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図書館で出会って  作者: 山之上 舞花
第1章 出会い編
15/43

15 喫茶店の家で その2

 食べ終わった食器を台所に運んで、私、高槻(たかつき)由真(ゆま)と、彼、吉田(よしだ)鷹広(たかひろ)で洗った。蕪木(かぶらぎ)路香(みちか)は他の男子たちに指示をして、洗い終わった食器を拭いて片付けていった。


 食器を片付け終わり、路香が用意してくれた飲み物を持って、みんなでリビングに移動した。


「さてと、それで、なんで私達を追いかけてきたのかしら」


 路香が男子に聞いた。


「わかってんだろ、蕪木」


 沢渡(さわたり)が笑顔を私達に向けて言った。


「あのね、言われないとわからないこともあるのよ」

「へえ~、蕪木が」

「あんたは私をなんだと思っているのよ。まあ、いいわ。私じゃなくて由真に聞きたいんでしょ。それと吉田君に忠告かしら」


 路香の答えに沢渡は田中(たなか)たちと顔を見合わせた。


「やっぱ、蕪木はわかってんじゃん。そういうわけで高槻、なんで学校であんなことを言ったのか、教えてくれよ」


 沢渡が私のほうを見てきた。私は肩をすくめてから答えた。


「仕方ないでしょ。八木(やぎ)さんも鈴木(すずき)さんも納得しそうになかったじゃない。とりあえず少しの間一緒に行動すれば、納得するんじゃないかと思って」

「どうだか。あいつらがそれで納得するわけないだろう。ここぞとばかりに吉田に猛アピールするに決まってんだろ」


 沢渡が咬みつくように言ってきた。気持ちは分からなくもないけど、咬みつく相手を間違えないでほしいと思う。


「それは、大丈夫だと思うけど」

「そうだね。大丈夫じゃないかな」


 私が大丈夫な根拠を説明しようと思ったら、彼が口を挟んできた。


「転校生が珍しいだけなんだと思うよ」


 彼の言葉にみんなは目を丸くして、見つめていた。


(……そうだった。吉田君は自己評価が低いんだった。そこを考えに入れるのを忘れてた)


「えーと、吉田? お前って、実は女子のあしらいがうまいのか?」

「女子のあしらい? えーと、僕みたいな普通なやつに、構おうって女子は少ないと思うけど?」


 彼の返事に、今度は私のほうにみんなの視線が向いた。

 いや、待って。そんな目をされても私も知らないから。


「吉田君、前の学校でモテたんじゃないの」

「またそれ? 高槻さんにも聞かれたけど、どちらかというと僕は女子に敬遠されていたんだよ」


 もう一度、私に視線が集まったけど、目線で聞かないでと思う。

 そこ。彼に向けて指を指すようにしないで。


「えーと、なんか……牽制し合った結果、距離を取られていたみたい」


 私の言葉に腕を組んで考え出すみんな。


「ところで由真は、なんで大丈夫だと思ったの」

「それはさ、集まるために指定した時間よ。あの時間って一番人が動くじゃない。花火が始まる前に、屋台で買って食事を済ませたいでしょ。あと、花火を見るのにいい場所を取りたい人も多いでしょ。電車で一駅、移動もしなければならないわけなんだから、電車に乗る時も混んでいると思うのよ。皆で同じ車両は無理でしょ」


 路香が訊いてくれたので理由を説明した。


「な~るほど。さすが高槻さんだ」

「あとね、彼女たちも浴衣を着てくると思うのよ。下駄なんて履きなれてないだろうから、人混みで引き離すことが出来るんじゃないかと思うのよね」


 私の更なる説明にみんなが頷いている。


「でもさ、あいつらがそんなに簡単に引き下がると思えないけどね」


 小梁(こはり)が一学期のことを思いだしながら言った。


「そうなんだよな。だから蕪木たちのグループと俺たちと一緒に行動しないか」


 沢渡がにこやかな笑顔で言った。対して路香ははっきりと顔をしかめて答えた。


「嫌よ。なんで私が八木除けになんなきゃならないのよ」

「現に八木は蕪木のことを苦手じゃんか」

「だから、嫌だって言っているでしょう」

「それでも、吉田のために頼む」

「だから、どうして今日会ったばかりのやつのために、しなきゃならないのよ」

「クラスメートじゃん。いいだろう」

「やーよ!」


 路香がいい返事をしないので、沢渡は私のほうを向いて言った。


「高槻、お願いします」

「え~、それなら学校で言ってよ」

「あの場で言えるわけないだろ。それこそ、自分たちも一緒にと、再び言うに決まってんじゃん」

「でも、みっちーが嫌がっている時点で無理だよ」


 ムウッとした顔で黙る沢渡。次に永井(ながい)が私に言ってきた。


「高槻さんは吉田君と同じマンションにいるんだろ。それなら吉田君と一緒にいたっておかしくないじゃないか。このあたりに不慣れな彼を案内してやるってことなら、一緒にいたっていいと思うけど」

「え~、やだよ~。それじゃあ八木さんに私が睨まれるじゃない。勘弁してよ」


 つい本音が漏れた。永井の顔に苦笑が浮かんでいた。

 そうしたら彼が口を挟んできた。


「えーと、あのさ、少し聞きたいことがあるんだけど、いいかな」

「あー、そうだった。ごめん、吉田。説明もなしに、今の会話じゃわかんないよな」


 沢渡が手を合わせて謝った。


「いや、なんとなくだけど、わかる様な気はするよ」


 彼は真顔で答えた。


「学校で僕に話しかけてきた女子、えーと八木さん? 彼女はトラブルメーカーなんだろう。あと、すっごいもの好きだよね」


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