吉田母と話し合った(何を話し合ったのだろう?)……結果、交互にお互いの部屋で夕食を作って、4人で食べることが決まった。

 これについては父を問い詰めたけど……私たちの勉強時間の確保のためと言われたら、反対する理由はない。よね。


 そんなこんなでそういう状況になって一週間がたった。

 最初は戸惑ったけど、人間慣れるもので……。



 とそのことは、今はどうでもいいか。バスに揺られながら、私はこの10日ほどのことを回想していたのだった。


 私は約束通りに13時に会田(あいだ)結花(ゆか)の家に来た。もう早乙女(さおとめ)琴音(ことね)が来ていた。二人は準備万端にして待っていた。


「どうしようか。私たちは先に着替え始める?」

「う~ん。出来ればもう少し後がいいな~。由真のおばあさんのおかげで、きつくない締め方を教えてもらっているけど、動きにくいもの。出来れば……ねえ」

「私も~。結花に同じ~」


 私たちは顔を見合わせて苦笑めいた笑いを浮かべた。琴音と結花は同じ小学校だったので仲が良い。小4からずっと同じクラスだと聞いている。中1で一緒のクラスになった時に、二人の仲の良さがうらやましかった。


 私も片倉(かたくら)花南(かなん)と小学校入学からの仲だ。クラスは小学校の時は一年おきに一緒になった。中学は中1が別のクラスで、中2、中3と同じクラスになっている。


 蕪木(かぶらぎ)路香(みちか)とは、やはり中学に入ってから仲良くなった。中1と中3で同じクラスだ。路香は性格からか物言いがはっきりしているので、彼女のことを苦手にする人もいる。私には逆にそれが過ごしやすいのだけどね。クラス委員を押しつけられる私を、何かとフォローそしてくれるし。

 たまに花南に嫉妬されるくらいには、路香と仲が良いと思う。


 10分ほど遅れて花南と路香が来た。なんでも花南は親に送ってもらえるということで、路香を拾って来る約束をしたらしい。が、家を出て少しして花南が下駄を忘れたことに気がつき、家に戻ることになったそうだ。それで路香のところに行くのが遅れたという。

 この二人は性格が違い過ぎて合わなく見えるけど、何やかやといって仲が良いと思う。


 五人揃ったところで、改めて浴衣を揃えてから少しの間、おしゃべりタイム。


「着替え始めるのって15時からでいいよね」

「そうね。みんな浴衣の着付けまではできるもの」

「それじゃあ少し話をしていようか」

「ねえ、それだったら、私、由真の髪を結いたいんだけど」


 琴音がそう言ったことで、みんなの視線が私へと集まった。


「それ。私もやってみたいと思っていたんだよね」

「そうそう。由真の髪ってサラサラの黒髪ロングじゃない。一度アレンジしてみたかったのよ」

「えっ。いいよ、そんなことしなくて。というか、私の髪って癖がなさ過ぎて結いにくいといわれたのよ。だからいつものようにポニーテールにしてお団子に纏めるから」


 私は自分の髪を触りながらそう言った。けど、そんな言葉で聞いてくれる路香たちではない。立ちあがった4人は私を囲むように……じゃなくて私を囲むと、後ろに立った琴音がいつの間にか手に持ったブラシで私の髪を梳かしはじめた。


「本当に良い手触りよね」

「私にも触らせて」

「私も」

「ところでどういう風にするの」


 私を無視して髪型の相談を始めた4人に、私は諦めの境地で椅子に座っていたのでした。



補足

「喫茶店の家で」で、路香の家で食事をした代金は、帰って直ぐ由真と鷹広の二人で届けに行っています。

この後、本文中にその描写は出てこないので、補足として書いておきます。

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