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お嬢様、デザートは敵を殲滅してからです  作者: にゃん


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第1話:お嬢様、おやつは壁を修理してからです

前作『ポンコツ令嬢は今日も腹ペコ』の系譜を継ぐ、新たな食欲の物語をノリと勢いだけでえ書いてみました。 今回は没落! 学園! 巨乳(変身時限定)! 中身がちょっとおっさんなリナと、毒舌執事セバスのコンビを楽しんでいただければ幸いです。

「あ~ん、ひもじいよぉ……。お腹と背中が親友レベルでくっついて、もはや一枚の板になりそうですわ……」


私の名はリナ。由緒正しきアイゼン男爵家の一人娘にして、この国最高の「魔導学園」に通う花も恥じらう十七歳だ。


え? 何?その目は。「『花も恥じらう』とかってお前、中身はおっさんじゃねぇか?」 ですって?失礼な! 私はこれでも淑女しゅくじょの端くれですわよ。……まあ、我が家は先祖代々の「食欲」が原因で、今や実質滅亡寸前の貧乏家系。今朝はパンの耳さえなかったけれど!


「リナ様。廊下で這いずり回るのをやめてください。アイゼン家の家紋が、お嬢様の腹ばい走行によってすり減っております」


冷ややかな声とともに、私の襟首をひょいと持ち上げたのは、我が家に残った唯一の執事、セバスだ。


「うるさいわねセバス! 誇りじゃお腹は膨らまないのよ! いいから放しなさい。あそこにある購買部の『限定・極楽ババロア』の最後の一つを仕留めないと、私は今ここで餓死して、あんたを末代まで呪ってやるんだから!」


「お嬢様、胸を張ってください。あ、失礼。張るほどのものがございませんでしたね」


「余計なお世話よ! 胸なんて飾りよ、エロい人にはそれが分からないのよ! 突起物が少ない分、あたしの空気抵抗はゼロ。通常の三倍の速度でババロアにたどり着けるのよ!」


「はいはい。では、その三倍の速度で、あちらの『障害物』も避けていただけますか?」


セバスの指差す先。 そこには、金髪のいかにも性格の悪そうな男――カイル・ド・ヴァルド伯爵令息が立っていた。 そして彼の足元には、私が全財産(100円相当の銅貨三枚)をはたいて予約していたババロアが落ちていた。


「おやおや、アイゼン家の落ちこぼれではありませんか。こんな安っぽいおやつを……」


カイルが嘲笑を浮かべた、その時だった。 彼の背後にいた従者たちが、突如として不気味な魔導兵器を取り出したのだ。


「ターゲット確認。魔導核、起動!」


「えっ? ちょっと、お前たち何を……ぎゃあああ!?」


カイルが驚愕する間もなく、従者に化けていた「敵国の隠密工作員」たちが、学園を占拠すべく大規模な爆破魔法を唱え始めた。その余波で、私のババロアが、ぐちゃりと踏みにじられる。


「あ……あたしの、浄土が……」


私の頭の中で、何かが「プツン」と音を立てて切れた。 工作員だか何だか知らないが、あたしのおやつを、軍事利用のついでに破壊したわね……?


「……セバス。今の、見た?」


「はい。完璧に潰れましたね。修復不能です」


「そう……なら、もういいわ。復讐の時間よ」


私の体から、金色の魔力が溢れ出す。 セバスは慣れた手つきでスッと数メートル後ろに下がり、恭しく頭を下げた。


「かしこまりました。……お嬢様、派手にやっても構いませんが、壁の修復費は食費から差し引かせていただきますので」


「知るかあああああ!!!」


視界が光に包まれる。 筋肉が、細胞が、そして何より胸部が、爆発的な魔力の奔流によって再構築されていく。


光が晴れた時。 そこに立っていたのは、制服を引きちぎらんばかりの圧倒的な豊満さを備えた、神々しいまでの美少女だった。


「な、何だこの姿は!? まさか伝説の……大国ルナの聖女様か!?」


腰を抜かしたカイルを無視し、私は目の前の隠密工作員たちを見据えた。


「よくも……よくもあたしの、ババロアを……ッ!!」


「敵襲! 敵を排除せよ!」


工作員たちが一斉に魔導砲を放つが、私はそれを胸(の魔力)で弾き飛ばし、一歩踏み出した。


「おやつの恨みーーー!! 問答無用!!」


放たれた神聖衝撃波が廊下を突き抜け、工作員たちを一瞬で塵に変えた。……そして、その背後で「聖女様、お助けをー!」と叫んでいたカイルたちも、ついでに窓の外まで一気に吹き飛ばした。 学園の防壁が三層ほど貫通したが、おやつの恨みに比べれば些細なことだ。


やがて、光が収まり、私の体から魔力が抜けていく。 細胞を活性化しすぎた代償として、豊かだった胸部も、シュルシュルと音を立てるように元に戻っていく。


光が完全に消えた後、廊下には、砂埃にまみれて膝をつく、いつもの貧相な(胸の)私がいた。 目の前には、泥と砂が混じり合い、もはや原型を留めていないババロアの残骸。


「 結局食べられなかったじゃないのよぉぉぉ!! ババロアあああああ。あ~~~ん! ひもじいよぉぉぉ!!」


私は床を叩いて号泣した。 ほどなくして、吹き飛ばされた先から這い戻ってきたカイルが、その光景を目にする。


(な、なんということだ……。あの神々しいお姿は、我々を工作員の手から救い、そして消えてしまった。あそこにいるアイゼン家の女は、あまりの神々しさに気圧されて泣いているだけか……)


カイルの目には、リナが聖女に救われた哀れな目撃者にしか見えていなかった。


「……お嬢様。お疲れ様でした。今の破壊活動により、来月までおやつ抜きが確定しましたのでご報告いたします。さあ、学園長に謝りに行きましょうか」


「嫌あああああ! お腹空いたぁぁぁぁ!!」


夕暮れの学園に、伝説の聖女降臨の噂と、リナの見苦しい絶叫が同時に響き渡った。

面白い、続きが気になる!と思っていただけたら、 【ポイント評価】や【ブックマーク】でリナにおやつ(応援)をいただけると励みになります!

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