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ep4「オーダーモードの制約」

「どういうこと?」

「言葉の通りだよ。それの詳しい説明、いろいろ込みで順番にしていくね。アクセスって言ってみて」

 うなづいたラクはすぐに「アクセス」と口にすると、彼女の前に浮遊する半透明の板、つまりメニューウィンドウが表示された。それを示すように、最上部左側には【MENU】と表示されている。

 メニューに表示されている項目は上から順に、【アイテムボックス】【装備】【スキル】【クエスト/オーダー】【フレンド】【設定】【ログアウト】の7つ。

「アイテムボックスはわかるよね?」

「さすがに。手に入れたものは全部ここに入るんでしょ?」

「うん。けど初期状態だと入れられるアイテムの数は20種類で、アップグレードクエストを受けると少しづつたくさん持てるようになっていくんだよ。まぁその辺はおいおいねね」

「じゃあ今のアキレアの最大っていくつ?」

「私は50。この上もあるっていううわさはあるけど、クエストが現れる条件が分からないんだよ」

「じゃあもしかしたらもっと上があるってことか。やっぱり最大が多いほうがいいとかある?」

 ラクの問いにアキレアは唸り声をあげた。

「プレイスタイルによるかなぁ。私みたいなバトル中心の人は、消費アイテム……ああ、回復ポーションとかのお助けアイテムのことね。それをある程度持っていくけど、それでも20超えることはないかなぁ。どっちかっていうと敵のドロップアイテムで埋まる感じ」

「他のプレイスタイルの人は?」

「生産系とか店持ってるプレイヤーとかなら50あっても足りなかったりするんじゃないかな。たぶんだけど」

「やっぱりそうなるかぁ。どっちにしろ大きくしておくことに越したことはない感じか」

「だね。お姉ちゃんが戦えるようになったら一緒に行こっか」

「そうね。――ところで、このローブが結局何なの?」

 完全に脱線していた会話に、ラクは羽織るローブを撫でながら言った。

「あ、そうだった。じゃあメニューにある【装備】っていうところ押してみて」

「装備……これね」

 言われた通りにラクが【装備】を押す。すると6つの項目から成る装備リストが表示された。その他にもリストの隣にはもう一つ。こちらは4つの項目から成るものが現れた。その後者の上から二番目に、例のアイテムの名前があった。


メイン防具

 武器:なし

 頭:なし

 胴体:はじまりの装備(胴体)

 腕:はじまりの装備グローブ

 腰:はじまりの装備(多機能ベルト)

 足:はじまりの装備(皮靴)


アクセサリー

 頭:なし

 首:解導の衣

 腕:なし

 腰:なし


「まず防具だけど、頭、胴体、腕、腰、足の5つ。アクセサリは頭、首、腕、腰に装備できるんだ。このゲームは細かなステータスがない分、装備で補うしかないからとっても重要なんだ。あるのは攻撃力の【攻】、防御力の【防】、移動速度の【駆】。あとは【エクストラステータス】の4種類だよ」

「最初の三つはなんとなくわかるけど、最後のエクストラステータスって何?」

「アクセサリとかから受けるステータス補正のこと。例えば、【攻】の補正効果を持つアクセサリを付けたら、攻撃力の補正数値がこれに加算されるんだよ」

「じゃあこのローブにも?」

 ――もしかしたら外せない分いい能力があるかも……?

 だが、ラクの些細な期待を裏切るように、アキレアは首を横に振った。

「そのローブには【エクストラステータス】に加算されるステータスはないみたいだよ。だけど気候に対する補助スキル【環境対応】っていうのオート発動してるから、行き先のことを考えた衣替えをする必要がないって考えればいいかな」

「そう……なの?」

「だっていちいち防具用意する必要がないってことだからね。それだけでお金相当浮くよ」

「……なーんか素直を喜べないけど、まぁいいか」

 ラクは残っていたコーンを口放り込み立ち上がる。おじさんにお礼と感想を言ったのち、二人は再び公園の中を移動し始めた。

「それで、このローブが外せないのはなんで?」

「システム上、首のアクセサリとして固定されているみたいなんだ。だから外せないし、別のアクセサリをスロットにセットすることもできない。俗に言う一蓮托生ってやつだね」

「まとめると、オーダーモードを選んだ人はこれをずっと身に着けることになる。そしてこれがあれば環境ごとに適した装備への着替えが不要……そういうこと?」

「その通り! 理解が早くて助かるよ」

「だいたいはわかったけど、クエストとこのローブ。あと一つの違いって何?」

「ああ、それねー……」

 どこがバツが悪いかのように言ったアキレアは立ち止まり、ラクを見つめた。

 その時間は10秒、20秒と経過していき、やがて何も言わずに歩みだした。

「ちょっと?」

 そんな彼女の腕をつかんで歩みを止めるラク。

「なんで何も言わないわけ?」

 するとアキレアはラクの手を振り払い、駆けだした。

「あ、こら!!」

「今はまだ教えられないからー!!」

「じゃあなんで気になるようないい方したわけ!? ちょ、待ちなさい!」

「このままついてきて! 紹介したい人が――」

「私迷子になる自信しかなんだけど!」

 初めて来た街で一人取り残された挙句、行き先不明となると迷子になるに決まっている。

 それに気が付いたのか、ラクの声を聞いたアキレアはピタッと立ち止まり、遅れて走ってきた彼女と合流したのだった。そして合流から間髪入れずにくるデコピンがアキレアの額に直撃した。

「いったぁ~」

「内緒にした挙句置いて行こうとしないでよ、もう」

「ごめんごめん。なんかお姉ちゃんなら大丈夫って感じがしてさ」

 デコピンがヒットしたところをさすりながら笑う。

 その容姿に、ラクは苦笑してアキレアの額をさすった。

「私だって完璧じゃないし、あなたが思ってるほど優秀じゃないんだからね?」

「えへへ。ごめん」

「次から気を付けてね。冗談抜きでさまよう自信あるから」

「うん。気を付ける」

 それからは姉妹並んで公園を後に、街の西側に伸びる大通りを歩いて行った。

 

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