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果てなき時空のサプニス  作者: インゴランティス
第5章 プルイーリの試練
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第1話 余計な同行者

 翌朝。


 ユウト一行はプルイーリの町を出て、近くのフォリール山に向かうため街道を歩いていた。山までの道は開けた草原になっていて、遠くに森が広がっていた。


「よっし! じゃあ、とうとうフォリール山に行こう!」クイは宿屋を出てから、ずっと機嫌がよかった。


「とうとう行こう、っておかしくない?」反対にテテは眠そうに歩いている。


「そうだっけ?」クイは首を傾げる。


「ともかく、山に挑む準備ができたわけだ」ミスペンはそうした仲間達をいつもの笑顔で見ていた。


「そうですね」パフィオが答えた。彼女はすっかりミスペンの隣が定位置になっていた。


「……で……」テテは端のほうで、目立たないようにしているある人物を指差した。「なんで、あんたまでついてくるわけ?」


 その人物は緑の球体、カフだ。


「ハハハ……そんなこと言うなよ。実は、あれから反省したんだ。オレ、すごく悪いことしたな、って……」


 カフは答えた。確かに申し訳なさそうにしているようにも見えるが、その顔つきはどこか怪しい。


「こいつの言うこと信じるなよ?」ユウトは言った。


「そうだね、あんなことしたんだしね」「悪い奴だよね!」テテとクイがうなずく。


 カフの背後から、誰かが言う。「殺されても文句言えないことやったのに、勇気あるじゃない」


 恐る恐る振り返ったカフが見たのは、殺気のみなぎった顔のターニャ。


「うわぁーー!」


 カフは逃げていき、どこに行ったか分からなくなった。一行は彼の後ろ姿を見て安心したが、しばらくすると彼は、いつの間にかユウト達一行に再び加わっていた。


「あれ! カフが戻ってきてるよ!」というクイの声で、全員それに気づく。


「はぁ?」ターニャは露骨に敵意を見せる。


「お前、どっか行けよ」ユウトも、汚いものを見るような目をカフに向けた。


「そんなこと言うなよ。オレ、本気で悪いと思ってるからさぁ」カフの顔つきは相変わらずだった。


「えーっと、このメロンって何?」ボノリーが能天気に訊いた。


「嘘つきだよ」クイが答える。


「えーー!! 意外!!」


 大声を出してのけぞるボノリーに、カフが近寄る。


「そうだろ? 意外だよな。オレ、もう嘘つかないんだよ。いや、最初から嘘はついてない」


「あんなに嘘つきって言われてたのに?」


「あんた、ターニャに斬られないうちにどっか行ったほうがいいんじゃない」


 クイとテテに言われてカフはまた離れるが、今度は一行から距離を開け過ぎないうちに立ち止まり、徐々に近づいてきた。クイとボノリーが呑気にそれについて話す。


「カフ、ずっとついてくるねー」


「うーん、でもカフは、木か草かでいったら緑だね」


「緑! その通りだね!」クイは楽しそうだ。


「あんたそれ、ずっと言ってるけど、本気で意味わかんないわ」ターニャはボノリーに白い眼を向けた。


「うびゃん!」ボノリーは再びのけぞった。


 それを見て、カフはボノリーに笑いかける。


「ハハハ! 君、面白いね。レサニーグには君みたいな人、いなかったな。木か草かでいったら、か……ハハ、ハハハ。どういう意味なんだろうね、でも面白い。ハハハハ……」


 カフは独りで笑い続けているが、それを見るユウト一行の眼差しは冷めていた。


「お前、さ」ユウトはカフに詰め寄った。「さっき『反省した』っつったよな? 何笑ってんだ。お前マジで、何を反省したんだよ?」


「うわぁ! もう勘弁だぁー!」


 カフはダダダッと足音を立てて走っていくが、逃げずに近くを適当に走り回るだけだった。


「走ってるねー」「そうだねー」ボノリーとクイはだらけた感じで言い合った。


「ミスペン」テテがミスペンの隣、パフィオの反対側に来て言う。「あのメロン、本気で連れてって大丈夫? あたいらもやってない罪着せられたりしないかな」


「まあ、今のところはいいだろう。だが、これ以上仲間に危害を加えるようなら、本当に容赦しない」


 それを聞いていたカフは、ミスペンの前に走ってくる。


「危害なんて! これからはオレだって仲間だし」


「仲間? あんたが?」テテは先ほどのターニャかユウトと同じくらい白い眼でカフをにらんだ。


「ハハハ……なんか、怖いよ。アクリスにも振られちゃったし、オレ、独りになっちゃったんだ。だから、頼むよ」


「何、その理由……」

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