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果てなき時空のサプニス  作者: インゴランティス
第4話 新天地を求めて
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第21話 緑のアイツ、再び

「うわあぁぁ!」


 大きなメロンはユウトの姿を見るなり、逃げ出した。追いかけるユウト。カフの丸い身体と短い脚は走るのに向いておらず、すぐユウトは彼を町の袋小路に追い詰めた。


「ここにいたんだな、カフ」


「やめろ……来るなぁ!」


「レサニーグから、こんなとこまで来て。俺から逃げるためか?」


「やめてくれよ。見逃してくれよぉ……」


 カフはひどく怯えている。ユウトは彼の近くまで詰め寄り、その頭についているT字のへたを右手で握った。


「俺が誰を殺したって? 言ってみろよ。ドゥムとダイムを俺が殺したって?」


 カフは震えて黙った。ユウトは詰問する。


「お前、自分が言ったことも覚えてねぇのか? 全部知ってんだろ! ドゥムとダイムがどうなったのかも!」


「なんだよ……それ……」カフは涙目で地面を見つめ、小声を返した。


「こっち見ろ! 巻貝、返せよ! どこにやったんだ! ドゥムの毛、俺のベッドに残ってたぞ! あいつ、巻貝使って俺の世界行ったんだろ! そうだって言えよ!」


 カフはすすり泣き始めた。


「何、泣いてんだよ!」ユウトは左手でも彼のT字のへたをつかむ。


 涙をこぼしながら、カフは言った。「な……何言ってんだ? どうかしてるよ、お前……!」


「どうかしてる? 俺が? お前だろ、どう考えても!」


 するとカフは泣きながら、ユウトに反論する。


「お前が……お前が殺したんだ。それしか考えらんねぇのに。どうしてここまで追ってくんだよ。お前、みんなを殺す気だろ? それとも、もう殺したから最後に俺を始末するってことか? なんで、そこまでするんだよ。どうかしてるよ!」


「……どういう意味だよ?」ユウトはつぶやいた。カフの言葉がまったく理解できない。彼だけが別の何かを体験したのかと思えてしまうくらいに。


 その時、背後で女の子の声がした。


「カフにひどいことしないで!」


 ユウトが振り返ると、ピンク色のごわごわしたニットのような服を着た、緑色のカマキリが立っている。虫らしい部分が触角しかないテテとは違って、顔つきも完全にカマキリだった。


 その後ろにギャラリーが集まってきており、なんだ、どうしたと口々に言っていた。


 人混みを抜け、追ってきたミスペンがカマキリに尋ねる。「君、あのメロンの仲間かな?」


「うん」カマキリはうなずいた。


「大丈夫だ、君の仲間には危害を加えないと約束しよう。ただ、彼に少し訊きたいことがある」


 そしてミスペンはカフに告げた。


「お前、来い。少し話をしよう」








 テテが作った、テーブルと椅子しかないあの殺風景な豪邸に、カフと彼の仲間のカマキリは招かれた。


「えっ……?」カフは愕然としていた。「お前が殺したんじゃ……ない?」


「やってないって、最初から言ってんだろ。何回言わせんだよ。レサニーグでも10回以上言ったぞ」


「いや、お前、そろそろもう認めろよ!」


「お前、こっちに来てもまだ言うのかよ?」


 ユウトとカフはこのような水掛け論を、ずっと続けていた。


「なんか、あのメロン、ずっと同じこと言ってるね」


「ユウトさんが殺したりなんか、するはずないです」


 と2人の背後でテテとドーペントが話すのを聞いて、カフが反応した。


「いや! お前ら騙されてるぞ!」


「そうよ」カマキリの後ろにいたカマキリが続いた。「カフは間違ったことなんか言わないの。この人間が全部やったんでしょ」


「お前、何?」カフへの怒りそのままにユウトがカマキリに訊いた。


「おい、アクリスに手出すなよ! お前、罪増やすんだな」


「お前、マジで……罪ってなんだよ!」ユウトの手は腰にある剣の柄に触れようとした。


「やめろ、ユウト」ミスペンが止め、間に入る。「おい、メロン。いきさつを教えろ。そうしないと、我々も本当のことを知りようがない」


 カフは沈黙し、少し考えてから言った。


「でも、ユウト、お前が言ったことはちょっと正しい。俺はオカヤーケに行こうと思ったんだ。蛇のシュケリから巻貝の話、聞いてたから」


「うわ!」ユウトは大声を出した。「やっぱり、そうなんじゃねぇか! シュケリの奴……!」


「オカヤーケとは?」ミスペンがユウトに訊く。


「俺の地元の岡山のことを、なんでか知らないですけど、レサニーグの奴らはオカヤーケっていう風に間違えて覚えたんです」


「あれ? オカヤーケだろ? なんか間違ってるか?」とカフが言った。


「もうどっちでもいいけど」ユウトは投げやりに返した。


「あっそう。で、あの日、俺とドゥム、ダイムの3人で、巻貝使おうと思ったんだ。ユウトの世界も気になるし、それに、強くなれるみたいだし」


「ドゥムとダイムというのは?」ミスペンが訊いた。


「ドゥムはアライグマで、ダイムはイカです」ユウトが教える。


「ユウト、このメロンって結局悪い奴?」クイが尋ねる。


「例の件までは仲間だったんだ」ユウトが説明する。「俺とこのカフと、ドゥムとダイム、あとはワニのバースと、レドっていうトウモロコシと、七面鳥のエルタ。7人で、よく魔獣討伐に行ってて」


 エルタという名を聞いて、ミスペンは眉をピクリと動かす。そういう関係だったのか――と。


「それで?」テテはカフに近づいた。「あんたは結局、何? そのアライグマとイカと一緒に、何をやったわけ?」


「オレ達はユウトの家のベッドに……3人で寝たんだ。巻貝も近くに置いて。でもベッドが狭くて、ドゥムの腕とダイムの足がずっと俺に当たってたんだ。それで、俺、気になって寝れなくて。寝れないから、どうしようかと思ってたら、ドゥムとダイムが青く光ったんだ。巻貝も、青くなってて」


「青く、光った……?」ユウトは目を細めて繰り返した。そんな話は聞いたことがない。


 そしてカフは、どこか恥ずかしそうに繰り返す。「それで、俺……家から逃げたんだ」


「逃げたぁ!?」ユウトは大声を出した。


「お前、なんだよその言い方。お前が掛けた呪いで青くなったんだろ。シャシンで呪い掛けたんだ!」


「だから、まだ言ってんのか。知らねぇっつってんだろ」


「なんでお前が知らねぇんだよ。嘘つくなよ」


 ミスペンが再び割って入る。「もうそこまでにしとけ。メロン、続きは?」


「怖かったから、俺、森の中に逃げたんだ。でも、後で心配になって家に戻ったら……ドゥムとダイムもいなかった。巻貝も、消えてた」


 この発言はユウトの仲間にとって、とても意外だったようだ。


「えっ……?」


「消えた?」


「ドゥムとダイムは?」ミスペンが訊く。


「知らない。どうなったかなんて知らない。お前が一番知ってんだろ、ユウト」


「あんたが呪いを掛けたのよ」カマキリが続く。


「あのさ……」ユウトが答える。「それってつまり、巻貝使ったってことじゃない?」


「いいや! それは全部嘘だったんだ。ユウトの罠だ! 写真を撮って呪いを掛けたからだ!」


「このメロンとカマキリ、さっきから呪いとかずっと言ってるけど、何?」


「ユウトが呪いを掛けるって……意味がわかんないよね」


「こいつ、レサニーグでもずっとこんなこと言ってたんだよ。ふざけんなよな、誰が信じるんだよ」


 このユウトの言葉も聞かず、カフは家の中の面々に向かって勝手な主張を始める。


「ユウト、お前が持ってるスマホ! あれで写真を撮られたら、呪われて青く光って死ぬんだ!」


「やだ! そんな怖い人だったの!? 信じらんない!」


 カマキリは事前に示し合わせたかのようにカフを援護した。


 ボノリー、クイ、テテは互いに顔を見合わせ、カフについて話している。


「何? のろいって何?」


「さぁ」


「あのメロン、意味わかんないこと言ってるよね」


 彼らに向かってカフは主張した。「おいお前ら、聞けよ。ユウトの言うことばっか聞いてたら死ぬぞ!」


「えーっ! 意外!」ボノリーは飛び上がった。


「こら、信じないの。ったく、ユウトっておかしなのに目つけられるよね」


「こいつ、マジどうかしてんだよ」ユウトは恨みのこもった目で彼らに伝える。「レサニーグではもうちょっとまともな奴だったんだけど……急に変になったんだよな」


 ユウトの言葉にカフは感情的に反応した。


「どうかしてる!? 違う。どうかしてるのはお前だ、ユウト。お前の罠に決まってる。別の世界とか、お前が言ってたこと、全部嘘なんだろ? ユウト。お前は俺達をハメたくて、あんな嘘までついて巻貝を部屋に置いて、シュケリにも情報を流して……全部、お前が仕組んだんだろ? 本当のこと、言えよ」


 カマキリもそれに続いた。「あなた、それでカフも殺すつもりだったのね? 許せない!」


 レサニーグの時と同じだ。理屈も何もない強引な主張だが、何度も繰り返し言うことで、純粋なこの世界の住人は、少数ではあるが、カフの言うことが正しいのではないかと信じ始めている。


「ん? えっ? ユウトって何? 悪い奴?」


「ああ……ユウトさん……」パフィオは涙目になっている。


「いやいや、こんな奴の言うこと信じちゃ駄目よ」


「はい。ユウトさんが正しいと思います」


 パフィオは席を立ち、ユウトのすぐそばまで来た。


「本当ですか? ユウトさん」


「いや、パフィオさん……あの……」


「ユウトさんを信じてもいいんですか?」


 つぶらな瞳でまっすぐに見つめてくるパフィオ。ユウトは一瞬彼女と目が合ってしまい、思わず逸らす。緊張でそれ以上何も言えなかった。


「ユウト、なんで黙るの?」クイが言った。


「おいユウト! やましいことがあるから黙るんだよな!?」カフはまくし立てた。


「最低ー!」カマキリも大声で責める。


 テテも、少し困ったようにユウトに言った。「ちょっとユウト。何、黙ってんの。あんた、悪い奴じゃないんでしょ?」


「そっ、いや、そりゃ、俺は……」


「どうしてそんな喋り方なんですか?」


「あっ……えーと……」


「ユウト、なんか言ってよ」


 言いたいのはやまやまなのだが、パフィオが目の前にいるとどうしても喋れない。まったく情けない、こんな時なのに。


 ミスペンもユウトのそばまで歩いてきた。


「ユウト。ちゃんと喋れ」ミスペンはいつになく強い口調で伝えた。「パフィオに照れてる場合じゃない。メロンが言ってることがおかしいなら、そう言え」


 ミスペンに背中を押されてユウトは、なんとかカフのイメージを落とそうと思った。


「あの……みんな、カフの言うこと、信じないで下さい。このメロン、アホなんです。戦場にひとりで突っ込んで、勝手に怪我して仲間に回復してもらっときながら、分け前が少ないとかって文句を言うような、クソ痛い奴です」


「カフ、そんなことやってたの?」


「そっ……それは、関係ないだろ! ていうか忘れろよ! 俺のその恥ずかしい失敗! そういうとこも性格悪いぞ!」


「そうよ! あなたは性格悪いわ!」


 これは意外な返しで、ユウトは面食らってしまった。


「性格悪いから、何? 何が言いたいわけ?」テテが代わりに反論してくれる。


「悪いったら悪いんだ。だから、ユウトが殺したんだ!」


「うーん、ユウトって性格悪いのかなぁ。確かにアキーリのみんなは、ユウトが人殺ししたって言ってたけど……」


「そうだよ! それが正しいんだ!」


「やめて。何言ってんの? どうかしてるでしょ」


「だって性格悪いんだから、殺すぐらいやるだろ?」


「そうよ!」


 ユウトがカフの個人攻撃に切り替えたのを利用し、カフとアクリスは逆に話題の焦点を性格に置き換えた上で反撃してきた。ユウトは怒りやなんやで脳がパニックを起こしたようになって、何も考えられなくなった。


 実は、彼は矢掛に生まれ育った19年間で、『性格が悪い』と言われたことは一度もなかった。なので、異世界に来て早々罪を着せ、村から追い出した、絶対に性格が悪いはずのメロンにその言葉を言われるとは思っていなかったのだ。


 ドーペントがカフの前に出てくる。


「カフさん」


「ん、なんだよカエル」


「どこかに行ってください。二度と、ユウトさんの悪口を言わないで下さい」


「あぁ……?」


「何、あなたは。あなたこそどっか行って!」アクリスはカフの後ろからヒステリックに言い返した。


 これに対して、ドーペントはいつになく厳しい口調で対する。


「勝手なことばっかり言わないで下さい。ユウトさんはすごい冒険者です。ずっとここにいるみんなを守ってきました。いい人だし、優しいです。どうして変なことばっかり言うんですか?」


 これにテテも続く。


「そうだよ。何が目的? 本当にムカつく。ユウトはあたいの仲間だから、変なことばっか言ってたら許さないよ」


 この状況で、クイが余計なことを言う。


「でも、なんか、僕はちょっとこのメロンの言うことも正しいのかなーって思えてきたんだけど」


 それがカフを調子づかせてしまった。


「そうだろ! お前、わかってるな。やっと気づいてくれたんだな」


「何してんの、クイ!」


「だって、ユウト、パフィオが近くに来たら黙っちゃうし。嘘ついてんのかなって……」


「そりゃ、パフィオに緊張してるからでしょ」


「どうしてなんですか? 緊張しなくていいですよ」


 パフィオは、またつぶらな瞳でユウトを見つめる。ユウトは赤面し、土の床を見たまま黙ってしまう。


「ほら、ユウト。なんで黙るの?」クイは翼を広げた。


「ちょっと、パフィオ……あんたがそこにいるとユウトが喋れないでしょ」


「どうしたんですか? わたしがいたら、どうして喋らないんですか?」


 ミスペンはそこに現れ、パフィオの手を優しく取った。


「パフィオ、少しあっちに行こう」


「えっ、どうしてですか?」


「ユウトは、カフと話がしたいんだ。そうだろう?」


「はい」ユウトはミスペンに感謝しながら答える。


「お前ら!」そこにいる者達にカフは呼びかける。「みんなユウトとは別れたほうがいいぞ。こいつはまた、仲間を殺すぞ! 誰だって殺すんだ、こいつは!」


「やめろ」ユウトはこのカフの言葉で、いよいよ立ち上がった。カフのところまで歩いていく。


「おっ……なんだ、お前」


「お前マジ、なんなんだよ。何がしたいんだ?」


「何がしたいって? そりゃ……ドゥムもダイムもいないし、お前が全部やったんだろ!」


「やってねーっつってんだろ。なんだお前? じゃあいいよ、カフ。そんなに俺を人殺しにしたいのか。だったら本当に、その通りにしてやろうか。どうせ否定したって、お前は一生言い続ける気なんだろ? 俺のほうが強いって、わかってやってんだろうな?」


 カフは震え上がったが、構わずユウトは剣を鞘から抜いた。カマキリは悲鳴を上げながら壁際に逃げていく。


「ユウトさん! やめて下さい!」


「ユウト、駄目!」


「駄目です! ユウトさん!」


 パフィオはユウトの前に立ちはだかる。彼女は涙を流していた。


 ユウトはパフィオに何か答えようと思った。照れていても、それでも初めて彼女にはっきり『すいません』と言おうとしたのだ。


 だが、無理だった。


 声が一切出てこない。それどころか、口を開こうとしても開かない。手も足も動かない。身体が完全に硬直していた。その状態に驚いて表情を変えようとしても動かないし、声も出ない。自分の身体が自分のものでなくなったような感覚に混乱を覚えながらも、彼はその原因に察しがついていた。


 そして彼は自分の意思とは一切関係なく、剣を鞘に収めた。向きを変え、ゆっくり席に歩いて戻り、座った。首が90°回る。目の前に、自分へ手のひらを向けてくるミスペンがいた。


 やはり、そうだ。精神操作を受けたらしい。


「一旦落ち着け」


 ミスペンがユウトの目を直視して言った。ミスペンはかつて見たことがないほど険しい顔をしていた。いつも温和な彼が本気で怒っているような気がして、ユウトは内心焦った。


 自分の身が安全になったと思ったのか、カフは急いで席を立ち、家の出口に向かって走ろうとした。だが、今度はミスペンはカフの背中に手のひらを向ける。カフの動きが止まり、くるっと向きを変え、てへ戻って来る。


「なっ……なんだよ! 身体が、勝手に動く……なんでだよ! 俺、俺……死にたくねーよ! 助けてくれぇー!!」


 カフは泣きながら、トコトコと元の位置へ帰ってきた。


「死なずに済むようにしてやるから、まずまともに会話をしろ」


「してるだろ……っ!」


 発言の最後に、カフは息を呑むようにして止めた。とても苦しそうな顔をしている。


「カフ、どうしたの!?」カマキリは壁際から、カフのそばへ戻ってきた。


 カフは苦しそうな顔のまま口をパクパク開閉させるが、声は一切出ない。


「カマキリのお嬢さん」ミスペンはアクリスに言う。「君の仲間は、今は黙ってもらうことにした。心配しなくていい、今だけだ」


「えっ、ど、どういうこと! カフに何をする気!?」


「私は何があったのかを知りたいだけだ。そのためには、今は黙ってもらうしかない。君も騒ぐか逃げるかするつもりなら、彼と同じ目に遭うぞ。何も言わず、そこに座ってればそれ以上何もしない」


 カマキリは肝を潰したのか、ミスペンが手をかざしていないのに、一切動くことも喋ることもしなくなった。


 そして、ミスペンは「おい、ユウト」と、この問題のもうひとりの当事者の名を呼ぶ。ユウトは声を出さず、代わりに瞬きで返事した。


「喋っていい」


「あっ、はい」ユウトは声を出せた。試しに手を動かすと、元通り完全に動かせる。足も首も、表情も。いつの間にか、ミスペンはユウトに掛けた精神操作を解いていたらしい。


「何が起きたか、一から説明しろ。正直に。でないと我々も、お前のことを助けようがない」


「……すいません」


「気にするな」


「どうなってんの? ユウト、どうしちゃった?」クイが首を傾げている。


「んー? 結局ユウトは草か木かどっち?」ボノリーは寝そうだ。


「どっちでもいいでしょ。黙っといて」テテがしっかり突っ込む。


「僕はユウトさんのことを信じます。何があっても」カエルだが、ドーペントの目は真剣に見えた。


「ああ……うん」


 ユウトは、彼ら仲間のことをどこまで信じていいのかと、少し心が揺れていた。すると、彼の目の前にパフィオが出てくる。


「わたしも信じたいです。でも、もしユウトさんが悪い人だったら……ああ……ユウトさん、ユウトさんは悪いことしてないって、言ってください」


「えっ、は……い……」ユウトは答えたが、誰にも聞こえないくらい小さい声だった。


「なんで何も言わないんだよ、ユウト! 悪いことしてないんだろー!」クイがジャンプする。


「クイ、黙って」テテが止めてくれる。


「え! 僕、邪魔? なんで?」


「呪いって何?」ボノリーも言った。


「ボノリーも黙って」


「んんー? 草か木かでいったらどっちかって話してんじゃないの?」


 ユウトはそんな話をしている面々を改めて見渡した。真実を話したところで本当に彼らが味方をしてくれるのかはわからない。それでも、仲間の多くは耳を傾けてくれている。あのターニャですら、多少は興味を持っているように見えた。


「じゃあ、何があったか最初から話します」

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