魔力測定の儀
4月1日その日は帝都にて15歳になる貴族達が集まる日だ。
そして僕たち2人は3日前から帝都に向かう馬車を出すために準備をしていた。
「さてと礼服も入れたしいつもの日記も入れた、あとは着替えと杖も一応持って行こうかな」
誕生日に貰ったトランクに荷物を詰めて準備を終わらせる。
「それにしてもこんなにおっきいけど持てるかな?」
持ってみると軽量化の魔法により入れたものまで軽くなっているようで一切重さを感じなかった。
「すごいなぁしかも中に入れたものもずれたりした感覚もないから中に入ったものを固定する魔法も付与されてるのかな?それはさておき準備も完了したしあとはいつも通り過ごしますか」
トランクを置いて本棚に向かおうとした時。
「ノア!入るわよ!」
勢いよく扉を開けてユーリが入ってくる。
「どうしたのユーリ?」
「どうしたの?じゃないわよ!今晩には出発するっていうのに準備はできてるの!それにもう夕方だから夕食も食
べないといけないのに!」
そっとトランクの方を指差す。
「えっ?」
指差したトランクをそっと開けてすぐ閉めるユーリ。
「準備できてたのね、それじゃあ、あの、夕食作ってくるから、じゃあ後で」
すぐさま出て行こうとするユーリに対して笑顔を浮かべながらそっと肩を叩き部屋の中央に座らせる。
「何か言うことがあるんじゃない?」
「その〜、早とちりして⋯⋯ごめん?」
「なんで疑問形なの、まぁいいけど」
「だっていつものノアなら準備なんてせずにずっと本読んだりしてるから!!だからその準備なんてしてないと思ってつい開幕早々ノックもせず突入しただけで」
「否定しきれないのがなかなか痛いところだけど、まぁ今回は許そう、待ってもらってるわけだしね」
「そうじゃあそろそろ、ご飯作りに行ってもいい?」
「どうぞどうぞ、出来たら大きな声で呼んでくれると嬉しいかな」
「わかったからあんまりネチネチ言わないでよね!」
「は〜い」
部屋から出ていくユーリを見送った後中断していた読書を再開する。
「さてとそろそろ持っていく本の選別を始めないとなぁ、帝都の魔法学校は寮制らしいけど確か魔力と魔法適性それと筆記試験に実技試験の結果で階級分けされるんだっけね?」
帝都にある魔法学校では5段階の階級分け、それぞれ将来の有望さによって分けられるその中でも一番上の帝国七将に匹敵する才能を持つ人は寮の備品はもちろん料理や学習など他の生徒より一段階上のものらしい。
「まぁ一番上は無理でもある程度自室が広かったらいいなぁ」
今のノアの部屋は1人で使うには少々持て余すぐらいの広さの部屋に住んでいる、それでも日々本を読む都合上部
屋に本棚を複数置いているため狭く感じる、そんな中寮に移ることになったら多少なり選別をしないといけない。
「ノア!ご飯できたわよ!!」
「おっと呼ばれちゃったなぁ、選別は帰ってきてからかな」
素早く下に降りて、全員で食事を取る、そして夜出発の時間になる。
「さて2人とも出発するよ、荷物は席の下に置いてね」
「ふぁい、お父さん」
「わかりましたクリスさん」
明らかに眠そうなユーリといつも深夜に入るぐらいの時間帯寝ているためそこまで眠くなさそうなノア、2人でそれぞれ馬車に乗り込む。
「ノア、あんまりユーリちゃんに迷惑をかけちゃダメよ」
「わかってるよお母さん」
「ユーリはもう寝ちゃったわね、それじゃあノアくんユーリが起きたら頑張って、と伝えておいてね」
「わかりましたミアさん」
「それじゃあ出発しようか、ロイ馬車を出してくれ」
「おうよ!」
「お父さん声でかい」
「すまんな⋯⋯」
絶賛僕の肩で寝ているユーリに気を遣いつつ馬車が出発する。
「それじゃあ頑張ってね!」
見送ってくれる母に手を振りつつ僕も僕で寝る準備をする。
「クリスさん僕も寝ますね」
「うん、おやすみ」
肩に乗ってるユーリを膝に乗せてから角にもたれかかる形で寝る。
それから帝都まで2日ほど、時々町で降りて食事などを摂りつつも帝都に到着して帝都の中央に近い宿に泊まる。
「さて2人とも、明日が魔力測定の儀の日だからある程度事前にチェックしよう、まず礼服だけど2人ともちゃんと持ってきてる?」
「はいお父さん」
「僕もしっかり持ってきました」
礼服は魔法学校で着る制服で貴族の魔力測定の儀では制服による参加が厳命されている。
なんでも地位によって差が起きにくくするために2代目皇帝が決定したらしいが今は制服だけが決まりというだけで測定の際の順番が貴族階級の高い順だからその気遣いもあってないようなもので形骸化しているといってもいい。
「次にそこまで気にする必要はないけど今回は他の貴族も参加するから上の階級の貴族には無礼の内容にさもないとできてまだ短い僕たちは一瞬で潰される可能性があります」
「はい、マナーを守って頑張ります」
「僕はユーリの後ろに隠れておくとするよ」
「ノア!!」
「冗談冗談、何かあったらユーリは僕が守るよ!」
「そういうことじゃなくて!」
「はいはい説明の最中に喧嘩しない」
「あっごめんなさいお父さん」
「それじゃあ最後に今回も皇帝陛下がご覧になられます、またその時に王太子殿下も来られるそうなのでこちらにも無礼の内容に、これもさっきいったことと同じことになります」
「わかりました、それじゃあノア2人で作法の練習するわよ!」
「えぇ今日はもう寝ようと思ってて⋯⋯」
「つべこべ言わずやる!」
「うへぇ〜」
その日は夜までみっちり作法の練習させられた。
そして魔力測定の儀当日。
「2人とも似合ってるよ」
僕とユーリ、それぞれ制服に身を包み準備を済ませる。
「じゃあ僕たちは保護者席で見るから、2人は自分たちで会場まで向かうこといいね」
「はい!お父さん」
「ノア!気合いだけは誰にも負けるんじゃないぞ!」
「わかったよ父さん」
『それじゃあ行ってきます!』
『いってらしゃい!』
そうして宿を出て城のすぐそばにある大聖堂に向かう。
この国では約300年ほど前から天使と呼ばれるものを崇拝する宗教が生まれたらしく、帝国でのみ広まっているらしいが詳細はわからない、とにかく大聖堂には日々多くの人が帝都の内外問わず訪れているらしい。
宿から10分ほどのところで大聖堂が見えてきた。
「うわぁでっか」
「こら!あんまりはしたない喋り方しない!」
「ごっ、ごめん」
しかしノアの口からこぼれるのも仕方がない、なぜなら大聖堂は城の高さに匹敵いやそれ以上の高さだったからだ。
「ここが大聖堂かぁ想像してたより豪華ででかいなぁ」
「そっそうね」
流石にユーリも驚いているようで口が少し開いてしまっている。
「とにかく中に入ろうか」
「えぇ」
中に入ってみるとすでに何百という人で賑わっていた。
そしてその中に複数の席が置かれていて2階には保護者が座るであろう席が並んでいたり、中央には大きな翼の生えた人を模した像が建てられていた。
「ノア、私たちは男爵家だから後ろの方の席みたい」
耳元でやっと聞こえるぐらいの声で、席を指差しながらユーリが案内してくれた。
座った席は男爵家の席の中でも最後尾に当たる場所だった。
いち早く席に着き周りを見たりしながら時間を過ごす。
そうしていると、拡声魔法を使った道具であろうか?何かの魔道具で声を大きくした白いローブを羽織ったご老人が像の直下ある台に立った。
「皆様方おはようございます、この大聖堂で枢機卿を務めているものでございます今日は年に一度行われる魔力測定の儀の日皆様の魔力そして魔法適正を確認する日です、そしてまずはそれを外しましょう、解除の魔法」
枢機卿がそういった途端僕たちにつけられていた封印の腕輪が外れた。
「今日まで皆様につけられていたその封印の腕輪を本日解除します、そしてそちらは皆様で持ち帰っていただき大切に保管してください」
なぜ回収ではなく保管なのかはわからないが全員のポケットに封印の腕輪が入る。
「それではこれより魔力測定の儀を始めます!ではまず公爵家の方から」
呼ばれた公爵家の人から魔力そして魔法適正を映し出す水晶に触れていき貴族全員に見られる状態で次々と測定を行う。
そうして公爵家、侯爵家、伯爵家は1人ずつ、子爵家、男爵家は2人ずつで測定していきついに僕たちの番になった。
「いきましょうノア」
「うん」
最後尾の席から先頭まで歩いていき水晶の前にそれぞれたつ。
「続きましては男爵家ノア・サミュエル、そして同じく男爵家ユーリ・ノートン、それでは各自まず魔力を測る水晶に触れてください」
互いに少し緊張しながら、同時に水晶に触れる。
触れた瞬間直上に数字が映し出される、その途端周りにざわめきが起こる。
上を見上げるとそれぞれの数字は5と映されていた。
「おぉ、これは天使の祝福か!魔力5など現帝国七将の中でも2人だけ!素晴らしい!!」
枢機卿がそう言いながら歓喜のあまり泣き出すほどである。
「では、お二方続いて魔力適性を測る水晶にも触れてくだされ!」
先ほどまでと打って変わって勢いのある言葉だった。
そして2人とも一旦目を見合って次の水晶に触れる。
そしてまた直上に数字が映し出されるが先ほどまでとわ違ってざわめきが勢いを増していた。
意を決して見上げるとそこには5と0の文字が映し出されていた。
驚きで頭が一瞬停止していると、大きな拍手で豪華な椅子からこちらに歩いてくる男がいた。
「素晴らしい!!」
大きな声でそう言いながら近づいてくる男。
ざわめきの中から「王太子殿下!」と聞こえたためおそらく王太子殿下なのだろう。
「歴史上でも類を見ない才能!!魔力と魔法適性が5など帝国の歴史上初だ!!」
すぐそばまで近づいてくると。
「おっと名乗りが遅れたな、もう知っているとは思うが私の名前はジェームズ・ロストこの国王太子である」
高らかにそう宣言し、さらに話し始める。
「この国で君のような人物が生まれたことは本当に素晴らしく思う!是非我が国のために励んでくれたまえ、しかしだそんな素晴らしい時に君の隣にこの国に相応しくない人間がいるようだ」
僕を見る優しいいような目から一変ゴミを見るような蔑むような目に変わった、そしてその目は僕の幼馴染であるユーリを見ていた。
「君のような人間はこの国にはいらないよって法に基づき無人である貴様は国外追放とする!!」
無人それは魔力か魔法適性を持たない人の蔑称。
「っ!」
絶望に駆られていたユーリに追い討ちをかけるように、そして見せしめの如く高らかに追放を宣言した。
「しかしだ」
何かまだ言うことがあるのか名残惜しそうな、舐め回すような目でユーリを見る。
「我が女となるなら、追放も免除してやらんことはない」
公式の場での発言とは思えないその言葉は確かに王太子の口から発せられた。
「君のような美しい娘がみすみす他国に追放されるなど損失であるからなぁ」
怯えるように震えるユーリに近づいていき話す。
「どうだ?私の女になるか?」
ここで王太子に背くようなことをしたら一家で処分されるかもしれないけど、でも
「王太子殿下、失礼ながらここは公式の場、そう言った話は後ほど」
男爵家の人間が王太子に意見することなど本来滅多にないしかも年も離れた人間がだ。
そして王太子の返事を聞くこともなくユーリを連れて席に戻ることなく大聖堂を出る。
そしてすぐに宿に戻りユーリを一旦自分の部屋に戻す。
そして帰る時も話すことなく領地に帰還した、帰ってこれたのは深夜だったしかし王太子の話に返すこともなく帰ってきたため追放することが半ば決定されたようなものだ。
無人と判定を受けた人間が貴族内で出るとすぐさま国外に追放しないといけない、そして追放しているかを確認するために一週間後帝都から調査団が来るらしい、しかも過去に隠した家は何故かすぐにバレてしまいその後伯爵という地位だったのにも関わらず全員が資産の没収そして公開処刑が行われたそうだ。
つまりユーリは一家が生き残るために追放されるということになる。
「私はどうして⋯⋯」
ユーリは今、自室に戻り荷物をまとめている。
「あの時何もいえなかった、ノアがもし連れ出してくれなかったらあのまま⋯⋯っ!」
あの場所で何もできずにいた私を連れ出してくれたノアのおかげで王太子に一切触れられる事もなく出てこれたけれど、あの後お礼を言うこともできず気まずさと心苦しさでお父さんどころかノアにすら話しかけることができなかった。
「私は今まで何のために⋯⋯それよりもみんなと離れるなんて!」
しかし抗いようのない運命何もできない絶望に暮れるものの身支度は着実に進んでいきもう家を出れるだけの準備が整った。
そして深夜まだ日が登る少し前の時間にも関わらず1人を除き家族全員が見送るために起きていてくれた。
「それじゃあ、お母さん、お父さん今までお世話になりました」
父と母に対して最大限の感謝を伝えようとするもまだ気持ちの整理もついていないため自然に声が小さくなってしまう。
「ユーリ⋯⋯今まで一緒に過ごしてくれてありがとう⋯⋯私たちは離れていてもあなたのことを見守っているからね」
「追放制度も変えられない不甲斐ない父を許してくれ⋯⋯」
「お父さん⋯⋯」
父と母は悔しさのあまり涙を流す。
「お姉ちゃん、行っちゃうの?」
「ごめんね⋯⋯リン」
「嫌だ!お姉ちゃんと離れるなんて!!そんなの!」
どうしようもない現実に駄々を捏ねるしかできない妹でもその姿を見て私も涙が出てきてしまう。
「ごめんね⋯⋯ごめんね私みたいなお姉ちゃんで⋯⋯ごめんね⋯⋯」
ただ泣くことしかできないそれでも家族との最後の時間を噛み締めながら過ごす。
そして泣き止んだ頃最後の別れを言う。
「お父さん、お母さん、リン今まで私と過ごしてくれてありがとう」
家族に向けた感謝の言葉それと。
「ロイさん、ルーナさん、それにレンくん今まで一緒にいられて楽しかったです、それとノアにもありがとうと伝えておいてください」
「ごめんねノア部屋から出てこなくて」
「いえ、あんなところを見せてしまいましたから、それにあの日ノアが連れ出してくれたから今も私は家族との時間を過ごせているんです感謝しても仕切れませんよ」
「そうね⋯⋯」
「あとレンくんノアの引きこもり癖、学校が始まるまでに直すよう言っておいてね、じゃないとずっと部屋で本を読みかねないから」
「はいユーリさん」
「それじゃあみんな今までありがとうございました!!」
涙を流しながらも精一杯笑顔を作って帝国の外に向けて歩き出す、思い出をトランクに詰め込んで。




