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図書館で出会って  作者: 山之上 舞花
第1章 出会い編
14/43

14 喫茶店の家で その1

 カラン


 喫茶店のドアを開けると扉につけてあるドアベルが鳴った。私、高槻(たかつき)由真(ゆま)はこのドアベルの音が密かにお気に入りだったりする。


「ただいま」

「こら、路香(みちか)。お店のほうから帰ってこないでと、いつも言っているでしょう」


 蕪木(かぶらぎ)路香(みちか)の言葉におばさんが文句を言ったけど、続けて私たちが入ってきたので目を丸くした。だけどすぐに笑顔に変わり、私達に声を掛けてきた。


「あら~、いらっしゃい。由真ちゃん、久しぶりね」

「お久しぶりです。えー、本当はいけないんですけど、お腹がすいたのに耐えられなくて、寄らせていただきました」

「まあ、光栄だわ~。後ろの君たちも、いらっしゃい。路香、みんなはお店で食べるのかしら」

「この後のお客さんは?」

「そうねえ、今日はアイコウ印刷さんが14時から使いたいって言っていたわね」

「それならうちのほうで食べるわ。みんな何を食べたいか決めたら、移動するよ」


 路香がテキパキとみんなにメニューを渡した。二人ずつメニューをのぞき込んでいる。私も彼、吉田(よしだ)鷹広たかひろと一緒にメニューを見た。


「高槻さんは、何がお薦めかな」

「私はグラタン系が好きでよく頼むけど、夏は暑いでしょ。だから、パスタやサンドイッチにすることが多いかな」

「そうかー。って、えっ。冷たいパスタ?」

「あっ、それね、おいしいよ。トマトのやつとクリームのやつがあるの。これは限定20食ずつだから、まだあるかな」


 メニューから顔をあげたら、ちょうど厨房から顔を出したおじさんと目が合った。声が聞こえたのか、右手を三本、左手を四本見せてきた。


「あっ、まだあるんだって」

「それじゃあ、僕は冷たいトマトのパスタをお願いします」


 彼はメニューから顔をあげて言った。


「俺も! 同じものを」

「俺は冷たいクリームのやつがいいな」

「ミーツ―」


 永井(ながい)は彼と同じもの、小梁(こはり)沢渡(さわたり)は冷たいクリームのほうに決めたようだ。


「委員長はどうするの?」

「僕はカツサンドがいいな」

「わかったわ。それで由真は?」

「私は和風のツナおろしがいいな」

「じゃあ、私も由真と同じものにするわ」


 路香がそう言ったら、おばさんは注文を書きつけてから路香に言った。


「それじゃあ路香、案内をしたら手伝いに来なさいね」

「わかったわ」


 路香に案内をされて、一度お店を出てから隣の自宅の方へ行った。路香は私達をリビングに案内すると、すぐに着替えに出て行ってしまった。

 私は鞄を邪魔にならないところに置くと、リビングを出て行こうとした。


「高槻さん、どこに行くの」

「運ぶのを手伝ってこようと思って」


 私は何度か路香の家に来たことがあるから、勝手知ったるで、お店側の扉に向かおうとした。


「それなら俺たちも手伝うって」


 田中(たなか)が所在無げに立っていたけど、私が動いた後をついてこようとした。


「待っててくれていいのに」


 そう言ったけど、はじめて来たうちで落ち着かない気持ちはわかるから、後をついてくるままにした。

 お店とのドアを開けて、おばさんに声をかける。


「おばさん、スプーンやフォークはお店からにしますか」

「由真ちゃん、そうねえ。それじゃあ、お水とスプーンとフォークは家のものを使ってくれるかしら」

「わかりました」


 そう言って引っ込もうとしたら「待って、由真ちゃん」と言われた。おばさんはおしぼりを取り出すと、私に渡してきた。

 それを受け取り、後ろにいた田中に渡そうとして、苦笑が浮かんだ。

 他のみんなも一緒にきていて、田中の後ろに並んでいた。


「これを持っていってね」


 私は沢渡におしぼりを渡した。そこに着替えが済んだ路香が姿を見せた。


「みっちー、おばさんが水とスプーンとフォークは、家のものを使ってだって」

「わかった。それじゃあ由真に、それの用意を頼んでいい?」

「いいけど、勝手に引き出しとか開けていいの?」

「由真なら知っているじゃない」


 路香の言葉通り、私は何度か泊まりにもきているから、台所のことは分かっている。と思う。


 台所に入り引き出しからスプーンとフォークを7つ出した。それからコップを出した。


「高槻、詳しいな」

「何度か泊まりに来ているからね」


 永井が感心したように言いながらそばに来た。私が洗ったスプーンとフォークとコップを、布巾で拭いてくれた。スプーンとフォークは小梁がリビングに持っていった。


 拭いたコップに田中が氷を入れて、彼が水を入れていった。それを私と永井がリビングに運んだ。


 沢渡と小梁はお店とのドアに行って、サラダを運んでいた。そうこうしているうちに、まずは冷たいパスタが出来上がり、次にカツサンド、最後に和風ツナおろしパスタが出来上がった。


「それじゃあ、食べましょうか。いただきます」

『いただきます』


 路香の言葉にみんなも唱和して、一斉に食べだした。


 途中で、フライドポテトをおばさんが持ってきてくれた。


「これはおまけよ。それだけでは足りないでしょう」

『ありがとうございます』


 うれしそうに男子たちはお礼を言った。私もお礼を言ったけど、少し微妙な気分だ。というか、私の見間違いでなければ、男子たちのパスタは増量されていると思うのだけど。


 この後、自分の分を食べ終えた私は、中学生男子の食欲に目を丸くしたのだった。


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