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魔科学  作者: 水銀
東方魔法連邦編
11/26

手合わせ

その日のうちに荷物をまとめて一旦テスラの部屋に移るノア一行。


「さてと荷物は持ってきたけどこれからどうすればいいんだろう?」


「そうね、まだテスラも帰ってきてないみたいだしくつろいでいましょうか」


部屋にある椅子や絨毯の上でそれぞれがそれぞれの形でくつろぐ。

そこでふと疑問が浮かぶ。


「それにしても寮生の部屋としてはなんだか豪華だよね〜」


「そうね、この学院の方針なのかしら?」


「まぁ他の部屋も見たことないしね〜」


「それにしてもテスラまだ帰ってこないのかしら?」


「確かに」


テスラが連れて行かれてからかれこれ7時間以上経過している。


「もう5時になるよ?」


「そうね一旦寮長室に行きましょうか」


「そうしようか」


そう言って立とうとすると肩を掴まれ無理やり座らされる。


「どうしたのユーリ?立てないんだけど⋯⋯」


「ノア今は5時よ、もう学生たちが帰ってきててもおかしくない」


「それはそうだね」


「でここは女子寮なのそこで見ず知らずの人が歩いているそれも男子なんてなったら騒ぎになるわよ?」


「あっ忘れてた」


「やっぱりね、それじゃあノアはここで待っててね」


言われた通りに部屋で本を読みながら待つ。

それからさらに1時間が経過したところでユーリ達が帰ってきた。


「あ、おかえり⋯⋯ってどうしたの2人とも?」


帰ってきたテスラは息が上がって今にも倒れそうな体勢でユーリはテスラほどではないとはいえ息が少し上がっている。


「だいじょ⋯⋯うぶ⋯⋯だ⋯⋯よ」


明らかに大丈夫には見えないがしかし大丈夫と言っているので一旦椅子だけ扉付近に移動させる。


「ありがとうノア」


「それにしても息が上がってるユーリなんて数年ぶりに見たけど何があったの?」


「それが」




時は1時間前に遡る。



「確か寮長室は一階だったわよね?」


テスラの部屋が2階にあって寮長室は一階にあるらしい。


それにしてもノアを部屋で待たせておいて良かったわね。


周りには女子生徒がちらほらいる、友達との会話を楽しむ生徒、ユーリを見て不思議そうにする生徒、タオルなどを持って移動する生徒などなど。


学生か、ノアはこの道を選ぶこともできた、でも私のためだけではないけれどついてきてくれた。


でもやはり思うところはある。


そんな“思い“色々な感情が心の中や頭の中で言葉として溢れてくる。

そんな思いを巡らしているといつの間にか目的地にたどり着いていていた。


「ここが寮長室」


ノックをすると「はい、今」という声が返ってきて扉が開く。


「あ、ユーリさんでしたか、何かありましたか?」


「いえ、テスラの帰りが遅いと思いまして」


「あぁそれでしたら今勉強中でして」


「寮長室で勉強ですか?」


「えぇ、テスラさんはよく抜け出されるので“当学院“の勉強ができていないんです」


「なるほど、今は何を?」


「今は魔法座学が終わってこれから実技及び護身術をやるつもりです」


「そうですか⋯⋯ん?」


気がつくとナグサさんが私を見つめている。


「どうかしましたか?」


「いえ⋯⋯いや⋯⋯ユーリさんも一緒に護身術をやりませんか?」


「え?」


「いえ嫌ならいいんですけど⋯⋯何か悩んでいるようですしそういう時は体を動かしたりするのがいいって言いま

すから」


心の中を見透かされているような、今の自分の気持ち、思いに気づかれ心の中で動揺する。


「⋯⋯さすが教育者ですね⋯⋯」


その言葉以外に返せるものがなかった。


「⋯⋯私が何か相談に乗りましょうか?きっとノアさんにも話せないことなのでしょう」


「それは⋯⋯はい⋯⋯」


「でしたら私かテスラさんでもそれ以外の誰かでも構いません話すことで気持ちが楽になることだってあると言いますし」


「⋯⋯では、木刀はありますか?体を動かしてからなら話しやすい気がするんです、私にとっての今までが木刀にならまだ詰まっているんです」


「はい、ですが木刀はないので代わりに私の刀を貸せますのでそれでいいですか?」


「はい」


「ではテスラさん外に行きますよ、あと窓から逃げようとしないでください」


「うぅ」


そうして寮から少し離れたところにグラウンドに向かう。


「さてここなら周りにも気を遣わなくていいですね」


周りにはちらほら学生がいるがそれなりに離れた距離で止まる。


「ではテスラさんは私たちが手合わせしている間近くでトレーニングをしていてください」


「は〜い」


「サボっていたら追加で3セットしてもらいますからね」


「はっは〜い」


「それではこの二振りの中から選んでください」


置かれた刀は長さはいつも使ってた木刀と変わらない長さのものだった。

右のある方の刀は刃が滑らかに曲がっている。

左の刀は右の刀に比べると少し短いがそれでも綺麗に作られていた。

それなら私はこっちを。


「この刀にします」


選んだのは左の刀。


「そちらの刀ですか、では私はこちらを」


残った右の刀を取った。


「ではその刀はユーリさんにお譲致します」


「え?」


「旅をしていく中で身を守る武器は必要でしょう、それにその刀もあなたを選んだようです」


見ると刀は微かに光を放っていた。


「ありがとうございます!ナグサさん」


「では戦いの前にその刀に名を」


「名ですか?」


「はい、刀には基本制作者の銘が刻まれますがその刀はあなたが名づけてあげてください」


「でも急に言われても⋯⋯」


初めてのことに対して頭をひねる。


「そうですね⋯⋯例えばこの刀の銘は“三日月宗近“といいます我が家に伝わる一振りです」


月⋯⋯そういえば月って“ルーナ“ともいうんだっけ?それなら。


「この刀は“(ルーナ)“にします」


「帝国での月の呼び方ですか⋯⋯はい、いい名前だと思います、それでは始めましょうか」


「はい!」


互いに刀を前に出し構えを取る。

そうして今まで努力を全身全霊で込める。

一瞬だった。

刀を振った瞬間ナグサさんはすでに私の刀を飛ばしていた。


「いつの間に刀が⋯⋯」


それなりの距離に突き刺さっている刀。


「そうですね、まず一つ目は刀に慣れていなかったのが一つでしょう、それに関してはすみません昔の癖でついつい刀を持ってから打ち合ってしまいました」


深々と頭を下げるナグサさん。


「そして二つ目は本当の刀だからこそ、相手に傷をつけてしまうかというあなたの優しい心があったこと」


「でも私は全力で刀を振りましたよ?」


「いえ少しですが目を瞑ってしまっていました」


気づかないくらい集中していたせいか目を瞑っていたのに気づかなかった。


「そして最後に、相手を倒すという気持ちが足りていないなかったんだと思います」


「気持ちですか?」


「えぇ、他人に対して刀を向けるのには誰であれそういう気持ちがありますそれがユーリさんにはいまいち掴めずにいる」


今の一瞬で私からさまざまな情報を読み取った。


「そうですねでは一つ実演しましょう」


そう言って刀を持つナグサさん。

すると目つきが変わり刀を私の方へ向ける。


「え?」


次の瞬間私の顔のすぐ隣にナグサさんの刀が通る。


「今、私はユーリさんに対して怒りを込めて刀を振いました、そして先ほどの打ち合いでも私は気持ちを込めて打ちました、気持ちそれはとても曖昧で人それぞれにあるものでもその気持ちが感情が人を大きく変化させ誰にも負けない力を与えてくれる、ユーリさんあなたにもそんなことがありませんでしたか」


そう言われて東方魔法連邦に入ったばかりのことを思い出す。


確かあの時は無我夢中で木刀を振るった、確かノアを侮辱されて⋯⋯。

あの時の感情を(ルーナ)に込めれば。


「見つかったようですね」


「はい!」


突き刺さっている(ルーナ)を抜き取りもう一度構える。

あの時の感情がこもった手には自然と力が入る。


「それでは行きます、ノートン一刀流“風雲“」


ノートン一刀流とは、ユーリの母、ミアが独学で身につけた我流の剣術をユーリが本を読んだりして改良したユーリの剣術である。


「いきなり風が!?」


ユーリの持つ(ルーナ)から風が吹き始める。


「それがその刀に込められたあなたの力ですか、ならば私も」


次の瞬間ナグサは刀を地面に突きつけた。


「“三日月流“ 月牙」


私が刀を振り下ろすとナグサさんは地面に突き刺さした刀を高速で振り上げさらに振り下ろす二連撃の攻撃を繰り出した。


「っ!」


それなら!


咄嗟の判断で刃を斜めにし受け流す。


「まさか!」


「ノートン流 風雲!」


その勢いのまま力を込めて三日月宗近に打ち込む。


「ですが」


確かに全ての力を込めて打ち込んだしかしナグサの方が一枚上手だった。

刀が弾き飛ばされることはなかったが尻餅をついてしまう。


「負けた?」


「いえ、その歳でここまでの動きができるのはすごいですよ」


差し伸べられた手を取った瞬間周りから歓声が上がる。


「ねぇねぇあの子!すごくない!」


「ね!ナグサ先生とあんなに打ち合えるなんて!」


気づけば周りには先ほどまで自主練などに励んでいたこの学院の生徒が集まっていた。


「いつの間に!?」


「おそらく原因は⋯⋯テスラさん出てきってください」


「バレた?」


生徒の中からひょっこり顔を出すテスラ。


「バレたではありません⋯⋯それに言いましたよねサボったら3セット追加するって」


「あ⋯⋯」


「周りのあなたたちも一緒に自主練やりますか?」


『はい!やりたいです!』


日暮に向かいつつある時間帯の中約40分に及ぶ自主練が開始された。


そうして時は現在に戻る。


「なるほど、だから少し息が上がってたのか」


「そうなんだよ〜後話は明日にしていいですかユーリ様」


「仕方ない今日はもう休みましょうか」


「ありがたき幸せ」


なぜか上下関係が確立しているのは置いておこう。

その後はナグサさんが持ってきた料理を食べて眠りについた。

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