脳筋令嬢、可愛すぎて婚約破棄された男のコ(子爵令息)を拾う
「ねぇミリー、ちょっと食べすぎじゃない……?」
「んぐ? ……ごくん。いや、最近食費に回せるお金が減ってな……。皆ダンスと社交に夢中なんだ。どうせ余るのだから、私が食べてしまってもいいだろう?」
「そういう問題じゃなくてね……」
私は呆れる友人の話を聞くのもそこそこに、テーブルの上に並ぶ豪勢な食事に再度視線を向ける。ここは王国屈指の学園だけあって、学生パーティであっても提供される食事が美味しいのだ。余らせるのは勿体ない。
さて、次は肉に取り掛かろうか――そう思った時、パーティ会場の一角が騒がしくなった。
『もう、いい加減にしてくださいまし!』
「むぐ?」
「何かあったのかな?」
聞き覚えのある声だな?と思いながら、食べる手は止めず、マリエッタと共に騒がしい方へと注目すると――
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「ノエル・クロイス様……今この時をもって、貴方との婚約を破棄させていただきますわ!」
「なっ――」
婚約者であるエヴァンジェリン・ローゼンベルク侯爵令嬢による無慈悲な宣告に、僕の頭は真っ白になった。
しばし呆けたのちに、何とか気力を総動員して彼女に問い質す。
「何故ですかエヴァンジェリン様! 僕に、その、武勇はありませんが……貴女に釣り合う男になるために、王国法、領地経営、商法、語学、魔物学――様々な分野を身に着けてきました。他に何が――」
「しらばっくれるのはお止めくださいまし!!」
エヴァンジェリン様が手に持っていた扇子を大きく打ち鳴らす。それだけで僕の背はビクンと跳ね、我ながら臆病さに泣けてきそうになる。
そして……続けられた言葉に、更に打ちのめされることになる。
「貴方のお顔が可愛すぎて、私のプライドがどれだけズタズタになっていることか、貴方は想像できませんか!?」
「――」
男であるのに、可愛すぎる顔。
――魔性の男。
僕の蔑称だ。
王国のどのご令嬢よりも、可愛らしい男。
「今この場で、私以上に殿方から視線を集めていることにお気付きになりませんか!?」
「それは……」
「これだけではありません……私の護衛騎士も、お兄様も……お父様まで! 貴方に会うたびにだらしなく相好を崩すのですわ! 女として、何もかも嫌になって当然のことでしょう!!」
誰も彼も、僕を女として見る。男物の服を着ているのにも関わらず、だ。
ご令嬢としては、女である自分より可愛らしい男がいるというのは、屈辱なのだろう。それはわからないでもない。
でも、貴女も想像してみてほしい。
……可愛らしいと言われるたびに、顔しか評価されないことに、僕のプライドがどれだけズタズタになっていることか――
俯き、拳を握りしめ、溢れそうになる涙をこらえていたその時。
初夏を感じさせる晴れやかな風が吹いた、気がした。
「エヴァ。その子、要らないのなら私が借りてっていいか?」
ハッとして僕が顔をあげると、そこには。
真っ赤な髪を炎のごとく揺らめかせ、同じく炎を瞳に宿した少女が、凛と立っていた。
……何故か、骨を咥えて。
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「……ミリー、貴女、正気ですの?」
「? 飯はさっき食べたからな。空腹で幻覚を見たりはしてないぞ?」
「そういう問題ではなくてですね……」
先ほど聞いたばかりな気がする言葉を口にしつつ、エヴァは大きく溜息を吐く。
むしろ、このような場所で婚約破棄を言い渡すなんて、私の方がエヴァの正気を問いたいところであるが……言っていたことが事実なら、そりゃ嫌にもなる、か?
「貴女はノエル様の噂を聞いたことがないのですか? それは男を誑かす魔性です。……関わると、私みたいに気が狂いますわよ」
「……っ」
それ、と扇子で示されたノエル少年が顔をわずかに歪める。しかし反論をしない辺り、認めているのだろうか。
「それとも貴女、男っ気がないかと思えば、女性の方が好みでしたか?」
「ん? 何を言っているんだ。彼はちゃんと少年だろう?」
「「えっ?」」
何をそんなに驚く。
なるほど、彼の顔は可愛らしい。煌めく銀の髪も、蒼の瞳も、白磁のような肌も非常に綺麗だ。
ではあっても、骨格から何から、彼が少年であることを示しているというのに。魔物の雌雄に比べればよっぽどわかりやすいぞ?
まぁエヴァも興奮しているし、疲労も溜まっているのだろう。今度お菓子でも持って愚痴でも聞いて……いや今はお菓子代も厳しいんだったな。むぅ。
「ともかく、私は彼に用があるのだ」
「……どうして、僕に……?」
「先ほど言っていただろう。様々な分野を身に着けてきたと。私は、君のその能力を借りたい」
「え……僕の、能力を……?」
ノエル少年が意外そうな顔をする。まぁ唐突だったかもしれないが、私に目を付けられたのだ。諦めてくれ。
「それとも口から出まかせだったのか?」
「そ、そんなことはないです!」
「じゃあいいだろう」
「ちょ、ちょっと――」
エヴァにだって冷静になる時間を与えなければな。それには元凶がいなくなるのが一番だろう。
私はノエル少年の首根っこを引っ掴み、エヴァに「ではな」と手を振ってからパーティ会場を後にした。
……食べ物、持って帰りたかったな……。マリエッタ、代わりに包んでくれたりしないかな……しないよな……。
「……あの、僕、何で布を被せられてるのかな……?」
「ここが女子寮で君が男だからだ」
「え? 僕、男に見られてる……? いや待って女子寮!?」
魔性だか何だか知らんが、君が男なのは事実だぞ。連れてきたのは私であるが、大手を振って女子寮など歩かせられるものか。
騒ぐノエル少年の口を塞ぎながら、目的地である私の部屋へと辿り着く。布を剥いでからテーブルへと案内し、なけなしの茶を淹れた。変な物は入っていないから、ソワソワしてないで飲んでくれたまえ。
「さて、君のことはエヴァの婚約者として聞いてはいたが、こうして話すのは初めてだな。バーンシュタイン伯爵家のミリアムだ」
「クロイス子爵家のノエルです。は、初めまして、バーンシュタイン様」
「そう固くならず、ミリアムでいい。ノエルと呼んでも?」
「ど、どうぞ。……あの、ミリアム様は、エヴァンジェリン様とはどのようなご関係で?」
「友人だよ」
とはいえ、私がエヴァにどう思われているかは不明だがな。婚約者を紹介してもらえなかったし。あの様子では彼女にも色々と理由があったのだろうが……悩みを打ち明けてもらえなかったは、これでもショックなのだよ。
まぁそれはさておき、とっとと本題に入らせてもらおう。
「恥ずかしながら、我が家は今、財政難に陥っていてね……。魔物を狩っては売ってを繰り返しているのだが、一向に改善しなくて困っているのだ」
「あぁ、バーンシュタイン伯爵家って……あの『武』と『お人好し』の。確か……ご友人の借金を背負ったとか……」
「ハハ。お人好しと言えば聞こえはいいが、貴族としては甘すぎるだけだよ」
父上にも困ったものだ。甘くとも嫌いではないし、むしろ尊敬しているがな。
「その借金返済のため、ノエル、君にアドバイスをしてもらいたいと思ってな」
「んん゛っ……とりあえず、今まで何をしていたのか教えてもらっても?」
「そうだな……まずこれを見てもらうのが早いかな」
私は書棚から紙束を取り出し、テーブルへと乗せる。今まで狩ってきた魔物の種類と、いくらで売れたかのメモだ。
私としては、他に高値で売れそうな魔物を知っていたら教えてほしい、くらいの気持ちだったのだが……最初はパラパラと流し見していただけだったノエルは、だんだんと食い入るように読み始めて。
震える声で、尋ねてくる。
「……本当に、今まで、これだけの物を、この値段で、売ってきたのですか……?」
「? そうだ。そこそこ数があって迷惑かと思ったが、アクトー商会は快く買ってくれてな。それでも全然足りてないのが現状で――」
ノエルは、紙束を見詰めたまま。
「そっか……アクトー商会……あそこかぁ……フフフフフ」
「……お、おい? ノエル?」
ぶつぶつと呟いていたかと思えば、バッと急に顔を上げて。
「僕の能力を必要としてくれたミリアム様のために、精一杯頑張りますね」
爽やかだけれども……どこか冷気の漂う笑顔で、私に宣言するのだった。
後日、私はノエルを連れてアクトー商会へと向かった。『ぜひ商会と話がしたい』と熱望されたからだ。私も溜まった魔物素材を売りに行くところだったので丁度良かった。
商会の入り口で、いつも取り次ぎを頼んでいる店員に声を掛けたのだが……彼は私の横にいるノエルが気になるのかちらちら――と本人は思っているだろうが実際はじろじろ――と視線を送っている。道中でも結構な数の男に――中には女もいたが――熱視線を送られていたし、商会内を案内されている間もあちこちから飛んでくる始末。ふむ、これが繰り返されるのであればエヴァとてストレスも溜まることだろう。ノエルも居心地が悪そうにしているのがなんとも救えないことだ。
そうして私たちは中庭が一望できる応接テラスへと通される。いつも人が忙しなく働いている商会ではあったが……今日は一段と多いな。さすがに私でも鬱陶しくなってきたぞ?
ノエルもさぞ肩身が狭かろう……と思えば、彼は意外にも冷静に周囲を見回していた。
「何か珍しいものでもあるのか?」
「――え? ……いえ、装飾がたくさんあるな、と思いまして」
「まぁ、そうだな」
私は宝飾にとんと興味がないが、それでも気付くくらいにあちこち飾り立てられている。商人も貴族のように見栄えを大事にすると聞くが……キンキラしすぎと思わないでもない。よくわからない世界だ。
ノエルは他にも椅子やら出されたお茶やらに興味を示しており、何やら頷いたりしている間に、商会長であるザルドがいつものガタイのいい副会長を引き連れてやってきた。こいつらもノエルに目を向けて一瞬ヤニ下がった顔をしてからシレっと私へと挨拶をしてくる。
「ようこそいらっしゃいました、バーンシュタイン様。今日もいつもの買い取りでよろしかったですか?」
「あぁ。これが今回の分だ。査定をしてくれ」
諸々の魔物素材が入った魔法鞄と目録(ノエル確認済み)をザルドに渡す。この辺りはもう慣れたもので、ザルドと副会長は隣の小部屋ですぐに算出してくれる。
お茶とお菓子をゆっくり――さすがにここでがっつくほど貴族としての体面は捨ててないつもりだ――楽しむことしばし。
「お待たせいたしました。今回はこのようになりました」
ニコニコと愛想のよい笑みを浮かべるザルドから査定結果を受け取り、目を走らせる。ふむ、金額は大体いつも通りだな。
私が「これで頼む」と頷こうとする寸前、隣からにゅっと手が伸びてきて査定結果を奪われる。奪ったのはもちろんノエルで。
彼は、いつもの気弱さが鳴りを潜めた冷徹な瞳で、射抜くように査定結果を見ていた。……瞳が仄かに光を帯びているように見えるのは……気のせい、ではないな。ふむ……?
そして、可愛らしいながらも鋭い声で。
「駄目です。てんでお話しになりません」
「む?」
「「なっ……」」
ザルドと副会長がだらしない顔を一転させてノエルを睨みつける。
その剣呑さにノエルは一瞬体を震えさせてから、私をちらりと見て。シャンと背筋を伸ばし直して、真っ向から相対する。
「まずこの項目。ブレイズガルムの毛皮が金貨一枚はいくら何でも安すぎます。相場は金貨十枚からです」
「えっ?」
十枚? えっ? 以前に一枚が相場と説明されたが……えっ??
「そ、それはですねぇ、毛皮に傷が付いていてですねぇ」
「へぇ。僕が確認した時はそのような大きな傷は付いてなかったんですけどねぇ? どの傷が減額の原因か後で教えてくださいね」
ニッコリと、男でありながら妖艶な笑みを見せるノエル。瞳の光と相まって非常に妖しい。
ザルドと副会長はデレっとした!
「次。シャドウレイヴンの肉。これも銀貨五十枚は安すぎます。相場は金貨三枚からです」
「せ、鮮度が落ちてまして――」
「そんなわけないでしょう。更に付け加えるならこの保管料とやら。確かに専門の設備が必要な品物ですが、それを考慮に入れた買取価格のはずです。二重取りですね。後は――」
次から次へとノエルが挙げていく内容に、私まで内心で冷や汗をかいていた。
よくバーンシュタインは『武』だけの家だと揶揄されてきたが、これでは父上のことを何も言えないではないか……!
「極めつけはヴォルガニックドラゴンの鱗。何故勝手にトパーズドラゴンの鱗に書き換えてるんですか?」
うえっ!? そんなことまでされていたのか……!? 私の目は節穴にも程がある!!
「ちゃ、ちゃんとした測定結果だ。難癖をつけるのは止めてもらおうか!」
「嘘ですね。一部高位の魔物素材は過去に詐欺が横行したことにより、きちんと国から認可を受けた商店が、国から貸与された機器で測定することと商法四十三条で定められています。この商会の看板に認定印が押されていなかったため、『取り扱い不可』として返却するのが普通です」
「い、いやいや、あれはお嬢さん方の詐欺と言ってもいいだろう! 一枚二枚なら拾うこともありえるかもしれんが、三十枚以上だぞ! トパーズドラゴンのものに決まっている! 測定結果だってそうだった!」
狼狽えているという、明らかに自分が怪しいことにも気付かずにザルドたちは言い募る。
それに対しノエルは……笑顔を崩さずに。
「ではその測定結果を教えてください。僕、魔物学で記載されている全魔物の測定値を覚えていますので」
「「――っ」」
たかが少年の笑顔。しかしそれには尋常ならぬ圧が籠められており、ザルドと副会長は硬直してしまった。
さらにノエルはそのまま私の方も見て。
「ミリアム様もミリアム様です。細かい法は知らなくても仕方ないかもしれませんが、相場くらいはお勉強しましょうね」
「ハ、ハイ」
……命の危険はないはずなのに、そこはかとなく恐怖を感じてしまった。私も修行が足りないな……?
僅かとはいえノエルの目が逸らされたせいか、ザルドと副会長の縛りが解け、ガタリと大きな音を立てて立ち上がった。副会長がその立派な上腕二頭筋を見せつけるように腕組みをする。
「……おうおう、お嬢さんよぉ……随分と勝手なことを言ってくれるじゃねぇか」
「僕、何か間違ったこと言いましたか?」
「……あぁ、間違いだらけだ。お嬢さんは商売ってモンが全くわかってねぇ」
「ここまでひどい違法行為を商売と言うのですか? 随分とお腹が黒い商売をしてますね。通報すれば一発アウトですけど?」
「ハッ」
副会長はドゴンッとテーブルに拳を打ち付け、割った。……何て勿体ないことをするんだ、こいつは。
私が眉をしかめていると、壊したことを後悔するでもなく、やたら自信満々に続けてくる。
「商売なんて、力さえありゃどうにでもなるんだよぉ」
そのままノエルに太い腕を伸ばし――
「ほう、力ときたか」
私はその腕を引っ掴み、捻る。
副会長は肘を支点に、ボキリと大きな音を響かせながらデカい体を一回転させた。
「ぎゃあああああっ!?」
「口ほどにもない。ぞの筋肉は見掛け倒しか?」
大の男が喚く様など見ていられん。
さてお前はどうだ?とザルドに視線を向けると。ザルドは顔色を青ざめさせながらも、観念はしていないようで。
「……い、いくら何でも、この数相手ならどうにもならんだろう! お前たち! 全部出してしまえ!」
金切り声のような合図と共に――私たちを囲むように、大量の魔物が中庭に現れた。ふむ、召喚か?
あまりの数にノエルが息を呑み震え出すが、ポンと肩を叩いてやる。お? 震えが止まった。意外と胆力があるのだな。
「どうだ、我らの力がよくわかっただろう! ただ貴様は金づるだからな。泣いて謝るなら今まで通りの待遇で扱ってやるぞ? んん?」
何故そのようなことをせねばならぬのか。
……あぁ、こいつ、まさかとは思うが……知らなかったのか?
「ザルドよ、一つ教えてやろう」
「……何がだ」
「これまで貴様の商会に卸してきた魔物だが……全部、私一人で狩ってきたものだ」
「は――?」
私は剣を召喚し、腰を落とし。
「『武』のバーンシュタインに喧嘩を売ったこと、後悔するがいい!!」
ザンッ!!!
横に一閃。
ただそれだけで、魔物の大半が真っ二つになった。
「――あ、あ」
「ふははははははは! 私を止めたければ世界三大魔物でも連れてくるんだな!!」
たかが商会に捕獲されるようであれば大した魔物であるはずもなく、残った魔物もさして時間もかからず全て倒していくのだった。
「おぉ……かなりの額だな」
「……それだけぼったくられてたってことですよ……ミリアム様も反省しましょうね……」
「うぐ、肝に銘じよう」
アクトー商会の面々を憲兵に引き渡した後、他の商会で素材を買い取ってもらったらこれまでの十倍になった。……これは言われずとも反省せねばならぬ。
ノエルに感謝もするとして……しまったな、協力に対する報酬を決めてなかったな。さて、何をあげれば満足してくれるだろうか。……と、そう言えば。
私は思い出し、ノエルの顎に指をかけ瞳を覗き込む。
「ふえっ!?」
「ふむ、やはりそうか」
「な、ななななななに、が?」
「ノエル。君は魔眼持ちだな」
「……えっ」
今は光っていないが、瞳に魔力が宿っていた残滓がある。
本人が気付いてないとなると無自覚なのか。少々厄介だな。
「おそらく、君の周囲がおかしかったのはこれが原因だろう」
「……ミリアム様は?」
「ハッ、バーンシュタイン家の魔力抵抗を貫く強さであれば、君はまさしく傾国の男だっただろうよ」
エヴァが『狂う』と言っていたのもあながち間違いではない。人の精神に作用してしまうものなのだから。彼女の家も名門なのだが、それでもいくらか作用してしまうほどノエルの力は強いのだろう。
……魔眼の効果の中でも魅了系は主に異性に効くはずで……男ばっかりに効いていた理由まではわらかんが。……いや本当に何でだろうな?
商会での毅然とした態度はどこにいったのやら、まさかの事実に慌てるノエルに、私はある物をピンと弾いて渡してやる。
「……っと、っと。……こ、これは、なん、ですか?」
「魔力を押さえる魔道具だ。私も昔は使っていたが、もう不要になったのでやる」
「え、で、でも、これ、ゆびわ……っ」
「ん? サイズが合わないか? まぁその時は紐で首からぶら下げておくんだな」
「そ、そういう問題では、なくてですね……」
だったら何が問題だというのだ。まぁいい。
「ノエル」
「……は、はいっ」
「残念ながら、私の家の借金返済には到底足りない。代わりに君の魔力制御に協力するので……また、力を貸してくれないか?」
「――」
私の懇願に対し、ノエルは二度、三度と目を瞬いてから。
ゆっくりと……満面の笑みを浮かべ。
「はい! 僕でよければ喜んで!」
ここから、私たちの協力関係が始まるのだった。




