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クジラと夜を踊る

作者: 言紬 現

眠れない夜。

母がいつも言っていた。

眠れない夜は

クジラと踊っていた。

そしたらその内眠くなって

気づいたら自分のベッドで眠っているのだ。と

とてもじゃないが、信じられない。

だがある眠れない日。

私は出逢った。

大きな大きな、クジラに。


窓の外

クジラが夜の街を楽しむように。

まるで自由を謳歌するように。

泳いでいた。

私は思わず外に飛び出す。

アレが母の言っていたクジラなのか

確かめなくては。


追いかけても、追いかけても

一向にクジラに追いつけない。

まぁ確かに空を飛んでいるクジラに

人間の私が追いつける訳がないのだ。

でも

諦めきれない。

そう思った瞬間。

睡魔が襲ってきた。

私は耐えきれず、眠ってしまった。


目が覚めた。

昨日のクジラは、何だったのか。

思い出そうとすると

まるで

霧がかったように

モヤがかったように。

はっきり思い出せない。


いつしか私は

クジラがことを忘れて

毎日忙しく生きていた。

そしてまた、眠れない夜が来た。

眠れない。

眠れない。

でも、明日も忙しい。

早く寝ないと…

眠れないと思えば思うほど

どんどん目が冴えていく。

そして現れたのだ。

クジラが。


私はまた、外に飛び出す。

クジラに追いつけないことは理解しているのに

追いかけずには、いられなかった。

あの時

母の言ったことを信じなかった私が

母亡き今

信じたいと思ったのだ。


待って!

待ってよ!

クジラに大きな声で言う。

クジラは鳴いた。

大きな声で鳴いた。

そして、クジラは私を背に乗せて

共に踊った。

夜の街を楽しむように。

自由な夜を謳歌するように。


気づいたら

ベッドで寝ていた。

母の言った事は、本当だったんだ。

母亡き今。

もう言葉を届ける事はできないけれど

空に言う。

「ありがとう」と。

お読みいただきありがとうございます。

次回作もよろしくお願いします。

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