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果てなき時空のサプニス  作者: インゴランティス
第6章 悪夢
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第2話 死の気配

 3人は森を歩き始めてから、すぐ違和感に気づいた。


 いつまでもハルタスの町に着かないし、クイとパフィオの仲間も一切見つからない。のみならず、そもそも言葉を話す人物にも、魔獣にも出会わなかった。代わりに、彼らが聞いたことのない、チチチ、キーキーキー……彼らが聞いたことのない甲高い声がひっきりなしに聞こえてくる。進むにしたがって木々は密集していき、空も狭くなる。どんどん深い森の奥へ入っていくような感じがあった。


「この音って何? ずっと聞こえるよ」


「僕もちょっと気になってたんだ。不思議だよね、ハルタスって」


「えー!? あたし、こんな音聞いたことないよ」


「レドが聞いたことないの!? ここってハルタスの近くなんだよね?」


「えーっ……そうだよ?」レドは肯定しつつも、自信がなさそうだ。左右をせわしなく確かめている。


「本当にそうなんだよね?」


「だと思うけどな。結構歩いたし、もう町に入る頃だと思うけど……あれ? 感覚、おかしくなったかな? あたし、さっきまで昼寝してたから」


「森の中で昼寝してたの? 魔獣いるんじゃない?」


「いや、森じゃなくて小屋で寝てたと思うんだけどなぁ」


「小屋? この森に小屋があるの?」


「いいや、ハルタスの町の真ん中だよ」


「えーっ! 真ん中!? じゃあなんで森にいるの?」


「やっぱりおかしいよね……。小屋に入って、そこで寝た記憶はちゃんとあるのに。そもそも、町の中にいたはずだし。なんでここにいるんだろう?」


「寝ぼけてるんじゃない?」


「そんなことないよ……えっ、寝ぼけてんのかな? あたし、さっき起きた時、森の中にいたんだよね」


「じゃあ、最初から森の中で寝てたんだよ!」


「そんなはずないよ。森の中には魔獣がいっぱいいるんだから、森で寝るなんてしないよ。ハルタスの近くに出る魔獣、ちょっと強いんだから」


 ここでパフィオは空を見上げた。木々の間に紫の空、オレンジ色の雲。


「あ……さっきは青い空だったと思うんですけど」パフィオがぽつりと言った。


「あれ!」レドも見上げて気づく。「いつの間にか夕方になってる。いや、夕方の空ってこんな色だったっけ?」


「そうなんだ」クイも見上げる。「変な色だよね。こんな色の空、見たことない。雲も変な色」


「そうかな? きれいな色じゃない?」レドが言った。


「えーっ?」クイは小さく跳ねる。


「ちょっと、不吉な感じがします」パフィオがやや神妙に言った。


「パフィオもそう思うの?」


「はい。紫の空とオレンジの雲なんて……見たことがありません」


「そうか。不吉か……。みんな、気をつけよう?」レドが言ってクイが不安そうにうなずいた。


 ここでパフィオはある方向を見て「あっ!」と声を発する。


「どうしたの?」


「なんでしょう、あれは」


 パフィオは遠くを指差す。その指の先、地面に赤い楕円があった。近づくと、それは血だまり。


「血!?」


「えっ……何があったんだろう」


「あぁ、怖いです」パフィオはまた泣きそうになった。


「大丈夫だよ。あたしもクイも冒険者だから、魔獣が来てもなんとかなる」


「そうそう! 安心だよ……えっ?」クイが別の方向を見て、何かに気づいたらしい。


「また何かあった?」


「あれ……何?」クイは翼で指した。


「何? 何を見つけたの?」レドがきょろきょろする。


「あっ――」


 パフィオもそれを見つ、息を呑んだ。それは遠く、茂みの向こうに立つ木々が、巨大な獣か何かに乱暴に食い破られた光景だった。よく見ると、木々の中央には白い骨のようなものが散らばっていた。


 近づくこともなく、3人はその場で骨を観察した。


「誰か、ここで死んだのかな……」


「あぁぁ……可哀想に」パフィオはまた泣いている。


「魔獣にやられたんだ。気をつけないと」レドは表情をこわばらせている。


「木も、すごい。いっぱい折れてる……」クイは少し怯えている。


「どうしてこんなひどいことが起きるんでしょう?」パフィオは涙を拭いている。


「エクジースティかな?」クイが言った。


「エクジースティがこんなとこに!? あいつは町の近くにはいないはずだよ」レドが返す。


「じゃあ、誰がやったの?」クイは翼をバサバサ動かす。


「さあ……」


「……気をつけていきましょう」パフィオは泣くのをやめ、表情を引き締めている。


「うん。でも、きっと大丈夫だよね?」


「大丈夫! だってあたし達3人は、みんな強いんだから」

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