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お嬢様、デザートは敵を殲滅してからです  作者: にゃん


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18/18

第18話:お嬢様、最終回は敵を殲滅してからです

「……セバス。見て、あの月を。……あたしには、夜空に浮かぶ巨大な黄金のパンケーキに見えるわ。……バターの代わりに、雲がとろけているわね……」


「お嬢様、それは末期の飢餓状態が見せる幻視です。……さあ、顔を上げてください。今夜は学園創立記念パーティー。そして、貴女が北の果てから命懸けで持ち帰った『魔獣の軟骨』から抽出された、究極のコラーゲン・ゼリーが振る舞われる夜ですよ」


学園の講堂。シャンデリアが輝き、各国の王侯貴族、そしてこれまでリナに撃退されてきた留学生たちが一堂に会していた。 会場の中央には、学園最高の料理人が三日三晩煮込み続けて完成させた、透き通るような『真珠色の魔獣ゼリー・ベリーソース添え』が、一点の曇りもなく輝いている。


「(……ッ!! あのぷるぷる感! あの弾力! あれこそがあたしのこれまでの苦労、破壊した校舎、そして失った尊厳の結晶……。今夜こそ、あたしは概念ではなく、物質を、カロリーを摂取するのよ!!)」


「お嬢様、よだれでドレスの胸元が湖になっています。……さあ、学園長からの一口目が、貴女に……」


だが、運命はどこまでもリナに冷酷だった。 講堂の床が突如として爆発し、地底から「古の魔王の残滓」が、料理大会の恨みを晴らさんとする帝国軍の残党と共に出現したのだ!


「聖女よ! 貴様が守ろうとしたこの学園を、そしてその忌々しい『ゼリー』を、負の魔力で泥に変えてやろう!」


魔王の触手が、まさにリナが口を開けようとした瞬間のゼリーに伸びる。


「……あたしの。あたしの……『三日間の断食の果てにたどり着いた終着点ゼリー』を。よくも……よくも、よくもあたしの生存本能を逆撫でしてくれたわねぇぇぇ!!」


どぉぉぉぉぉぉぉん!!!


地鳴りとともに、過去最大の、宇宙の果てまで届かんばかりの黄金の光柱が立つ。 光の中から現れたバインバイン聖女(私)は、その背後に「巨大なスプーン」を模した光の翼を背負っていた。


「デザートは平和の象徴よ! 泥に変えようとする人にはその一口の重みが分からんのよ!!」


私は魔王の触手を小指一本で弾き飛ばし、そのまま帝国軍の残党ごと、講堂の地下深くまで「神聖なるプレス」で叩き込んだ。 「あたしの至福の瞬間デザートタイムを汚した罪、原子レベルで浄化してやるわぁぁぁ!! デザート・カタストロフッ!!」


神聖なる魔力が炸裂し、魔王の残滓は塵となって消え去った。 ……しかし、あまりにも清らかすぎた。あまりにも完璧な「浄化」だった。


「……あ。……あぁ…………」


光が収まり、シュルシュルと元の姿に戻る私。 私の目の前には、一口も食べていないゼリーの皿。 ……そこには、もはやゼリーはなかった。 あまりに強い聖女の魔力が、「ゼリーという物質的な快楽」を「魂の救済」へと変換してしまったのだ。


皿の上には、ただ、淡く光る『聖なる香気』だけが漂っていた。


「………………」


「おおぉぉ……! 聖女様! 魔王を倒すだけでなく、ゼリーを『光の救い』へと昇華された! 我々はこの香りを嗅ぐだけで、一万年分の罪が許された気分だ!」


出席者たちが涙を流して合唱ハレルヤを始める中、私はドレスの裾を握りしめて絶叫した。


「あ~~~ん!! ひもじいよぉぉぉ!! 匂いでお腹が膨れるかぁぁぁ!! 飲み込ませて! あたしの喉を通らせてよぉぉぉぉ!!」


私は空っぽの皿を舐め回そうとして、セバスに優しく、しかし鋼のような力で抱きとめられた。


「お嬢様。……お疲れ様でした。世界は救われ、お嬢様の借金も今の奇跡で帳消しになりました。……さあ、帰りましょう。……実は、厨房の片隅に、私が個人的に隠しておいた『おこげの欠片』が一つだけあります。……二人で半分こ、といきましょうか」


「セバス……! あんた、やっぱり死神みたいな顔して天使ね! さっさとそのおこげを出しなさい! あたしが右側、あんたが左側、ミリ単位で等分するわよ!!」


結局、最後までリナ・アイゼンの胃袋が満たされることはなかった。 けれど、セバスの差し出す小さな「おこげ」を巡って、二人はいつものように毒を吐き合いながら、月明かりの下を歩いていく。


没落令嬢と鉄傘の執事。 彼女たちの「ひもじい」戦いは、まだ始まったばかりなのだから。


――第一章・完――

最後までお読みいただき本当にありがとうございました! 先週勢いで書き始めたものの意外と呼んでくださる方も多く感謝しかございません。ちょっとキャパオーバーなので第一章完として区切ります。

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