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機械の繭を思わせるユニット型パーソナル・コンピューターの中に入り込んで眠るように横になる。

と同時に外隔が閉じ内部を接続用液が満たして準備完了だ。

瞼を閉じると同時に眼前に接続完了の文字が現れ、視界が一気に開ける。






宇宙空間を漂う個人用(パーソナル)衛星拠点(ステーション)

機械の(ユニット)の動作を確かめるが遅延は一切感じない、安定だ。

僕の帰還に気付いた、オペレーターが明滅信号で反応を示す。

「おかえりなさい、神。」

可愛らしい声だが、なんの感情も感じない。

そんな事務的な音声で話すには、あんまりにもあんまりな挨拶。

知性の欠片もない挨拶だ。

今は亡き宗教の偉い人が聞いたら、戦争になるぞ。

「昨晩、神がそう呼ぶように設定されましたが。変更いたしますか?」

しかし考えてみると神などと言う空想上の概念は、

優れた知性無くして産み出されないのではなかろうか。

「一応肯定します。しかし滅んだとはいえ、無用に他者の感情を逆撫でる行動は神の望むところではなかったのではないでしょうか?」

何を聞いていたんだ、この有能オペレーターは。

戦争になるんだぞ。

有用じゃないか、それを止めるなんてとんでもない!

「かしこまりました、神。」

戦争か。

記録によれば万単位のユニット同士が衝突するらしいからな。

絶対楽しい。

「歴史的文化に致命的な勘違いが確認されます、神。」

戦争方式(ウォーゲームアトラクション)でも百単位くらいのユニット同士だから、まさしく桁違いだよね。

宗教くん、何故滅んでしまったんだ。

「古代における戦争はユニットを用いません、生身ですよ、神」


嘘だろ、僕死ぬじゃん。

「肯定します、神」

はー、思考時間の無駄したわ。

「肯定します、神」

ま、いいか。


飾り気の無い机から端末をいじり、総合情報窓を開く。

各種資源の加工生産、未探査資源の研究状況、操作中の機体(ユニット)情報(ステータス)等々。

研究が終わるまで検証端末も空かないし、開発室も使えないなぁ。

生産資源は安定だけど、研究終わるまで寝てても仕方ないし少し遊んで来るかな。

「了解です。最寄りのステーションにつけます、神」

実に有能な人工知能(オペレーター)だ。

競技場のあるところでよろしく。

あと'神'やめよ、前のやつに戻してよ。

「了解しました、くそ野郎。ハイパーレーン接続、到着まで....」

よし、到着までより良い呼称を考えようかな!




「接続完了。ジュピター'人類共和国ステーション02'入港可能です、親友。」

ありがとう、親友。

武装はいつものと、新作の泡立て器だけお願いね。

「はい。低空浮遊装置(フロート)の出力が向上しておりますので、足下に御気を付け下さい、親友。」

さっき確認したよ、安心してくれ、親友。


 背後に向けて手を振り歩く。

無人の個人基地が、明滅信号で返事をしながら入り口を閉じていく。

自分のような孤高の戦士には勿体ない優秀な人工知能に育ったなぁ。

っと、そんな下らないことより競技場だ。

参加申請を嫌がらせのように連投する。

即座に「参加受理」「仕事の邪魔すんな」のメッセージが帰ってきた。

秒間二百個の連投に、この反応速度は知ってるやつかな。

となればそこそこ良い試合が期待できるかな。



「ようこそおいでくださいましたミスタ!!」

控え室目前と行ったところで、空からダサい金属の塊が降りてくる。

空飛ぶプラチナカラーの箱、人共(ジンキョウ)の営業さんか。

色味といい、耐久性全振り的思考といい、実に格好が悪い。

モニターに写る人間は美女といって差し支えないが、僕を魅了したいならもっと素敵なユニットで来るべきだったな!

「本日も素晴らしいユニットでお越しで。自主開発でございますね?」

高速頷きで返答すると、映像(なかのひと)が「素晴らしい!!」と褒め称える。

ただの称賛なら悪くはないが、こちらのユニット解析をおこないながら言われても煽っているような気しかしない。

「ところで、前回お話しした開拓派遣の件なのですが。」

流れぶったぎれてそうな勢いで話題が変わるが、まあその件だと思っていたので構わないが。

「今回予定されている開拓ですが」

あー、話が長くなりそうだ。

お急ぎなのを伝えるときは、そうだな。

唐突に飛び上がって宙返り。

「主に山岳のひゃぁ!?」

着地、からの格闘戦の構え。

見えない敵がいるかのように、左右の拳の連携(コンビネーション)!!

を、唐突に止めて人共箱機体(プラチナボックス)を凝視。

伝われ!


「な、なるほど。お忙しいでしたか。」

やったぜ通じた。

モニターの中のひきつった笑顔が素敵だ。

「では詳細はデータでお送りしますので良ければご参加お待ちして」

言うが早いか、既に送られてきた開拓者募集の案内に対して即座に参加申請を送り返した。

「おりまー!?あ、ありがとうございます!」

何あれどうせ参加するのだ、構いやしない。

このゲームをもってして開拓に参加しないなど、あり得ないのだから。

まあ、あんまり付きまとわれてもあれだし、煩わしい。



大物ぶって人共箱機体(プラチナボックス)に手を振りながら、控え室に向かう。

もう色々限界なのだ。

下らない話で足止めしやがって。

珍しく現実でやることがあったから我慢していたけど、

もう、30時間くらい、やってないんだ。


バトルバトルバトルバトル!!


戦わせてくれ、いますぐに!

出来れば強い奴と!!

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