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第1話 黒猫かと思った
雨が降る夕方、公園のベンチの下に、黒い影が見えた。
濡れた地面に、じっとこちらを見つめる小さな猫。
「……こんなところで雨宿り?」
手を差し出すと、猫は少しビクッとした。
でも、逃げるわけでもなく、じっとこちらを見ている。
「来る?」
小さく首をかしげると、ゆっくりとついてきた。
家に着き、ドアを開ける。
猫は一度部屋を一周してチェックし、再び玄関に戻る。
「帰る?」と聞くと、外の雨を眺めたあと、ふらりと部屋に戻った。
明かりの下で猫をよく見ると、黒だと思った毛は、白く長くて滑らかな毛並み。
そして長くふわっとした尻尾をゆらりと揺らしていた。青い目が光る。
膝に乗せようと手を差し出すと、小さく「…にゃ」とだけ鳴き、少しビクッと体を縮めた。
でも、主人公が撫でると、少しだけ目を細めてくれる。
名前をつけようとすると、無言でそっぽを向く。
どうやら、この猫は名前をつけさせてくれないらしい。




