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死にたがり魔族の逃避行  作者: 米奏よぞら
第一章

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04.完璧な専属護衛

「ルカ様を、ご存知なんですか?」


  イケメンが心底驚いたような顔をする。その一方で、テオドールも彼の言葉に目を見開いた。


  ふと思い返されたのは、ルーカスと出会ったばかりの頃のことだ。


『ルーカス様は──』


『その呼び方、やめて』


『じゃあ、ルカ様?』


『……それはもっとダメ』


  まるで突き放すような拒絶に、当時は多少なりとも傷ついた。でも、彼はテオドールではなく過去を連想させる呼び方を嫌がっていたのだとすれば、納得することができた。


「私はルカ様の専属護衛をしていた、アイザックという者です。どうか、彼の居場所を教えていただけませんか?」


  縋るような瞳で続けられた言葉に思わず驚きの声を上げる。


「では貴方が、めちゃくちゃかっこいいのに女運悪すぎて、彼女ができても絶対に浮気されて泣き寝入りする、あの専属護衛さんなんですか?」


「…………早くルカ様の居場所を教えてください。一刻も早くあの方をしばく必要がありますので」


  怖い笑顔を浮かべるアイザックから無意識に視線を外す。

  テオドールとしても、是非ともあの自己中にがつんとやってほしい思いはある。しかし、幼稚なキレ方をして飛び出してきてしまったため、テオドール自身も彼の正確な位置を把握できていないのだ。


  黙り込んでしまったせいか、アイザックが不安そうな青い瞳で覗き込んでくる。


「何か、事情があるんですか?」


「……すみません。ついさっき、ルーカスと喧嘩してしまったので、今どこにいるかは分かりません。もしかしたら、もう街を出たかも」


  内心落ち込みながら、アイザックに謝罪をする。

  その時何処かから名前を呼ばれた気がして、さりげなく辺りを見渡した。


「───テオドール」


  聞き馴染みのある中低音に思わず目を見開く。

  真っ黒なフードを目深に被った男はこちらに近づいてくると、徐ろにテオドールの隣に立った。


「ルカ、様……? 良かった、……本当に、ご無事で」


「アイク、心配させてごめんね」


  感極まって涙を浮かべるアイザックに対して、ルーカスの声は心なしか冷たさを纏っている。心底会いたくなかったという気持ちが透けて見える態度に、かつての専属護衛の表情が凍りついた。


「…………これまでのことは、カディオ邸へ帰ってからフェリクス様も交えて」


「フェリクスやアイクにはとても感謝してるけど、今後は僕に関わらないでくれる?」


「え……?」


  完全な拒絶を目の前にして、アイザックの顔に絶望の色が浮かんだ。

  その様子に思わず黒いローブの裾を軽く引っ張ると、突然その手を掴まれる。困惑するテオドールに構わず、ルーカスは続けて驚くべき言葉を口にした。


「今の僕にはテオドールがいる。だから、もうアイクは必要ない」


  俯いたまま黙り込んでしまうアイザックを見て、フードの奥をきつく睨んだ。


(あんなに楽しそうにアイザックの話をしていたのに、なんでこんな酷いことをするんだ……?)


  その時、ふと掴まれている手が微かに震えていることに気がつく。彼の名前を口にするより早く、ルーカスがその場から歩き始めた。


  引き摺られるようになりながら、慌ててアイザックの方を振り向く。彼はこちらを見ているだけで、追いかけてくる気はないようだった。


「───ルカ様のこと、宜しくお願いいたします!」


  寂しそうな顔をしながらも完璧な礼をとるアイザック。彼は間違いなく、この面倒くさい男の数少ない理解者なのだろう。

  テオドールが彼の立場であれば、ルーカスを恨んでいたはずだ。


「絶対に返品いたしますので、気長にお待ちください!」


  ありったけの力を込めて叫ぶと、遠目にアイザックが微笑むのが見えた。


  ここまでルーカスを思ってくれる存在がいるのだ。いくら本人が望むことでも、やはり彼を死なせるわけにはいかない。


「ルーカスのばか、あほ、まぬけ、おたんこなす……!」


  もやもやした気持ちをぶつけるように、思いつく限りの悪口を吐き出す。しかし、ルーカスが後ろを振り向くことはなかった。




 ♢♦︎♢♦︎♢♦︎♢




「…………あの、何かありましたか?」


  執務室に置かれた長いカウチの両端にそれぞれ座る二人を見て、マリーがおそるおそる尋ねた。

  先程とは打って変わり急によそよそしくなったルーカスを横目で睨んだあと、彼女を安心させるための愛想笑いを浮かべる。


「ちょっと喧嘩しただけですよ。でも、何があってもこの陰湿男がちゃんと魔力暴走を防ぎますから、ご安心ください」


「……え、ええ。お願いいたします」


  戸惑ったようなマリーから少し視線をずらすと、大きな机の上に高く積み上げられた書類の山が目に入った。


(もしかして、あれを全部片付けるのか……?)


  テオドールはこれまで魔法以外の勉強は全力で避けて生きてきた。それらの勉強よりはるかに頭が痛くなりそうな仕事量を目の前にして圧倒されてしまった。


「君はいつも何時に寝るの?」


「普段は深夜三時ですが、お二人がいらっしゃる間は一時頃に寝ようと思っています」


「え、一時ですか?」


  反射的に聞き返すと、マリーが申し訳なさそうな顔をする。彼女の反応で、かなり気を遣ってもらった上でその時間になったことが自然と察せられた。


(今まで二十三時まで起きていられたことないんだけど、頑張ればいける、かな……)


  不安になり何気なく隣を見ると、ルーカスも意味深な様子でこちらを伺っていた。


「魔法無効化するのは僕だし、テオドールは寝ててもいいよ」


「いや、絶対に寝ませんから!」


「それ寝るやつが言うセリフだけど?」


「うるさい! というか、俺はまだ許していませんからね!」


  顔が赤くなるのを感じながら、ルーカスから顔を背ける。だから、彼が安心したような笑みを浮かべたのには気づくことができなかった。



2025/12/1

今更ですが、これまで投稿した分を全て字数下げしました。

以降、重々気をつけますm(_ _)m

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