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鬼姫の曼珠沙華 ─濡烏の章─  作者: 紫木 千
序章
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【序章】

 その昔、十二人の鬼の兄弟と、一人の武器職人がいた。当時、人里を荒らす黒竜を討つために兄弟は立ち上がったが、一人残らず命を奪われた。残された武器職人は、兄弟たちの魂を宿した十二の武器を作った。鬼の魂が宿った十二の武器は、それぞれの主を探して散らばった。その武器を手にした鬼たちは集結し、鬼神一族が誕生した。


 それから数百年後のこと。

 その女も、武器に選ばれた鬼神の一人である。烏の濡れ羽色の髪、憂いを帯びた表情。その容姿から、鬼は濡烏と呼ばれた。

 加えて美しい歌声を持ち、多くの者を魅了した。だが、彼女の本職は──殺し屋であった。


 




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