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4.圧倒的な力

『バーグラードの森』は、ミントが活動する王都『エルファン』から、馬車で半日ほどのところにある。

 そこにはかつて、人々が開拓したことで真っ直ぐ進める道があった。使われなくなってから久しいためか、道という道には植物が生えて埋もれてしまっているが。

 その奥地に、利用されなくなった炭鉱がある。『魔道具』などに利用される『魔石』を発掘するために作られたものだが、すでに廃れて今は人の出入りはない。

 楕円形に掘られた大穴の壁に沿って、いくつか足場が作られている。

 さらに小穴がいくつか掘られ、魔石の発掘が行われていた形跡が確認できた。

 そこを『巣』としたのは蟲の魔物である『ゲル・アント』。粘着性の高い溶解液を吐き出す大型の蟻で、単独の戦闘力ははっきり言ってしまえば、それほど高くはない。

 問題は、統率力の取れた集団行動であり、すでに大勢の仲間を作り出した『ゲル・アント』が、斥候として森の外にまで何匹か侵攻を始めているほどであった。

 ミントに任されたのは、その巣の駆除と女王の討伐――まともにやり合えば、夜までかかる作業だろう。

 だが、目の前に広がる光景を見て、ミントはただ呆然としていた。


「これでぇ――二百匹目ッ!」


 ぶんっ、とアリスが思い切り剣を振るう。彼女が握るのは紅色に輝く直剣で、自らの魔力を伝達しやすい魔石によって作られている。

 たった一振りするだけで、周囲を焼き尽くす炎の刃が飛んだ。

『ゲル・アント』の硬い甲殻は刃も簡単には通さず、関節部を狙うのがセオリーなのだが、アリスの一振りは――彼らの身体を簡単に焼き切っている。

 一振りで十匹以上を討伐する、アリスの無双ぶりを見せつけられた。


「わたしはこれで、二百十五匹目」


 パキリッ、という音と共に視界に広がったのは、レーシャの作り出した巨大な氷のオブジェであった。その中に、『ゲル・アント』が氷漬けになって、数十匹という単位で封じられている。

 すでに鉱山に五つほど、同じように氷のオブジェが作り出され、一度の討伐量で言えば、軽くアリスを凌駕している。

彼女の歩いた地面は氷漬けになり、周囲にいる『ゲル・アント』の動きを止めていた。


「……これ、私いるんですかね……?」


 こんなレベルの違いを見せつけられては、ミントがそう言うのも仕方ないだろう。

 時折、巣から逃げ出そうとする『ゲル・アント』を討伐しているが、まだ指で数えるほどしかない。

 二人がここまで強くなっているとは、正直ミントは考えてもいなかった。

 確かにこのレベルの冒険者であれば、どうにかして協会側が管理したい――そう、思うのも無理はないと思う。

 この騒ぎを聞きつけてか、ようやく奥地から『女王』が姿を現す。

 そのサイズは、通常の『ゲル・アント』の十倍以上。巨大な割に、素早い動きで移動を開始するが――


「こいつが百匹分ってことでいいのよね?」

「うん、妥当だと思う」


 そんな女王の前に、二人の少女が立ち塞がった。すでに、攻撃の態勢に入っている。


「『紅蓮一刀』ッ!」

「『氷華』」


 同時に放たれた技によって、女王の身体の半分は炎に包まれ、もう半分は氷漬けにされた後――綺麗に砕け散る。

 それはほとんど瞬殺と言ってもいいくらいで、苦戦の『くの字』も感じさせないほど圧倒的なまでの勝利であった。


「やるじゃない。今の同時だったから、半分ずつってことでいいわね?」

「別にどっちでもいいよ。百匹分なんてなくたって、アリスよりわたしの方が多く倒すから」

「……へぇ、言うじゃない? あたしはまだ本気を出してないけど」

「わたしもまだ本気じゃない」


 そんな言い合いをしながらも、着々と二人は魔物を討伐していった。

 それから十分後には、来たばかりの魔物に溢れた炭鉱の姿はなく、氷のオブジェとあちこちに焼け焦げた跡が残るだけとなった。

 これが、『炎の剣姫』と『氷の魔女』と呼ばれる冒険者二人が戦った結果である。


「……二人と友達でよかったです」


 ミントはぽつりと、そんな感想を漏らした。

幼馴染はとても強いデース。

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