救いと出会い
暗闇の森の中でひっそりと彷徨っている1人の少年がいた。白銀のショートヘアをしていて、黄色の獣の瞳にオオカミの耳と尻尾。身長から見て16歳前後、腕や首元から筋肉が発達しているのが見えた。金属系の装備と首元に首輪を身につけている。まるで白銀のオオカミの王のようだ。
少年は前に進んでいた足を止めると周囲を見渡す。ただ、うっすらと自然林が見えるだけで獣などの気配はない。耳に入る音は少年が身につけた装備がこすれる音のみだ。
少年は何もいないことを確認すると、左足の膝をつけてその場にしゃがんだ。そして、左手を地面にかざすように置いた。すると左手から青白い光が漏れ出してきた。その光は少年が思わず目を閉じてしまうほどだった。
ガガガガッッ!!力強い地面の音とともに自動的に少年の前の一角が扉のように開いた。扉の先には暗闇の中まで続く石段があった。
「やはり…ここがそうか。」
少年が何かを確信したのか、不敵な笑みを浮かべると石段を降りていった。降りた先には古いレンガで作られた部屋の中にたどり着いた。壁には火のついたろうそくがいくつも立てられている。その部屋の中の中央に巨大な檻の箱が置かれていた。その中にゆらゆらと動く黒い影があった。
「こいつか、奴隷番号NO.234。セル・ルミュール。この世界で唯一人体改造によってウサギと人の混血を持つことになった、俺と同じ獣人族の奴隷は。」
すると、セル・ルミュールと呼ばれた少年は、人狼の少年に向かって顔を出した。服や顔、身体が汚れていて疲れ切った様子だった。よく見ると顔や腕などからいくつもの傷ができていて赤く染まった血が出ていた。
「た…助けて…くだ…さい。」
それを見た人狼の少年はガリっと奥歯を強く噛みしめた。
歳は10歳くらいで、白色の短髪にルビーのような赤色のきれいな瞳。人狼の少年と同じくらい、筋肉が発達していた。お風呂で綺麗にすると、同じくらいかっこよくなるだろう。
「こんな見つからないところに奴隷を捨てるとは…虫唾が走るな。少年、安心しろ。今助けるからな。」
人狼の少年は右手の拳に力を集中させると、だんだんと青白い光が集まってきた。
「はっ!!」
バキッッ!!!檻は大きな音とともに亀裂が走り粉砕していった。
「セル、もう大丈夫だ。」
それを見たセルは大きく目を見開いていた。そして目から雫があふれ出していった。
「あ、ああ……ありがとうございますぅぅ…!!!!!」
セルは少年に抱きついていった。抱きついた後もセルの涙は滝のようにあふれ出していた。少年はよしよしと撫でていた。
セルは涙を止めると、少年の顔を見ながら言った。
「あの、お名前をうかがってもいいですか?」
すると、少年はキョトンとした後、にっこりと微笑みながら言った。
「俺の名はキャラミア・エアロ。この世界の第6番王子、『獣の王』の称号を持っているものだ。」