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烈火の誇り、炎刃公の咆哮

夜明け前、東の地平が赤く染まった。


それは朝焼けではない――燃え上がる炎。

かつての兵器工廠都市バルヴェイン。今は“炎刃公”の砦と化し、灼熱の業火が絶え間なく吹き上がっていた。


「この熱……普通の炎じゃない。空気ごと焼き尽くす気か」


リアンが額の汗を拭いながら、セイグランス・レガリアを構える。


「この匂い、間違いない。魔族四天王、最後の一人――バルクルスだ」


エファトが剣を抜く。空気の層が一枚、鋭く裂けた。


その瞬間、炎の壁が割れるように広がり、ひとりの男が姿を現した。


「おお――来たか、“誇りの剣”どもよ!!」


全身を紅蓮の鎧で覆い、背に大剣を二振り。

身の丈はリアンの倍近く、燃え上がる鬣のような髪が風に舞う。


炎刃公バルクルス――


「騎士団の残党に、不老の剣士。面白い組み合わせだ!

だが、このバルクルスが求めるのは――ただひとつ、“強さ”だ!」


「……誇りも、信念もないのか」


リアンが呟いた。


「誇り? 信念? ハハハ! そんなもの、剣が強けりゃいらん!!

俺はただ、誰よりも強く在りたい。それだけだ!」


「だから仲間を裏切って、魔族に寝返ったのか」


「そうだ! あの“人間の国”は腐っていた。誓いだ忠誠だと、強さを束縛する。

だが魔族は違う! 力を持つ者こそが正義だ!!」


その言葉に、リアンの目が細められる。


「……それが、お前の“信念”か」


「違う。“欲望”だ。

剣とはな、誇りのためにあるんじゃない。己の“欲”を貫くためにあるのだ!」


バルクルスが両腕を広げた瞬間、背後の空間が爆ぜるように燃え上がった。


「さあ、来い! 全力でぶつかってこい、“守る剣士”どもよ!!」


「リアン、俺が先手を取る」


エファトが一歩踏み出した瞬間、炎の嵐が彼を包む。


だが、不老剣が一閃。空気を裂き、炎すら斬り裂く。


「“断時斬風”――!」


時間の流れすら一瞬歪み、バルクルスの肩が裂ける。


「ッハ――いいぞ、不老の剣士よ! だが……!」


バルクルスが力を込めると、傷口が焼けて瞬時に塞がった。


「俺の体は、“炎”そのもの。斬っても、燃え尽きるまで止まらん!」


「なら、燃え尽きるまで叩き込むだけだ」


リアンが跳ぶ。


セイグランス・レガリアが、紅蓮の嵐を突き抜ける。


「【誓技・閃鋼連刃】!」


何度も何度も斬り込む。炎が舞い、剣がきらめく。


だが――バルクルスの防御は厚い。


「悪くない。だがまだ足りん!

もっと剣に――お前の“怒り”と“欲”を乗せろッ!!」


「俺の剣は“誓い”の剣だ……お前みたいに欲望のままじゃない!」


「誓いだと? それで、この“灼熱”に届くかぁああああッ!!」


バルクルスが双剣を構え、真紅の光を解放する。


「奥義――【焔皇剣・双輪斬界】!」


空間が割れた。


二重の斬撃が重なり、エファトとリアンの立つ大地が吹き飛ぶ。


「く……ッ!」


エファトが一瞬遅れたリアンを抱えて飛びのく。


「このままじゃ押し切られる。リアン……次だ」


「……はい!」


リアンが顔を上げる。その目に迷いはない。


剣にこもる光がさらに濃くなる。


セリナの言葉。団長の遺志。エファトとの誓い。


すべてが、剣に宿る。


「俺は“守るため”に剣を振るう!

お前の炎なんかに、焼き尽くさせない!!」


刹那、リアンの周囲に風が吹いた。


剣の形が変わる。光が収束し、まるで翼のような残光を描く。


新技・【誓技・煌刃双翼こうじんそうよく


リアンが駆ける。


炎の壁を斬り裂き、空中で二重の光刃が交差する。


「これが、俺の――“未来を継ぐ剣”だッ!!」


斬撃がバルクルスを貫いた。


大剣が砕け、炎の巨体が軋みを上げる。


「……く、クハハハッ! お前……本当に、“守る”ために……ここまで……強くなれるとはな……!」


轟音とともに、バルクルスが崩れ落ちた。


 


残るはただ一人――魔族王、ザガロス・ヴェイン。


次なる戦場は、世界の果て。かつて人と魔が契約を結んだ“原初の地”。


“すべて”を終わらせる戦いが、ついに始まる。

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