表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/8

プロローグ

 プロローグ


 『大陸の文明は数多の強者が抵抗したのち、彼らの敗北を期に滅亡した。

 ある者は声に怨念が込められた歌姫に敗れた。

 ある英雄は狂乱ののち味方と対峙した。

 ある者は民を守るため、自らの命と引き換えに番兵を生み出した。

 あるモノは、愛する双子を森へと置き去りにした。

 そして、人類の軌跡は月日の経過とともに自然へと飲み込まれていった。それがどのようなものであったとしても、等しく地の中、植物の中へと飲み込まれていった。

 しかし、たとえ文明が滅亡しようと再起するのが人間である。

 彼らはもっとも被害の少なかった大陸中央の都市を復興させ、生存権をゆっくりと拡大していった。そして、いくつもの街が誕生し、150年が経った頃には新たな文明が定着していた。

 ではその間、滅亡へと追い込んだ怪物はどうだったのか。

 彼らは、ある三人の命と引き換えに、そのすべてが眠りへとついたのだ。

 だからこそ、再び人はそこに文明を築くことができたのだ。


 多くのものが失われた。

 多くのものが残された。

 多くのものが誕生した。

 

 そしていつしかその大陸は、【ロストアイランド】と呼ばれるようになった。


 また復興から50年後、、別の地より、その大陸内を旅する者たちが現れたという。

 抵抗の遺物は眠りに就く。滅亡の軌跡は刻まれる』


 

 ニルン大図書館所蔵 著者:マール【旧世語り】より


 〇


 整理整頓がしっかりとされた個室。

 その窓際の勉強机にむかって、一つの椅子に二人の少女が並んで腰かけていた。

 一人はつやのある黒のショートヘアに目じりが少し上がった、凛々しさが垣間見える少女。名前は高木宿梨。

 もう一人は風呂上がりで、別の意味でつやのある黒のロングヘアに、愛らしさを感じる顔立ちの少女。名前は高木陽菜。

 二人の格好は上下ともにパジャマ。

 宿梨は右足に厳重に包帯を巻いており、陽菜はバイザー付きのヘッドフォン型デバイスと無線接続した、タブレットの画面を操作しながら会話をしていた。

「お姉ちゃーん。キャラクターの設定どうする―?」

「んー……身長って割と影響する?」

「あまりにも違うと慣れるまで大変って聞いたことあるよ」

「なら体型とか身長はできるだけ近づけてくれれば、あとは任せるよ」

「りょーかーい。髪の色とかも?」

「うん。派手なの、私合わないと思うし」

「あーわかる。お姉ちゃんのイメージカラーって黒とか青って感じだしね」

 タブレットに表示されているキャラクターの3Dモデルの髪の色が、初期の茶色から黒へと変わる。

 陽菜がいま行っているのはとあるゲームの宿梨の操作するキャラクターモデルの設定作業だ。

 宿梨本人がやらないのは、陽菜自身が彼女のキャラクターを作りたいと懇願した結果である。

 包帯を巻き終えた宿梨が、道具を引き出しへと片付ける。それから机の上のデバイスをまじまじと見つめた。

「それにしても、これがねぇ」

「どうしたの?」

「いや、こんなただのヘッドフォンみたいなやつで、本当にできるのかなって思ってさ」

「まぁ少し前までアニメとかライトノベルの中の存在だったからねぇ。よし完成! ささ、ベッドに移動しよ。肩貸すからさ」

「ありがと」

 陽菜の肩を借り、宿梨はよろけながらもベットまで移動し、身体を横にした。

 それから陽菜から渡されたデバイスを装着し、彼女の視界がバイザーに覆われた。

「……陽菜?」

 いつまで経っても、声が聞こえないことに疑問を持った宿梨が身体をわずかに起こして陽菜を見る。

 すると彼女は、ぼうっとした様子で宿梨の包帯の巻きつけられた足を見つめていた。

「陽菜?」

「……ごめんね。私のせいで」

「別にいいわよ。あなたのせいだなんて思ってないしさ」

 謝罪の理由がすぐにわかった宿梨は、苦笑しながら言った。

「でも……」

 彼女の足は、車のドライバーの居眠り運転や陽菜の車道横断の際の左右確認不足や立地やその他もろもろが重なり、大けがを負うところだった彼女を助けた結果だ。助けてなければ今頃陽菜がどうなっていたか、想像に難くない。そして目の前にいて助けれなかった場合の宿梨への精神的影響も。

 だからこそ、宿梨は自身の足の負傷だけで済んだことを良しとしている。

 しかし、いまだに自分一人のせいだと主張する彼女を見て、宿梨はため息をついた。

「確かに、この足はあなたを助けた結果。・……でもいいのよ」

「なんで? 私のせいで、お姉ちゃんの好きなことできなくさせたんだよ?」

「確かにバスケは好きだったし、お医者さんから高三夏の大会には間に合わない、って言われたときはつらかったよ。けどさ」

 宿梨は微笑みながら、人差し指で彼女が装着しているデバイスの耳元を軽く叩いた。

「私が自由に歩いたり走れたりするところに、あなたが連れて行ってくれるんでしょ?」

「お姉ちゃん……」

 それを聞いて多少は納得したらしく、陽菜はうるんでいた目元をぬぐった。先ほどまでの明るい感じに戻った陽菜はベッドの手前、横になっている宿梨の肩のあたりにしゃがみこんだ。

「それじゃあ、はじめよっか! お姉ちゃん、左耳のところにある大きなボタン押して」

「えっと、これ?」

「そうそう」

 陽菜に指定された通り、宿梨はボタンを軽く推した。

 すると静かな駆動音を上げながら、バイザーにいくつもの文字列が目まぐるしく入れ替わりで表示されていく。

「あとは右耳のボタンを押せば眠くなるから。次目が覚めた時にはゲームの世界だよ」

「眠くなるって……」

「安全だからね? じゃなきゃ商品化されてないから」

「確かに」

 まったく心配していなかったことを聞いてみたら、思いのほか真剣に答える陽菜を見て、宿梨は微笑んだ。

「あ、ねぇ陽菜。私、向こうでなんて名乗ればいいの?」

「ラクだよ」

「そっか。陽菜の名前は?」

「私はアキレア。街に着いたらそのまま動かないでね? 私から合流するから」

「わかった。じゃあ」

「うん」

「「またあとで」」

 重なった言葉でお互いに笑みを浮かべると、宿梨はそっとデバイス右のボタンを押した。

 バイザーには睡魔が眠りへと誘い始め、彼女の瞼が自然と閉じる。

 それからほどなくして、彼女の意識はゲーム【クレマチス・オンライン】に誕生した少女【ラク】の身体へと移動した。


 〇


 「クレマチス・オンライン~親製世界の旅路録」大幅リメイク作品


 『CO【オーダーモード】-駆ける少女は大陸を巡る-』

   =開幕!=

こちらでは大変お久しぶりです! ツイッターでは絶賛生存中のグリティアです。

最終登校から約2年が経過した旧「クレマチス・オンライン(以下略)」ですがこの度!

以前のものではやらなかったこと、できなかったこと。そして新たなアイディアを搭載して、宿梨ちゃんたちが帰ってきました!(ちょっと変わってるところあるけども)

細かく分けての毎日投稿にするか、定期投稿にするかはちょっと悩んでますが、それはそれ。

第一話の投稿までには決めておきます。

ではでは、当作第一話でお会いしましょう!


よろしければブックマーク、評価をよろしくお願いします!



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ