プロローグ
※5/9:誤字脱字を修正しました。
谷島篤美
38歳
独身
女
学習塾講師
仕事終わりのビールと休日前の居酒屋通いが楽しみで、趣味は深夜の散歩。
彼氏なんてもう何年もいない。
そんな寂しい40手前の私が、何の因果か異世界とやらに召還された。
……ピチピチ10代のオウジサマの嫁として。
‐‐‐‐
話せば長くなるから端的にいこう。
その日、私は、動物園の猿のように授業中に騒ぎやがるクソガキ…失礼、可愛らしい生徒達に日本史と古文を教え、クタクタになって愛すべき安住の地である我が家(1DK)に帰宅した。
靴を脱ぎ散らかし、通勤バッグをベッドに放り投げ、さぁ、愛しのビールちゃんとご対面!と冷蔵庫を開けた瞬間、私の意識は途絶えた。
気がつくと、私は愛すべき我が家ではなく、冷たい石畳の上に立っていた。
私の周囲には、石畳に描かれたファンタジー漫画で見るような魔法陣が広がり、その向こうに、これまたファンタジー映画に登場するような格好の人間達が並んでいた。
RPGに出てくる神官みたいな格好をした狸みたいな顔と体格の暑苦しいオッサン、フルCG?むしろ人外?って聞きたくなるようなスンゲェ美人、中背中肉平凡を絵に描いたような若い青年、ごっつい剣を下げた赤毛のお兄さん、……以下略。
狸のオッサンが言うには、私はどうやらこの国(タユラ国というらしい)の平凡を絵に描いたような容姿の御歳18歳のオウジサマの嫁、つまりは未来の王妃様、国母になるべくして召還されたらしい。
……ちょっと待て。
これはあれか?
今時流行ってるらしい異世界トリップとかいうやつか?
塾に通ってる女子中学生がキャイキャイ言いながら回し読みしてた小説みたいなノリなのか?
異世界トリップして、イケメンに囲まれて逆ハー状態になって、最終的にオウジサマと結婚しちゃいます!ってあれか?
……いやいやいやいや。
……ないないないない。
ていうか、普通こういうのって、女子高生とか女子大生とがセオリーじゃないの!?
何故、四捨五入したら40のオバサン呼んじゃってるのよ!?
しかも、オウジサマめっちゃ普通じゃん!!
オウジサマっていうより、モブAって感じじゃん!!
コレは、どうしろっていうのよ!!
ってな感じで、説明を受けて私が内心パニック状態になってたとき、どうやら向こうも軽く騒ぎになっていたみたいだ。
途中、可愛らしいメイドさん(秋葉原にいるようななんちゃって萌えメイドじゃなく本物の)がお茶を入れてくれて、落ち着こうとお茶を啜っていると、モブAオウジサマがとんでもない爆弾を投下しやがった。
「こんな不細工な女、冗談じゃない。……とっとと追い出せ」
結果、これまでの受け入れがたい非日常(むしろこれは夢とか私の妄想とかだったらいいのに……けど太ももを全力で抓ったら普通に痛かった。……チクショウ、現実かよ……)とそのあまりの発言に呆然としていた私を余所に、狸オヤジや美人さんやらがモブAオウジサマの説得を試みた。しかし、平凡面のオウジサマの意思は覆されることなく、私は申し訳なさそうな狸オヤジ達を背後に、ガタイのいい兵士のお兄ちゃんに両手を拘束され、散々城内を歩かされた挙げ句、文字通り城から放り出された。
……こうして、私の異世界生活が暗澹たるスタートをきったわけである。