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謁見室にて

露骨ではないにしてもショッキングな表現になってしまったかもしれません。

ご容赦ください。

移動先は謁見室だった。

王が貴族との日々の政務を執り行う部屋である。


最初の人数以上の人がいた。


レティシアの両親、男爵令嬢の両親、今回の王太子妃選抜の参加者5名とその家族。あとは対立派閥の筆頭貴族もいた。


その中で群を抜いて多いのは筆頭針子のヘリオスと同じ格好をした針子達である。約100人。



基本針子は王城に務めるのが通例となっており、

王の許可を得て針子に縫ってもらうのが慣例である。


かつての権力者が抱えていた針子を全て各貴族に下ろしたところ、虐待、勤務時間無視、休みなし、給金なしと奴隷のような生活をさせて一時期針子を三分の一にまで減らしたことがあった。


それ以来、針子は王城に抱えられ、福利厚生、休日、シフトなどを厳密に管理されて暮らすこととなった。



ゲームでは出てこない設定ではあるが、この国では王族よりも大事にされていると思う。



この国では全てをこなせるものは少ない。

刺繍のみ、機織りのみ、など色々なジャンルに特化していると言う者が多いのだ。

針子はその中でも特別。全てにおいて特化しているのである。


筆頭針子なんか田舎の小さな染色すら知ってると言う末恐ろしい人物である。




『ーーーーでは、ご説明させていただきます。』


筆頭針子はドス黒いオーラを放ちながら話し始めた。



『王太子妃選抜の直前まで男爵令嬢には資格はございませんでした。

しかし、ゲラルド公爵、スペンサー伯爵、ロンド侯爵の教育、三貴族推薦がありましたので選抜に入ることとなりました。』


名指しされた三貴族は鼻高々にしていた。

針子からの視線は痛いが…


『男爵令嬢はなかなか良い作品を出すことがありました。が、私共は気づいたのです。

選抜選考のころ、生家に帰ったまま帰らなくなった針子の作品に手が似ている。と。』

ーーー私共は急ぎ密偵をお願いし、生家に行ったと言う針子を追いましたが生家にも帰っておらず、ロンド侯爵領内で消息が途絶えました。


密偵のうち3人が何者かに殺されました。




ざわざわとし始めた。この件は他の針子は知らなかったのだろう。


『そして先日、行方不明の針子を発見いたしました。』

ーーーー死体となって。


悲鳴と共に針子の数名が泣き始めた。中には気絶した者もいるようだ。


『そして彼女は私たち針子にしかわからない方法で、犯人を伝えてくれました。』


そう言うと、白い布をかけた大きな箱を持ってきた兵士が白い布を取り払うと



あざだらけの顔、青くどす黒くなった上半身。

控えていた針子が少々変わった色の蝋燭を持ち、光を当ててもらうよう頼むとあざだらけの腕に反射するように文字が浮かび上がってきた


ゲらルド、すぺンサ、ロンど、あマリエ

私を、コろしたやつをユるサナイ


名前ははっきりと写っていた。

服の破れ具合からもおそらく強姦の疑いもあるのだろう。


『殺人の犯人も捕まえました。』





『うそよ!でっち上げだわ!』


後ろ手に縛られた男爵令嬢は青い顔をして叫んだ。


『私が自分で課題をこなしたわ!侍女だっているもの!見ていたはずよ!』


『ご自身お抱えの侍女のみの報告ですよね、最終選抜で辞された侍女は先日遺体となったものと顔が同じと門番兵の供述もとれております。』

ーーーーそして、侍女が王城から辞する時はスペンサー伯爵がご一緒だったことも。



男爵令嬢、大丈夫ですよ。それで文句があればもう一度同じ課題をやればいいだけなんですから。



そう言ってにこやかに笑っているがヘリオスは怒っている。そうレティシアは感じた。



『私共は針子としての矜持があります。

そしてお互いを支え合うために寝食を共にし、高めあい生きてまいりました。


皇太子妃になりたいがために他人を犠牲にして得た椅子は素晴らしいものですか?


紡ぐ糸は信頼を

刺す想いは愛を

縫い付けた気持ちは変わることなくそこにありますか?』



ハッとした。ヘリオスの最後の言葉はゲームの冒頭だ。



男爵令嬢も気付いたのだろう。


『あんた…転生者なのね…!』


『テンセーシャ?なんですかそれ。』


『とぼけないで!あんたもドレメのゲーム知ってんでしょ?』


『あいにく音楽には疎いもので、ドレミは知ってますが、ゲームとは?』

まさか、王太子妃選抜をゲームと思い込んでらっしゃるの?


ヘリオスは怒髪天を衝く勢いである。


『ゲームだと思って人を殺してもなんとも思わないのですね…』

ーーーー王様、申し訳ございません。私はもう何も言えません。

証拠全てアンドルー様にお渡ししております。


以下全ての証拠を精査した上での御判決、お願いいたします。


素晴らしいカーテシーをつくり、針子たちの元へ向かった筆頭針子は仲間達と涙を流し、もう目を覚さない針子を撫でると

堰を切ったように泣き始めた。

他の針子達も泣いている。




王の采配で他の貴族達は謁見室から出され、中は針子達だけの涙の別れをするための場になった。


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