放置、後の…
あれ…?このまま置いて行かれた?
『シア』
…王太子様の幻聴が聞こえる。
『いや…幻聴ではないよ。』
『っえ!?王太子様…』
『シアはそろそろ私のことを名前で呼んでほしいな。』
『アーセル様…』
『そう。ねぇ…シアは私に聞きたいことがあるんだろ?』
ドキリ、とした。
いくつかのの疑問をヘリオスに解消してもらっても、これは。これだけは。
『…なぜ、私が秋の機織りで献上したマントをアーセル様が持っているのでしょう…?』
羽織らさせた王太子のマントは秋に機織りで優勝し、献上したマントだったのだ。
確かに献上した。王家に。
だからと言って王太子が使うなんて聞かなかった。
『これは本当に良い出来だよね!領地のマゼンタじいさんの技法使ったんだろう?』
ーーーー色使いはヘリオスが教えた工夫をしてるし、ほんとにシアは勤勉家だね。
『ヒェ…』
『シアの作ったものは全部知ってる。』
『ヒェェ…』
『作っている真剣な顔が可愛らしくて、つい目で追ってしまった。そこからシアが作ったものが欲しくなった。でも思ったんだ。シアがいてくれたら私のために私だけのものが手に入るんじゃないか。って。
でも、すぐに決めると色々うるさいからね。』
ーーーー貴族を黙らせるためにも王太子妃選抜をしたんだ。
えっストーカー?
あんなに推して憧れた相手はストーカー?
ぐるぐるとレティシアの頭の中がいっぱいになった。
もうキャパ越えでどうにもならない…。
『ああああああああありがとう…ございます?』
『あ、勘違いして欲しくないけど気になったのはシアがヘリオスに師事するようになってからだからね。作ったものに対する意欲と先人の知恵を吸収していくその姿勢に惚れたんだ。
シア
私と共に、後世に継ぐ技術と作品をともに紡ぎ、作っていってくれないか?』
ずるい。
これは、この国だけのプロポーズである。
ゲームのスチルでもない。
本気で言ってる。
これに返す言葉はイエスかノーだ。
『私の…
拙い技術ではありますが、日々あなたと研鑽を重ね、共に愛を育み、良き作品を作って行きたいと思います。』