古の迷宮と第三の誓い
塔都市ヴェルディオの呪縛が解け、民は街へ戻り始めた。
霧は薄れ、陽の光が数年ぶりに石畳を照らす。
しかし、真の敵はまだ顔を見せていない。
「“偽王アシュヴェル”が使っていた魔力の源……あれは、この大陸に眠る“古き魔族”の力よ」
セリナの分身体は、かつて王家に伝わった記録を口にする。
「この大陸の地下には、“太古の契約”を結んだ迷宮がある。
その名も、《ディグナスの深層》――王剣と並ぶ伝説級の武具、“誓契の遺宝”が封じられている場所」
スフィアが続ける。
「古代の王たちは、そこに誓いを刻んでいた。国を築き、守る者として。
でも今では、魔族が遺跡を奪い、迷宮を“封鎖”しているって話よ」
「なら、俺たちが踏み入れるしかないな」
リアンの瞳は、すでに“その先”を見据えていた。
三日後。
一行は、アエストリウム西部の死の谷にある《ディグナスの深層》の入口に立っていた。
「……入った者で、帰ってきた者はいない。
だけど、君たちなら――」
地元の案内人がそう言い残し、遠くへ消えていく。
入口の門には、七つの紋章が彫られていた。
リアンの剣が近づくと――第三の紋章がわずかに輝いた。
「やはり、この遺跡はお前の剣と“呼応”している。
ここで第三の覚醒を得られるかもしれない」
エファトが剣を抜く。
「なら――行くぞ。慎重にな」
迷宮の内部は、まるで“記憶の回廊”だった。
かつての王たちの誓いが、壁に浮かび上がるように彫られている。
「“我が命は、民の盾なり”……。
これは、初代セリディア王の誓い……」
スフィアが立ち止まる。その眼差しは、何かを懐かしむようだった。
だが、突如――迷宮が揺れた。
「侵入者ノ魂ヲ試ス」
石像が動き、黒き影が姿を現す。
「……また、魔族の仕掛けか」
リアンが剣を構えると同時に、石像が何体も起動し、襲いかかってくる。
エファトは空を舞い、不老剣で時間の輪を断ち切る。
スフィアは双剣で華麗に反撃し、セリナの分身体は結界を展開して仲間を守る。
そしてリアンは――
「【誓技・雷迅双牙】!」
第二の覚醒技が閃き、敵を薙ぎ払う。
だが――最後の一体を破壊したその瞬間。
リアンの脳裏に、響いた声があった。
『――汝は、真に誓いを立てし者か?』
一歩、また一歩。
彼は迷宮の最奥、“誓契の間”へと導かれる。
その中央には、七つの台座。
そして――そこに浮かぶ一振りの剣。
金と銀で織られた、翼のような装飾。
まるで神剣のような風格。
「これは……!」
セイグランスが震える。
そして、柄に刻まれていた第三の紋章が――完全に浮かび上がった。
雷を纏った刀身が、青白く輝く。
≪第三覚醒・雷誓光陣≫
リアンの足元に雷の紋が展開し、その範囲内に入った者の動きを封じる結界を生み出す誓技。
「……これが、第三の力……!」
だが、その瞬間――
「見つけたぞ、勇者リアン」
頭上から、声が落ちた。
巨大な棘の翼。獣と竜が交わったような双頭の魔族――
《三層将・ヴァルツァ=ナグナ》
「“七つの剣”の覚醒を阻むよう、我らは遣わされた」
「……ようやく姿を見せたか。
本物の“古き魔族”――!」
剣を構え、リアンが叫ぶ。
「だったら――その力、試してみろ!!」
雷の紋章が光り、戦いが始まる。




