武器
少しリアルが忙しくなるため、投稿頻度は落ちると思います
楽しみにしてくださっている方、申し訳ありません!
片手剣:片手で扱うことができ、リーチや威力は使い手によって大きく左右される、オーソドックスながらも奥深い武器。盾や二刀流にも対応している。
両手剣:機動力は低いものの攻撃力は武器カテゴリ中でダントツの数値を誇る。
短剣:もっともリーチが短い剣であり、超近接戦を強いられる武器。しかし機動力を最大限に生かせば他を翻弄することができる。
細剣:刺突、次に薙ぎ払いに特化している、刀身が細く耐久値が低い剣。しかし防御の貫通能力は武器一であり、使い手次第では短剣使いをも超える最速のダメージレートを誇る。
棍:打撃型の中距離武器。敵の弱点への攻撃に補正がかかるが、一部攻撃スキルを使うためにHPを消費する。
大槌:打撃武器最高攻撃力を誇る。移動速度が遅く、パラメーター次第では遠心力に振り回されてしまう場合があるが、フィールド破壊を引き起こしやすいという固有能力がある。
槍:中距離型の刺突武器。棍と違い、重量はこちらのほうが重い。そのため盾を併用したカウンター攻撃を有利にするための攻撃スキルが多数存在する。
弓:二種類しかない遠距離支援型の武器。状態異常を引き起こしやすく、弓の種類によっては超遠距離射撃ができるものもある。
杖:専用のガントレットと併用してはじめて使える武器。遠距離属性攻撃に特化しているが、魔法全体での使用回数制限と回数復活までの時間があるため、杖での対人戦闘は高難易度の駆け引きになることが多い。
〇
それら9種類の武器を一通り扱ったラクは、休憩をすることにした。
三人は木の下で腰を下ろし、セロシアが振舞った紅茶片手に会話を始めた。
「それで、ラクさんは何か気になる武器あった?」
「その、重い武器はちょっと……」
「だね、お姉ちゃん短剣とかの軽い武器のほうが生き生きしてたし」
「へぇ、なら弓と杖はどうだった?」
するとラクは唸り声をあげたのち、地面に寝かせてある武器群の中にある杖を見た。
「あの杖がよくわかりませんでした。あれってどういう風に戦うものなんですか?」
「正直言って相当難易度高いよ。私だってあれは無理」
「アキレアは?」
「私は苦手。他の武器はなんだかんだ使えるけど、杖だけはさっぱりなんだよね」
上位プレイヤーであるアキレアでさえお手上げの武器。いや、アキレアだけではない。杖の使い手はプレイヤー全体で見ても10%あるかないか。
魔法を使えるというロマンはあれど、その扱いはとても初心者や中堅プレイヤーが使えるような代物ではない。
「棍以外の8種類の武器ってうのは基本的にAPを消費する攻撃、つまり剣技を主なダメージ源にしたものなんだ。だから各剣技のクールタイムを見ながら状況に応じて使用可能な剣技を用いて攻撃する。けれど棍は違う。APとは別に、ガントレットにある宝玉の数までしか魔法を使えないんだ」
セロシアは一度立ち上がって寝かせられた武器のところまで行くと、杖とガントレットを拾い上げ、それを装備して腕をラクに見せた。
彼女のつけているガントレットにはめ込まれている宝玉の数は計7つ。今はそのすべてが青色の光を内部に宿している状態だ。
「魔法は剣技と違ってAPを使わない代わりに宝玉を使う。厳密には宝玉の中にあるこの光を使うんだけどね。そして魔法にはそれぞれコストと呼ばれるものがある。例えば――」
そう言ってセロシアは誰もいない方向を向くと、そちらに杖の先を向けて目を閉じた。
「宝玉開放。【フレイムショット】」
つぶやきとともに彼女の前に赤い魔法陣が浮かび上がり、そこに赤い炎の弾が形成され、発射された。
威力こそないが、それでも着弾点の地面をわずかにえぐるほどの勢いはあった。
「ってな感じでほら、【ファイアショット】を撃ったから宝玉の明かりが一つ消えてるでしょ?」
そう言ってラクに見せたガントレット、そこにある7つの内、一つの宝玉からは青い光は消え、内部は薄暗い灰色に変色していた。
「魔法にはそれぞれコストっていうのがあって、例えばさっきの【ファイアショット】はコスト1.つまりこの宝玉一つを使って発動するんだ。コストが上がれば上がるほど魔法の威力は上がって強力なものになる。けれど一気に使った宝玉は30秒に一つしか回復しない。そのあたりはソーシャルゲームのスタミナとかの概念と同じさ」
「杖自体には剣技ってあるんですか?」
「ないよ。あくまで杖は自衛用の道具だからね。防御系の固有スキルを使えるようになるぐらいだよ」
「じゃあ基本魔法による攻撃ってことですか……」
――それって明らかに難易度高いよね、ほかの武器と比べても……。
なぜそのような一つだけ段違いの難易度の武器があるのか、そしてなぜそれにはAPを消費せずにわざわざコストを使うのか。謎が謎を呼ぶ武器であると感じたラクは、結論「無理だ」ということを導き出した。
「――よし、アキレア、私決めたよ」
そして同時に、彼女別の答えも導き出した。
「決めたって、なにを?」
「私が使う武器よ」
笑みを浮かべたラクは紅茶を飲み干して立ち上がった。
歩き出した彼女の先にあるのは寝かせられた武器の数々。そこで彼女はある武器を拾い上げ、それを鞘から引き抜いた。
「私、これにする」
そう言ってアキレアとセロシアに見せるように前に突き出したのは、最短リーチの武器であり機動力に特化した【短剣】だった。