第6話 冒険者という者達
翌朝。
ユウトは昨日出会った冒険者達に誘われ、陽光の下、魔獣はびこる草原にいた。
「失せろ。クヴァール・グラーヴォイ」
昨日酒場で会った愛想の悪い紫色のイカ、ダイムは4本の中華包丁を素早く振るい、四つ目の狼に無数の傷を刻んだ。
狼は断末魔すらあげられず、倒れて魔晶に変わった。
遠くからなおもルーポの群れは迫ってくるが、彼は落ち着いて対応する。
「ドゥー・グラーヴォイ」
不思議な掛け声とともにダイムは中華包丁でリズミカルにルーポを仕留める。
敵が何匹いようと関係なく、彼の振り乱す中華包丁が襲い来るルーポを次々と魔晶に変えていった。
別の場所では、突進してくるルーポの群れをレドが先頭に立って受け止めていた。
彼女の武器は、長い柄の先端に横向きに三角形の金具がついた『三角ホー』と呼ばれる農具。
「チェシーギ・インヴァードン!」
レドが三角ホーを前面に槍のようにまっすぐ構えて唱えると、前面に白くモコモコした雲のような壁が発生する。
外見に似合わずこれがなかなかの硬度。ルーポの牙では傷一つつかない。
「アッハハ、残念。効かないよ!」
レドは余裕の笑みだ。
ルーポの群れは雲のような壁を迂回し、横からレドを狙おうとするが、彼女は三角ホーを細かく振り、現れたルーポを各個撃破していく。
しかし敵の数は多く、だんだんと距離を詰められ、後退を強いられる。
自ら築いたモコモコの壁からじりじりと下がりつつ、彼女は仲間に助けを求める。
「ねえ、ちょっとひとりじゃキツいかも! 誰かいない!?」
その直後、レドの前のルーポの群れが一瞬で消滅した。
消えた敵がいたところには魔晶が転がり、そのそばの地面には小さな銀色のナイフが刺さっていた。
「おっ! エルタ?」
名を呼んだかと思えば、レドの姿が一瞬、暗くなる。バサバサと羽音がして、彼女の上を黒い鳥が通過していく。
「エルタ! さっすが!」
レドは空を見上げた。すると黒い鳥のエルタが向きを変え、レドのほうへ戻って来る。
「あとは私が仕留める」
「やっちゃって!」
「トゥロポスフェーロ!」
レドの周囲にいる他の敵を、エルタが空から狙う。どこにしまっていたのか、何本もの短剣を両翼で器用に投げつける。
順調に敵の数は減っていくが、そこにメロンのカフが近づいてきた。
「ペーザ・タークトォ!」
カフは短い腕で敵陣に切り込みながら、両手に一本ずつ持つ小さなハンマーを振り回していた。ルーポの群れに突進し、体当たりしながら殴り飛ばす。
「ペーザ・タークトォ! オラオラオラァ!」
体当たりとハンマーでルーポを蹴散らすが、彼は明らかに調子に乗っていた。
ひたすらハンマーを振って、レドを襲っていたルーポの群れの中へ飛び込んでいく。
「カフ! 前に出すぎよ!」
エルタの注意も聞かず、ひたすら突進を続けるカフ。やがて息切れしてきた。
「はぁ、はぁ……」
立ち止まったカフはルーポの群れのド真ん中で、前後左右を敵に囲まれる。
「ウゥゥ……!」
カフは四方から狼の唸り声を聞いた。
「うわあぁ! なっ、なんだよお前らー!」
声を上げるしかできないカフ。狼の牙がメロンを一斉に襲う。乱雑に皮が破られ、薄緑色の果肉が露出していく。
「助けてくれぇー!!」
「もう、カフ!」
「世話の焼ける奴だな、いつもこうだよ」
遠くからその様子を見ていたドゥムはしっかり狙いをつけ、一声発する。
「パーフ・トゥララ・プルーヴォ!!」
掛け声とともに、空に向かって次々と矢が放たれた。
ドゥムの放った矢はカフを取り囲むルーポに見事な精度で当たり、カフの周りは魔晶だらけになった。果肉剥き出しのメロンが大地に残された。
そして、ワニのバースが杖を両手で持ち、真上に高く掲げる。
「活力の光、天より降り注ぎすべてを復さん。マルファーリ・チーオン」
柔らかい光が空からのスポットライトのようにカフを照らした。狼にかじられ、傷だらけになったカフの身体が少しずつ元に戻っていく。
まさに命を救われた喜びで幸せな笑みを浮かべて草原に寝そべるカフに、レドが走っていく。
「こーら、何してんの! いっつも同じことやって!」
レドはカフの頭頂部から突き出たT字型の部分――もしカフが見た目通りメロンだとすれば、正式には『果梗』と呼ばれる部位――の端っこを軽く平手で数回はたいた。
「オレ、しばらく動けねーわ……」
カフの笑顔は変わらなかった。
「もう! しっかりしてよ!」
メロンとトウモロコシのツーショットを遠巻きに見ながら、ユウトはボーッと突っ立っていた。
もし食卓に母が出してきた皿に、メロンとトウモロコシが一緒に並んでたら絶対文句言うだろうな……とか思いながら。
レドという少女を見つめる。昨日ウィンナーだと思っていた彼女の正体は、どうやらトウモロコシだったらしい。
青紫色の灯りではなく、日光の下ならレドの姿の謎も一目瞭然。
小判型の模様は黄色い実の粒、服は緑色の葉っぱだったわけだ。
トウモロコシであっても、美しい金髪を風になびかせながら武器を振るう姿は立派な戦士だ。
そしてユウトは他のメンバーを順々に見ていく。
暗器使いの七面鳥エルタ、4本の中華包丁を振るうイカのダイム、回復役のワニのバース、弓の名手ドゥム。
足手まといのカフを別にすれば、どれも戦士や魔法使いとして申し分がない。あんな外見なのに。
そして彼らが技や魔法を使う時に発している言葉は一体なんなのだろう。耳なじみのない言葉ばかりだ。
「これ、夢じゃねぇよな?」
どうすべきかもわからず一言つぶやいて、ユウトは右手に視線をやる。
ここに来る前、彼はイカのダイムから古い中華包丁を借りていた。
ダイムがいつからかも本人が覚えていないくらい長く家に置きっぱなしにしていた武器で、若干サビており、刃こぼれが数か所ある。
あとは昨日もらった大きな肩掛けカバン。革か何かでできており、古くてホコリの匂いがする。
戦うための装備はそれだけで、服はこの世界に来た時の、血がべったりついた恰好のまま。
防具はこれからユウトが魔獣を自力で討伐して揃えるという話になっていた。
しかし、このままでは先輩が強すぎて、お下がりの包丁の威力を試す機会すらなさそうだ。
なぜ俺はこんな連中と一緒に、RPGみたいな冒険に来てるんだろう――そんな違和感が彼の中でぐるぐると渦巻いていた。
ゲームの世界に入りたいと思ったことはあるが、望んでいた光景とは微妙に違う。
どうせなら人間と一緒がよかったし、自分と同等か、少し強いくらいの仲間と一緒に肩を並べて戦いたかったのだ。
彼らを見ていて、かつての嫌な記憶が思い出された。
中学、高校とソフトテニス部にいたが6年間補欠で、試合に滅多に出られなかったのだ。
出場しても勝てないし、いつも球拾いばかりしていたあの頃。
辞めるな、休むなという先輩の圧力があったとはいえ、続けたい明確な理由もなく、だらだらと球拾いする日々を送っていた。
このままでは当時の状況が繰り返されてしまうだろう。
いずれあの先輩6人も態度が冷たくなり、顎で使ってくるようになるのだろうか。
だが、それを打開する方法は、いざこの場面に立たされたらまったくわからない。
ユウトは現実逃避するようにズボンのポケットからスマホを出し、カメラアプリを起動する。
先輩冒険者を画角に収め、音量ボタンを押す。カシャッと音が鳴り、写真が一枚撮れた。
スマホの液晶には眼前の光景がすべて、そのまま映し出されていた。
ヘンテコな冒険者も黒くて気味の悪い魔獣も、地面に転がる魔晶も。
空、雲、山、野原という自然そのままの大地も。
機械を通すとこの奇妙で滑稽なモノ達は見えないのではと薄々恐れていたユウトだが、画面に記録された戦いの瞬間は、これらが幻でなく現実なのだと冷静に物語っているように思えた。
しかし、現実のようにはっきりした夢なのではという疑いからも未だ自由にはなれない。
結局どっちなのだろうと思いながら写真を眺めていると、何か足りないことに気づく。写真には冒険者が5人しか映っていない。
画角の外にいるのは誰だと思ったら、まさにその人物が低い、ドスの利いた声で話しかけてくる。
「何をやってる」
振り向くと、イカのダイムだ。身長の大部分が頭部である彼は、地上付近にある大きな、頑固そうな目でユウトを見上げている。
「ああ、ごめん」
ユウトは慌ててスマホをポケットにしまった。
「今、持ってた物はなんだ?」
指摘されて、ユウトはスマホをズボンのポケットから出す。ダイムはそれを、もし彼が人間なら確実に眉間のしわが寄っているであろうしかめ面で見上げて言った。
「なんだこれは? 魔晶ではないな」
ユウトはスマホを取り出しただけで、画面をダイムに向けていないので、目が地面近くにあるダイムは画面を見ることができない。
彼はきっと、ただの黒い塊だと思っているのだろう。
「スマホ……っていうんだ」
ユウトは怒られるのではと少し怯え、視線を逸らしつつ答えたが、ユウトの不安は幸運にも的中しなかったようだ。
「フン、まあいい。新手が来た。しっかりやれよ」
ダイムが中華包丁を持っていない6本の足のうち1本を使い、ある方向を指す。
見ると遠くから数十体の熊のような魔獣の群れが広範囲に、まるで壁のように迫ってきていた。
「うわ……!」ユウトは目を見開く。
「怖がるな。あいつらはウールソ。ルーポよりは強いが、お前なら敵じゃないはずだ」
その言葉を残し、返事は聞かずダイムは群れの中央へと突っ走った。4本の中華包丁を振り回して斬りかかる。
「ディスバーティ・カイ・ディジーギ!」
ダイムが先ほど使っていなかった技を繰り出す。
長い足を使い、4本の中華包丁を目にも留まらぬ速度で振って、一度の技で大勢の熊を豪快になぎ倒した。
ダイムが強いだけかも知れないが、しかし確かに、ウールソは外見ほどには強くないように見える。
ユウトは写真を撮ろうか迷ったが、それどころではなさそうだ。スマホをポケットにしまうと、他の5人が彼の近くに集まってくる。
「ユウト、どうした? 怖いか?」
ドゥムが笑いかけてくる。いや、アライグマなので顔はわからないが、多分笑いかけてきているのだろうとユウトは思った。
「えっ、いや……」
「あー! ダイム、もう行っちゃってるよ」
レドが言った。
「あいつは独りでも大丈夫よ」
エルタは少し呆れた様子だ。
「よっし、もういっちょ気合い入れて、行くぞみんな!」
ドゥムが仲間に気合いを入れる。
「おーっ!」
皆がそれに応え、先ほどと同様、カフが真っ先に敵陣へ切り込む。
ダイムがそれに続き、エルタも彼らの上空を飛んで敵に短剣を投げつける。
誰かがユウトの背中をぽんぽんと叩いた。振り向くと、レドが微笑みかけてくる。
「強いんでしょ? しっかり戦ってよ」
「あ、ああ……」
ユウトが答えると、レドも敵に向かった。ユウトはまた、後方に取り残された。
先輩冒険者6人が技を使う声が草原に響き渡る。
「パーフ・トゥララ・プルーヴォ!」
「チェシーギ・インヴァードン!」
「トゥロポスフェーロ!」
ただやられるために出てきた的かのように、ウールソが次々と倒されていく。
やはりルーポとそれほど強さは変わらないようだ。
さて、どうすべきかとユウトは考える。さすがにこれ以上突っ立っているわけにはいかない。
先輩冒険者は敵の群れのうち、ユウトから見て右半分との戦いに集中しており、左半分は空いていた。
ユウトは、必然的にその空いている左半分を担うことになる。
ウールソは2mほどの筋骨隆々の体躯に加え、目はつり上がり、口からは4本の牙がのぞいている。
外見だけならとても人間にはかなわない相手に思えるが、先輩の戦いを見る限り、そしてダイムの言葉を信じるなら、さして強くはないらしい。
本当にかなうのか。だが、尻込みしている暇はない。敵は躊躇なく迫ってくる。
「ングウォアァー!」
ウールソと呼ばれる熊が3匹、低い唸り声を上げながら、両手を振り上げユウトに襲い来る。
ユウトの心臓がさらに高鳴り、息が早まる。彼は己に、こう強くいい聞かせた。
『やったことはある。ゲームならもっとでかい敵を山ほど倒してきたんだ。こいつらは弱い。噛まれようが引っかかれようが、俺は死なない』
彼は呼吸を整えながら、3匹のウールソのうち、中央の1匹に狙いをつける。
中華包丁をその左胸に、一息に刻み込んだ。傷は真っ黒く、血も出ない。
古い武器だけあって切れ味は鈍く、ゴツゴツと途中骨のような何かに当たる感触があった。
攻撃は十分に効果があったらしく、ウールソは「ゴアァ」と叫び怯んだ。
安心したのもつかの間、右腕から右脇腹にかけて衝撃と痛みを覚える。
右手、死角から別のウールソがユウトに引っかきを当てていた。
「んぐぅ……!」
確かに痛い。しかしあのルーポに噛まれた時と同じで、十分我慢できる。
ただ、ポケットのスマホだけが気がかりだった。幸いそのあたりに痛みはないが、後で確認しなければ。
ともかく、怖がっていられない。次の攻撃が来る前に目の前の敵を倒す。
「おらっ!」
ユウトは中華包丁を水平に払い、3匹の熊の腹に横一線の切り込みを入れる。
先ほど胸に一撃を加えたウールソが消滅し、魔晶になる。
ユウトはまた『いける』という手応えを得て、残り2匹の熊を素早く縦に1回ずつ斬り、倒した。
ユウトは敵が消え、残った魔晶を見下ろしながら、さらなる手応えを感じていた。
残りのウールソと、できるだけ一度に複数に近づかれないようにしながら戦う。
初めに一撃を食らったのは3匹を同時に相手したからで、うまく距離を取りながら素早く武器を振って各個撃破すれば、難なく対処できると気づいたからだ。
ウールソの動きは遅く、見てさえいれば腕を振り下ろし始めてからでも簡単に避けられる。
この熊はダイムの言う通り、嘘のように弱かった。
「おい、なんだよ。ヌルいぞ、お前ら」
敵に言葉が通じないとはいえ、もはやユウトには敵を挑発する余裕すらあった。
ゲームでもこんなに上手く戦えたことがないのに。本当に気持ちがいい。
右腕はズキズキと痛んだが、どうせ薬で簡単に治る傷だ。あまり気にしていなかった。
が、そのとき。
「痛ぁーっ!」
黄色い悲鳴がした。
見ると、トウモロコシのレドが苦しそうな顔で、三角ホーを両手で横に構え、盾のようにして敵の攻撃を防いでいる。
先ほどのような白いモコモコした壁は出ていなかった。
「レドー! くそっ!」
少し遠くから少年のような高い声がする。アライグマのドゥムだ。
彼はレドを弓で援護しようとしているが、そちらにもウールソが迫っており、対応に追われていた。
ワニのバースはまだカフの回復をしていて、イカのダイムは、レドにそれ以上敵が近づかないよう、さらに向こうで中華包丁を振るっていた。
七面鳥のエルタは空を飛びながら仲間を狙う敵に短剣を投げ、助けている。彼女は大声で訊いた。
「みんな! 技は使えないの!?」
「さっきの戦いで、力使い切っちまった!」
疲労の色を隠さずドゥムが答えた。
「ちょっとー! もう、限界ー!!」
レドはフラフラで倒れそうだ。
「このままでは、回復が追いつかんぞ!」
バースも必死だ。
「ユウト、聞こえるか! 余裕があるなら援護を頼む!」
遠くからダイムのリクエスト。応えなくては。
「俺が、やるか……」
ユウトは一旦落ち着いて気持ちを整えると、レドのほうへ走っていき、途中の邪魔になるウールソを次々と斬った。
「だぁぁーっ!」
そして、レドを攻撃しているウールソへ左、右とX字に交差する斬撃を浴びせる。
次にドゥム、そしてバース……先輩を襲う魔獣を倒していった。
魔晶を踏んで転びそうになりながらも、敵をまっすぐ見据え、武器を振るった。
どれだけの敵を斬ったかもわからない。
腕が疲れ、息が切れ、足がふらつきながらも中華包丁を振り回す。
敵の数が減ってきたところで、ユウトはいいことを思いついた。
目の前のウールソに狙いをつけ、中華包丁をまっすぐ突き出しながらこんな声を発する。
「電影剣!」
突きはウールソの腹にしっかり命中したが、それだけだった。
ユウトの想定では、突きと同時に電撃が発生するはずなのだが。
ならばと他の技も試してみる。
「雷光双閃!」
剣を左右、斜めに振るい、敵の熊にX字の斬撃を刻んだ。
これも、命中と同時に雷が発生するはずだと彼は思っていたが、ただの斬撃にしかならない。
ともあれ、短く、低い断末魔を残してウールソが消滅した。
試したい技は他にもあった。近くのウールソに歩いていく。
「電瞬裁破!」
まっすぐ縦に斬り下ろし、直後に左から右へ水平の薙ぎ、そして下から上に斬り上げた。それだけだ。
ウールソは倒せるが、ただの連続した斬撃でしかない。これでは技として使う意味はない。
強くなったといっても、特別な何かが使えるようになったわけではないらしい。
「デュークみたいにできねぇかな……」
つぶやきながら、口笛でも吹きたいくらい余裕で戦っていたユウト。次の敵を探そうと周囲を確かめていたら、なんと一体の敵もいない。
それだけではない。彼は今まで体験したことのない視線に気づいた。仲間が全員彼のほうを見ていたのだ。
ユウトはたった独りで大半の魔獣を退治してしまっていた。地面には足の踏み場もないほどの魔晶が転がっている。
「ユウト! すごい、すごいよ!」
「お前、でかしたな!」
「やはり、強い……」
こんなにも注目を浴びることは、彼の人生に一度たりともなかった。
戸惑いとともに、彼の心の中に『気持ちいい』という率直な感覚が芽生えた。
部活で肩身の狭い思いをしていた頃の自分と、今の自分はまったく違うという清々しい気分だ。
「はぁ……ハハハ」
照れ笑いをする以外に、ユウトは反応の仕方がわからなかった。
先輩冒険者6人はユウトに駆け寄って、彼を囲む。
「思ってた以上の強さだ」
「オレの見込み通りだな!」
「あんたの手柄みたいに言って、ほんとに!」
「しかし、ユウトの活躍は本当にすごいぞ。今日は危なかった」
離れた場所から声がする。
「おい、お前ら集まれ。回復するぞ」
バースだ。他6人は彼のもとに集まってくる。
「活力の光、天より降り注ぎすべてを復さん。マルファーリ・チーオン!」
光が天から降り注ぐ。回復魔法のおかげで、ユウトはウールソにやられた傷がきれいになくなった。
しかし明確に傷がなくなったのは彼だけだ。
レドは眉間のあたりに、白い爪の跡が残っている。服の腹のあたりにも、少しほつれたような部分がある。
「怪我、大丈夫?」
ユウトはレドに尋ねる。
「あー。このぐらいはいつものことよ! 夜には治ってるよ」
レドはけろっとしたものだった。
その横で先ほど死にかけていたように見えたカフも、皮が剥がれて薄緑の実が露出しているところが何か所もあるが、痛みなど一度も感じたことがないというくらいの清々しい表情で岩の上に座っている。
「えっ……本当に治ってる?」
ユウトがレドとカフを見て訊いた。
「あん? オレか? 回復してもらったぞ」
カフは言った。
「バースの魔法はよく効く」ダイムが答えた。「今完治してないように見えても、少しずつ傷を治してくれるからな」
「なるほど……」
その時、地面に転がっている多くの魔晶がユウトの近くでひとつに集まり、きれいな球に変わった。
ユウトは無意識にそれを拾う。群青色の宝玉が内包する紫色の炎は、魔晶よりも若干強い輝きを放っている。
おびただしい数の魔晶は激減し、20個ほどがまばらに落ちているだけだった。
「えっ、玉?」
「あれは魔晶珠だ」ドゥムが言った。
「魔晶は100個集まると、ひとつにくっついて玉に変わるんだ。それが魔晶珠っていうんだ」
「へえ……」
「ユウト、今回勝てたのはお前のおかげだ。それに入れとけ」ダイムはユウトのカバンを足の1本で示す。
「ああ、うん」
ユウトはカバンに玉を入れた。
「えーっ! ユウトばっかり! ずるいぞ!」カフが文句を言った。
「ユウトに助けられたんだから、仕方ないでしょうね」エルタが言った。
「こんなピンチ久しぶりだったけど、ユウトのおかげでなんとかなったんだから」と、レド。
「うーん、じゃあ今回は許してやるよ!」なぜかカフは上から目線だった。
「魔晶珠が欲しかったらもっと活躍しろ、カフ」と、バース。
「じゃ、私らは残ったやつを山分けってこと?」レドが言う。
「そうだな」ドゥムの言葉で、6人は地面に落ちている魔晶を分け始めた。
「どうすっかなー」と言いながらカフは勝手に魔晶を拾っていく。
「カフ、拾いすぎよ」と、エルタ。
「えっ? なんで?」
「あんた、足引っ張ったでしょ」と、レド。
「えーっ! オレはおとりになったんだぞ」
「おとりなんぞ要らんから、その分敵を倒してくれ」と言ったのは、後半ずっとカフの回復をしていたバース。