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美奈子ちゃんの憂鬱

美奈子ちゃんの憂鬱 選びし乳 XXセンチ差の破壊力について

作者: 綿屋 伊織

桜井美奈子の日記より


 放課後、みんなで教室掃除。

 詩乃さんの授業で宿題忘れた水瀬君と羽山君、南雲先生の授業中に居眠りした私と未亜……。

 ま、理由はいろいろあるけど、みんな罰掃除だ。


 「ちゃっちゃとやって帰ろうぜ」という羽山君と一緒に机を運ぶ私。

 その後ろでは水瀬君がモップがけ。


 

 事件は、そこで起きた。



 「おい水瀬!足下にバケツが――」

 「え?――わっ、わっ!」

 ガシャンッ!

 羽山君の声がしたかと思うと、何かが倒れる音、そして、背中と胸の辺りに違和感が走る。

 「へ?」

 恐る恐る下を見ると、誰かの手が、私の胸を鷲掴みにしている。

 「いっ、痛たたたっ……」

 背中から聞こえる声は水瀬君。

 「ご、ごめんね。桜井さん、すぐ動くから」

 「あ、あのね……」

 ムニュ

 ムニュ

 自分で表現するのも何だけど、水瀬君が動こうとする度に、胸を掴む手が動くわけで……。

 

 水瀬君を蹴り飛ばしてやったのは、女の子として当然のことだ。



 水瀬君曰く「転びそうだったので、思わず掴んでしまった」そうだが、女の子の胸を掴んでタダで済むはずはない。

 

 

 後の掃除は、水瀬君一人でやってもらい、帰りにチャーシューメン大盛りと餃子をおごらせた。

  

 ま、それで勘弁してあげよう。


 うん。


 やっぱり、私は優しい人間だと思う。   

 

 


 数日後

 桜井美奈子の日記より


 朝から瀬戸さんが激怒している。

 ワケを聞いた。

 昨日、先生に頼まれて資料室の片づけを、水瀬君と手伝ったそうだ。


 そこでのこと。


 水瀬君は、この前の掃除の時同様、何かに蹴躓いて転びそうになった。

 「わっ。わっ」

 瀬戸さんによると、バランスを崩した水瀬君が、背後から手を出してきた。

 瀬戸さんも「胸を触られる」と思ったそうだけど、水瀬君の手は、そのまま瀬戸さんの胸の数センチ手前で空を切ったまま、足下へ消えていき、つかむ物のない水瀬君はそのまま転んだという。


  

 「つまり――」

 言いたくないけど、まとめましょう。

 「私の時は、つかめたのに、瀬戸さんの時はそのままスルーしたってことは……」

 勝った!

 勝てた!

 勝ちました!!

 内心でガッツポーズ!


 対する瀬戸さんは……

 「うっ、うぇぇぇぇぇぇん!!」

 あーあ。泣き出しちゃった。

 瀬戸さんは言う。

 「胸の大きくなる体操だって中学からずっとやってます!それに○胸クリームだって始めました!天○のブラだってずっと!」

 「そこまでやって……それで―――スルー?」

 「うっ」

 「逆にまずくない?」

 「……ヒドイです」

 


 

 

 「瀬戸さん……二十歳まで希望は捨てちゃだめだよ」


 凹む瀬戸さんに、私が出来たことといえば、そんな慰めを言う程度のこと。




 

 ただ――




 この日一日、




 私はすばらしい優越感に満たされていた。

  




 うん。今日はいい日だった。




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