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お嬢様、デザートは敵を殲滅してからです  作者: にゃん


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第15話:お嬢様、学園祭は敵を殲滅してからです

「……いい、セバス。今日のあたしは『没落令嬢』じゃない。学園祭が生んだ最強の『経営者エグゼクティブ・プロデューサー』よ。この喫茶アイゼンの売上で、あたしたちは今夜、最高級のローストビーフを胃袋に収めるのよ!」


「お嬢様、その割にはエプロンが前後逆ですし、メニューの価格設定が『時価』なのは詐欺の領域です。……まあ、私が裏で完璧に調理をこなしますので、貴女は看板娘として、その『腹ペコゆえの必死な笑顔』を振りまいていればよろしい」


学園祭当日。アイゼン家の借金返済と食費確保のため、私たちは模擬店「喫茶アイゼン」を開店した。 出し物は、セバスがアイゼン家の蔵に眠っていた「大正ハイカラ・レシピ」を再現した、特製の**『極厚カステラ・サンド』**だ。


「さあさあ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい! 伝説の聖女も認めた(かもしれない)絶品カステラよ! 一口食べれば、貴方の人生もあたしの胃袋もバラ色になるわよ!」


「お嬢様、後半の本音が漏れています。……おや、最初のお客様です。……いえ、これは『敵襲』ですね」


店に現れたのは、これまでの話でリナに煮湯を飲まされてきた、帝国と連合の留学生たちの有志(リベンジ組)だった。


「リナ・アイゼン! 貴様だけが美味しい思いをするなど許さん! 聖女を呼び出せない貴様に、この『最高級のメイプルシロップ』を渡すものか!」


彼らは嫌がらせのために、近隣のメイプルシロップをすべて買い占め、あろうことか喫茶アイゼンの目の前で、それを「魔導冷却魔法」で凍らせて破壊しようとしたのだ!


「ちょっと!! あたしのカステラ・サンドに欠かせない、黄金の液体を凍らせるんじゃないわよ!!」


「フン、欲しければ力で奪ってみろ! 聖女が現れなければ、このシロップはただの氷の塊として砕け散るのみだ!」


「…………あたしの。あたしの……アイデンティティ(甘味)が。よくも……よくも、よくもあたしの商売道具をぉぉぉ!!」


どぉぉぉぉぉん!!


商売への執念と、トッピングを奪われた怒りが、過去最大の聖なる魔力を呼び起こす。 光の中から現れたバインバイン聖女(私)は、もはやその手に「泡立て器」の形の光の剣を握っていた。


「カステラはメイプルがあって完成するのよ! 凍らせて喜んでる人にはその染み込む瞬間の美学が分からんのよ!!」


私は冷却魔法を唱えていた連中を、一陣の熱風(という名の魔力)で校庭の端まで吹き飛ばした。 「あたしの利益を邪魔する奴は、税務署より厳しく取り立ててやるわぁぁぁ!! デザート・キャピタリズムッ!!」


神聖なる魔力が弾け、凍りかけていたシロップが、あまりにも完璧な「黄金の雫」へと浄化・解凍された。 ……だが。


「……あ。……あぁ…………」


私の浄化の光が、あまりにも「商売」という世俗的な欲求を嫌ったのか。 解凍されたシロップは、不純物を一切含まない「無味無臭の聖水」へと昇華し、カステラの上で虚しく水たまりを作っていた。


「………………」


シュルシュルと変身が解け、元の姿に戻る私。 看板娘リナの目の前には、ベチャベチャに濡れて、味がしなくなったカステラの残骸。


「お、おお……! 聖女様! 甘味という『欲』さえも浄化し、我々に『無の味』を説いてくださったのか……!」


留学生たちが涙を流して懺悔する中、私は店先で崩れ落ちた。


「あ~~~ん!! ひもじいよぉぉぉ!! 完売して、お肉を食べるはずだったのに! なんで水浸しのパンになってるのよぉぉぉぉ!!」


私はベチャベチャのカステラを啜ろうとして、セバスに優しく襟首を掴まれた。


「お嬢様。……安心してください。お客様に売る分はダメになりましたが、私が厨房の奥に隠しておいた『切れ端』だけは、私の鉄傘で物理的に守り抜きました。……冷めないうちに、裏で二人で食べましょうか」


「セバス……! あんた、やっぱり最高の執事よ! さっさとその切れ端を出しなさい! あたしが飲み込むのが先か、あんたが差し出すのが先か、勝負よ!!」


結局、店は赤字。けれど、夕暮れの喫茶アイゼンの裏側で、二人は「一口の切れ端」を巡って、いつものように騒がしい夕食を共にするのであった。

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