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お嬢様、デザートは敵を殲滅してからです  作者: にゃん


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第14話:お嬢様、料理大会は敵を殲滅してからです

「……セバス。あたし、今、走馬灯が見えているわ。……三途の川の向こう側で、おじいさまが『おいで……ここのステーキは食べ放題じゃぞ……』って手招きしているの」


「お嬢様、それは単なる重度の空腹による幻覚です。正気に戻ってください。今日はいよいよ、周辺諸国が聖女様……つまりお嬢様の胃袋を巡って争う『第一回・聖女奉納料理大会』の日ですよ」


学園の大広間には、各国から集められた超一流のシェフたちが、戦場のような熱気で調理に励んでいた。 優勝賞品は「聖女への優先謁見権」。そして審査員席(という名の生贄席)には、今日まで三日間の断食を(セバスによって強制的に)強いられた、ガリガリのリナ・アイゼンが鎮座していた。


「……いい、セバス。あたしは今、空腹で感覚が研ぎ澄まされているわ。会場の端で揚げられている『大海老のエクリプス・フライ』の油の温度が、摂氏182度であることさえ音で聞き分けられる……!」


「お嬢様の無駄な進化が恐ろしいですね。……さあ、第一陣が来ましたよ」


最初に現れたのは、あの皇女エレナ率いる帝国チームだ。 「ホッホッホ! 貧相なリナよ、ひれ伏すがいい! これこそ我が帝国の誇る、金箔をまぶした『鳳凰のロースト・デラックス』よ!」


黄金に輝く巨大な鳥の丸焼き。その芳香だけで、リナの胃袋は「第九交響曲」を奏で始めた。


「(……ッ!! 食べたい! 今すぐその羽の一枚から足の先まで、骨ごと粉砕して吸収したい!!)」


「さあ、審査員。……ではなく、聖女様の依代よ。一口食べて、その至高の味を聖女様へ伝えなさい!」


リナが震える手でフォークを握り、鳳凰の肉を切り裂こうとした――その時。


「待てい! その料理には、帝国の不純な魔導毒が仕込まれている!」 窓を蹴破って現れたのは、連邦国の「健康志向」な留学生たち。彼らは聖女を毒殺から守るという名目で、あろうことか「浄化の魔導爆弾」を会場に投げ込んだ!


「やめろぉぉぉ!! 毒でも何でもいいから、あたしに肉を食べさせなさいよぉぉぉ!!」


「敵の料理を無力化せよ! 聖女様には我が国の『特製・青汁プロテインゼリー』こそが相応しい!」


ドォォォォォン!!


料理を巡る小競り合いが、一瞬で大爆発へと変わる。 リナの目の前で、ローストされた鳳凰が爆風に飛ばされ、さらに青汁の濁流が会場を飲み込もうとする。


「…………あたしの。あたしの鳳凰……デラックス……。よくも……よくも、よくもあたしの唯一の希望をぉぉぉ!!」


どぉぉぉぉぉん!!


殺意・飢餓・そして「プロテインへの拒絶反応」が混ざり合い、過去最大の魔力が爆発した。 光の中から現れたバインバイン聖女(私)は、もはやその瞳に「食欲の炎」を宿していた。


「鳳凰は焼かれるためにあるのよ! プロテインに変えちゃう人にはその脂の旨みが分からんのよ!!」


私は青汁の濁流を右手の平で蒸発させ、爆弾を投げた連中を、左手のデコピン一発で校舎の外まで射出した。 「あたしのランチタイムを汚した罪、銀河の果てまで浄化してやるわぁぁぁ!! デザート・エンドッ!!」


神聖なる魔力が会場全体を包み込む。 それは敵を滅ぼす光――と同時に、会場に残っていた全ての「料理」を、不浄なもの(煩悩の塊)として、あまりにも清らかに、あまりにも完璧に、光の粒子へと変換してしまった。


「……あ。……あぁ…………」


光が収まり、シュルシュルと元の姿に戻る私。 大広間には、敵も味方もいない。そして、料理も一皿もない。 ただ、掃除したての病室のように、無菌で清潔な空間が広がっているだけ。


「………………」


「お、おお……! 聖女様! 我々の醜い食欲の争いを、これほどまで美しく『無』に帰してくださるとは! やはり物質的な食事など、聖女様には不要だったのだ!」


生き残ったシェフたちが、涙を流して地面に額を擦り付ける。


「……ない。……鳳凰。……デラックス。……プロテインさえ、残ってないよぉぉぉぉ!!」


私は、一粒の脂身さえ残っていないピカピカの床を舐めようとして、セバスに首根っこを掴まれた。


「お嬢様、床を掃除するのは私の仕事です。……安心してください。私が調理場の隅で隠し持っていた『おにぎりの具の鮭の皮(焦げたやつ)』だけは、私の傘でガードして守り抜きましたよ」


「鮭の皮! 鮭の皮だけ!? あたしは鳳凰を……デラックスを、丸ごと一羽いきたかったのよぉぉぉぉ!!」


リナの飢えた魂の叫びが、今日も清潔な学園に虚しく響くのであった。

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