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魔科学  作者: 水銀
東方魔法連邦編
26/26

「命」を学ぶ

「もう朝か」


ダンジョンでの実習を終え、その日はいろいろなこともあってか疲れが溜まっていたから夕食を食べずに眠りについた。


「時間は⋯⋯まだ朝の6時、どうりでみんな寝てるわけだ⋯⋯よし」


服を着替え、テラスまで行き空を眺める。


「朝だと思ってたけどまだ太陽は出てないか、じゃあ朝の散歩にでも行きますかね」


テラスの手すりを乗り越えて地面に降りる、「いでっ」ただ綺麗に降りれるとは言ってない。


「せっかく、着替えたのになぁ、まぁ後で綺麗にすればいいか」


学院の面積は、この町の四分の一、正確な広さはわからないが、散歩コースには充分すぎる広さがあり、学院の設備として噴水やベンチ、街灯などもあるため景色に飽きることはない。


「朝一だから誰もいなくて静かだなぁ⋯⋯風の音もよく聞こえる⋯⋯考えごとをするにはちょうどいい感じ、こんなことだったら本の一冊や二冊持ってくるんだった⋯⋯」


自分でもわかっている、今手元に本があったところで何かを考えることも、一喜一憂することもない、昨日ユーリはあぁ言ってくれたけど、それでもまだ心の気持ちの整理はついていない。


「僕って、案外弱いんだね⋯⋯」


近くにあったベンチに座る。


「こんなのじゃ駄目なんだろうな、何かの犠牲無くして何かを成すのは難しい、昨日も頭の中で考えて結論を出したはずなんだけどなぁ」


それでも、実際に生き物を手にかけた、それが魔物であっても、それがこちらの命を奪おうとしていたとしても、命を奪った結果は変わらない。確かに今考えたところで同じ考えぐるぐる回って堂々巡りになるだけ不確かな事実を、確たる事実がないものを考えるのは無駄、何度も読んだ本の中にもある言葉。


「ユーリを守りたいだの、一緒にいたいだの、そんなのは建前で結局僕はまだ童話の、物語の中から抜け出せていないのかな、空想ばかりで、目の前のことを、身近なものを見れていない、一種の正義感に酔いしれていただけの何も成長してない子供、僕は本当に――」


「はーい、そこまで」


「へぶし」


突然、額が弾かれる。その衝撃でベンチから転げ落ちる。


「いたた、一体誰が」


体勢を整え目を上げるとそこには先ほどまでベットで気持ちよさそうに寝ていた、テスラの姿があった。


「テスラ?さっきまで寝てなかった?それに急になんでデコピンなんかを」


「いや〜、朝早くから着替えて外に行ったと思ったら、結論なんかないようなことで自分を責めてる、どこぞのガキンチョがいたから、一発ぶち込んでやらないとと思ってね〜」


ガキンチョ?ガキンチョ⋯⋯ガキンチョかぁ。


「それって僕のことだったりするのかなぁ?」


「もちろんノアくん以外に誰もいませんが?」


ほうほう、確信犯でしたか、こうなんだろう怒りではないんだけどなんとも言えない悔しさというか、なんとも表現できない気持ちになる。


「ガキンチョって、僕のどこがガキンチョなのさ!!?」


「私からすればノアくんなんかただのガキンチョだよ、年齢でもそうだけど、やっぱ根はまだまだガキンチョだね」


「確かに⋯⋯年齢は年下だけども、根がガキンチョは失礼ってもんじゃないかなぁ!?そんなこと言ったらテスラだってガキンチョじゃないか!!いっつもナグサさんに怒られては、強制自習させられてるし!」


「それを言うのは反則⋯⋯じゃなかった、そもそも論点がずれてきてるし、私が言いたいのはノアくんがどうしようもないことで、無駄に悩んで、自分を責めてるってことだよ!」


「確かに⋯⋯確かに悩んでたさ!!でも悩んで何が悪いんだよ!!僕は生きているものを手にかけた!!最後のトドメを刺したわけでわないけれど、それでも過程でその命を奪う手助けをした!!僕がそれだけの罪をやったんだ!命に差なんてない!例え僕の命を奪った可能性があったとしても、結果として僕が命を⋯⋯命を⋯⋯ぶへぇ」


「必殺強制口塞ぎ!!」


テスラの両手が僕の口を塞ぐように左右から頬にぶつかる、必殺というだけあって、何か言葉を発することができない。


「全く、おんなじところをぐるぐる回るんじゃないよ、ハッキリ言って今のノアくんはダサい!カッコよさなんて求めてないだろうけど、人としてダサい!!何が悩むだ、何が奪っただ、ただ言い訳したいだけでしょ!子供がいっちょ前に抱え込もうとして、はぁ〜〜〜」


それはでかい、それはそれはとてもでかいため息をついて。


「ノアくんはまだ14歳、まだまだ子供なんだからそういうのは大人に押し付けて自分は何も関係してないフリしてるくらいでいいんだから、確かに何か命を奪うということは本来ならあってはいけないことだよ、でもねそれは子供が悩むことじゃない、大人が子供を守る大人が悩むべきことなんだから、大人が考えてそして大事な子供を守るためにそこにどんな非情な決断があったとしても、その責任を大人が取るそれが普通なの、だから今ノアくんは悩む必要はない、まぁ少しぐらいは悩んで、後悔した方がいいだろうけど、今は素直な気持ちを大人に言えばいい」


長々しい言葉、でもその言葉は今欲しかった言葉なのかもしれない、張り裂けそうな胸にある思いが、隠した、無いと見なかった思い。


「テスラが初めて大人に見えたよ」


「そうそうだから今は僕に素直な気持ちを抑えて欲しいな」


「ここぞとばかりに⋯⋯大人、ぶって⋯⋯っう⋯⋯うっ、うわぁぁぁーー」


テスラの胸の中で静かな空に響く、小さく、幼い泣き声。抑えていた感情が濁流のように流れる、それは今回のことだけではなく、家族と離れる時の悲しさ、崩れかけたユーリとの日々の、なくならないと思っていたものが目の前で崩れかけた恐れの涙。


「そうそう、今は泣いていいんだよ、私が全部聞いてあげるから、ユーリちゃんに悟られたくないことも今は私に吐き出していいんだからね」


















「どう?スッキリした?」


目の周りが赤く腫れた顔、でもその顔は先ほどよりも、どこか晴れた顔をしている。


「うん、まだ全部が消え去ったわけじゃないけど、でも心に整理はついたよ」


「なら、よかったよかった」


「それと、責任押し付けたっていいんだよね?」


「おう!どんとこいよ!」


「じゃあ、これからの僕の人生何かの決断に迫られた時はテスラのせいにしようかな♪」


「全部は駄目だからね、それに私もまだ子供だから、ね!ねっ!」


「こういう時だけ子供になるんだから、テスラ⋯⋯ありがとう」


「うん、お役に立てたなら何よりだよ」


明け方だったそれには、明るく輝く太陽がのぼり僕たちの背を照らす。静かだって学院にはだんだんと音がつき、活気ある声が聞こえてくる、一週間あまりしか過ごしていないこの空間、それでも安心感に包まれるような温かい場所。


「そうだ、テスラ聞いていい?」


「なんだい!」


「科学って何か知ってる?」

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