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死にたがり魔族の逃避行  作者: 米奏よぞら
序章

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00.プロローグ

 独りは、こわい───



 テオドールは、ほんの数日前に大好きな母親を亡くしたばかりだった。


 しかし、どれだけ泣いても母が命を吹き返すことはない。


 そんな当たり前の事実が、彼を絶望の縁に立たせていた。


 孤独な一日は静寂に包まれていて、怖かった。だから、道端に倒れていた魔族を助けたのは、ほんの少しだけ何かを期待していたかもしれない。


 飢えて気を失った彼を風魔法で浮かばせて、こっそりと家まで運びこんだ。


 生まれて初めて見る魔族はやはり恐怖心を煽られたが、ここ最近では足取りが一番軽いような気がした。


 暫くして目を覚ました彼はひどく驚いたような顔をしていた。


 でもテオドールを襲う気は更々ないようで、そっと温かいミルクとたまご粥を差し出すと、彼の警戒も少し緩んだように見えた。


 聞くところによると、彼は放浪の旅をしているらしい。



「ルーカスは、どうして一人旅をしているんですか?」


「…………ルーカス・カディオとして死ぬため、かな」



 ───魔王一族の始祖と同じ黒髪黒眼をもつ魔族は、穏やかに微笑んだ。


 生物学的な造りは我々人間と変わらないように見えるが、魔族のなかでも圧倒的な強さをもつ示すといわれる漆黒の色素だけが異彩を放っている。


(確か、魔界では"黒"が一番尊ばれる色なんだっけ)


 あちらの世界の直系王族でも黒髪赤眼が殆どで、始祖以外で黒髪黒眼をもつ魔族もいるのは衝撃的だった。



 なぜ、魔族でありながら勇者と同じラストネームなのか。

 なぜ、魔界ではなく人間界を旅しているのか。

 なぜ、誰にも助けを求めずに一人で死のうとしているのか。



 頑なに過去を語ろうとせず、名前しか教えてくれない魔族の青年。


 人類にとって、魔族は最恐の天敵だ。


 それでも、テオドールは彼の翳った瞳に既視感を覚え、見て見ぬふりすることはできなかった。

 "お節介精神"が働いた、というのが最も適切な表現かもしれない。


「俺も、連れて行ってください」


「え……?」


 勢いよく頭を下げると、ルーカスが驚いたような声を上げる。しかし、テオドールの心はすでに決まっていた。

 困惑する彼の両手をとり、至近距離で黒い瞳を覗き込んだ。


「炊事、洗濯、掃除などなんでもできます!」


「いや、そういう話じゃなくて」


「少ないお金をケチケチしながらやりくりするのも得意です!」


「それは確かに魅力的だけど、違くて」


「俺が作ったお粥、食べましたよね?」


 ずいっと顔を近づけて迫ると、ルーカスは途端に申し訳なさそうな顔をした。三合分のたまご粥を一瞬で食べられたときは発狂したが、今となってはむしろ好都合だ。


 綺麗な顔を期待に満ちた目で一心に見つめる。かなり嫌そうな表情をされたが、譲る気は一切なかった。

 やがて、耐えかねたルーカスが大きな溜息をつく。


「……君を仲間として、信用することはできないよ」


「え、それ最早フラグですよ?」


 反射的につっこむと、彼は呆れたように目を細めた。常に無表情の冷たい青年に見えていたが、案外感情が表に出るタイプらしい。

 

(いつか、心からの笑顔も見られるといいな……)



 ───こうして、死にたがりの魔族の青年と、そんな彼を救いたい人間の少年が歩む、奇妙な旅が始まった。



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