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説明がうざくならない程度に小出しにしつつ、また説明がないと意味不明そうな場面を増やす賽の河原がここです。
人類が超光速航行(FTL)技術を確立して多く文化や技術が急速に発展した。
宇宙開発を筆頭に、工学、軍事などの直接的に影響のある分野から惑星改変や生体改造技術などなど、その影響は多岐にわたる。
その中でももっとも偉大な技術革命を果たした分野こそ、通信技術であると断言してよいだろう。
広大な宇宙空間にある機械の体と、母星生まれ地上暮らし生まれてこのかた部屋から一歩も出た事の無い真性引きこもりの僕を繋ぐネットワーク。
大昔に統合と呼ばれる企業のお偉いさんが「通信遅延ゼロ」を宣言して以降、いまなおその有効範囲は拡大の一途を辿って2~3星系くらいカバーしてるとかなんとか。
太陽系内なんて遅延のしようもない、機械の故障と整備以外はな!
無駄に学習した無駄な知識を思い出しながら、五感に直接伝わる懐かしい(およそ30時間ぶりの)体の感触を確かめる。
フィールドを満たす歓声が集音機で弾ける。
通信遅延がないから、いつでもどこでも大盛況。
しかし見回すと半径4万メイルと言う無駄な広さ多い尽くすほどの観客は遠隔地投影が8割りくらいか、珍しく機体が多い。
そこそこ注目の試合だったのかな、競技内容は確認しているが他にはなにも見ていない目隠し突撃だったからなぁ。
と、
「おいクソチビ、お前"統合"のピエロ野郎か?」
頭上からイカしたナイス害にはなしかけらるる。
おいおいこいつ、僕を知らないとか初対面かよ恥ずかしいな。
シャイで恥ずかしがり屋で照れ屋な僕は隠れるゼあんたの後ろに。
5メイル制限ギリギリくらいの大型ユニットがこちらを訝しげに見ている。
「喋らねぇって事はホンもんか。」
いいえ違います、喋らないのではありません、発声部品を付けていないだけです。
しかし初対面さんには本物か偽物かなどわかるまい。
樹齢100年くらいありそうな極太アームで器用に頭を掻く参加番号86のエクス・フォートレスさん。
くくく、戦いは試合が始まる前から始まっておるのじゃ。
今時珍しい2脚2腕の大型は、なるほど四肢は全て足でありてであり、武装は背部に格納か。
超強そうだ。
そんな下らないことを調べていたら、聞く価値の無いMCのイカしたトークで会場は最高潮。
そろそろ開幕メインステージ、エクなんちゃらさんからはなれて転送に備える。
本日のメニューは生き残りバトルロワイヤル。
95機のユニットと、気まぐれで増える企業の"試作型無人大型兵器食い放題早い者勝ち"だ。
競技場内転送が発動する。
青白い光が沸き上がると同時に浮遊感を得て、控え室から競技場内に落下する。
これも超光速航行(FTL)技術の応用なのだろうか。
超大型発電機の問題さえなければウチでも使うんだけどなぁ、カッコいいし。
着地と同時に各センサーを立ち上げながら、武装を整える。
座標は、壁際!!
フィールドは岩山!!
企業側有利すぎて笑うわ。
いつもの「試作機の走破性能を~」どうたらこうたら言う奴だろ、これ。
そして周囲に敵がいない。
いじめだ、いじめだコレ!!
職権の乱用、いったいどうしてこんな意地の悪いことを!
また次も多量申請をして、この醜い争いを継続する決意を"親友"に頼んで通達していただきながら。
近づいてくる敵の反応を睨んだ。
なんらか静穏機能を使いつつ、こんな序盤にこんなごつごつ岩影アイランドに逃げ込んでくるとは。
機体には存在しない口が嗜虐の形に歪んでいるのがわかる。
生き残り戦において、初手かくれんぼは悪くない。
悪くない、選択は悪くはなかった。
が、ただ運だけが最悪だ。
偽装迷彩を解除してわざとらしく音を発てる。
脚部に蹴られた石ころが弾ける音。
たいした音ではないが挨拶には十分、メインカメラと思われる頭部が跳ね上がりこちらを視認する。
「クソっ! パントマイムっ!」
律儀に声を出しながら、砲身をこちらに向ける。
つまりは実況プレイヤーさんだな、たぶん。
小細工なしの速攻で懐に潜り込みこちらはゼロ距離。
落下と機体の運動性能が合わされば、相手の視覚センサーを振りきるなど容易。
機体の中心部へ容赦無く銃撃を押し付けた。
「えっ、ごぁぁあalsojdjp%@--」
中々酷い断末魔を撒き散らしながら胴体が寸断されて砕け散る。
我が愛銃「なめプ撲滅浄化砲」の見事な破砕貫通力に興奮する。
動力機関部から逝ったので動画配信も終了、サムネイルは一瞬写った僕の姿にしとけよな!
実況とか言うハンデ外してまたやろうな!!
まあ、この壊れっぷりだと再製造までしばらくかかりそうだけど、ははは。
遊んでないで次探すかな。
目指すは撃破機体数最多で優勝だ。
盛り上がってキタなぁ!!